台所のラジオ (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 189
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758441148

作品紹介・あらすじ

それなりの時間を過ごしてくると、人生には妙なことが起きるものだ-。昔なじみのミルク・コーヒー、江戸の宵闇でいただくきつねうどん、思い出のビフテキ、静かな夜のお茶漬け。いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、美味しい記憶。台所のラジオから聴こえてくる声に耳を傾ける、十二人の物語。滋味深くやさしい温もりを灯す短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 連作短編集。登場人物はほぼ被っていないけれど共通点はタイトル通りみんなラジオを聞いているところ。吉田篤弘には『小さな男*静かな声』という作品がありますが、あの「静かな声」の静香さんの番組かなと思いながら読みました。

    あと共通点は、食べ物が必ず出てくるところ。紙カツ、きつねうどん、生姜焼き定食、ヨイッパリベーカリーのパン、子羊のロースト、ビフテキ、ミルクコーヒー etc...。一番食べたかったのはアリスの生姜焼き定食。美味しそう。

    変な職業の登場人物が多いのも吉田篤弘らしい。お気に入りは「夜間押ボタン式信号機」。「毛玉姫」の女友達と「さくらと海苔巻き」の死んだ彼氏は、主人公は腹を立てていないからスルーしそうになるけど結構ひどい人だった気がする。

    ※収録作品
    紙カツと黒ソース/目薬と棒パン/さくらと海苔巻き/油揚げと架空旅行/明日、世界が終わるとしたら/マリオ・コーヒー年代記/毛玉姫/夜間押ボタン式信号機/<十時軒>のアリス/いつか、宙返りするまで/シュロの休息/最終回の彼女

  • 12のお話がおさめられた短編集です。
    ぜんぶ読み終わって、あとがきを読んで初めてラジオに気付きました。読み返してそう言われてみればそうだな…と。
    まったく関係ない短編の寄せ集めも好きですが、この話とこの話、繋がってる!という短編が好きです。
    特に好きな2つの話について感想を書きます。

    「マリオ・コーヒー年代記」
    この話は本の中で2番目に好きです。
    マリオが何か不幸な目に合うのではと警戒していたのですが、何も起こらなくて良かった。
    ホットドッグとミルクコーヒーはとても良い組み合わせだと思います。カシャカシャする紙に包まれてくるホットドッグはなぜかとてもおいしそうに見えますね。たぶんマリオの店のホットドッグも同じ紙に包まれていると思います。

    「夜間押ボタン式信号機」
    この話は本の中で一番好きです。
    現実の世界の中に架空のものが入り込んでだんだんと浸食していく感じ、けれどお互いの輪郭は曖昧で境界線はぼやけ、絶妙なバランスでヘンテコで奇妙な世界が出来上がっている。これは吉田篤弘が書く小説の特徴の一つだと思いますが、こんなにきれいなグラデーションになっている話は初めて読んだ気がして美しさに眩暈がしました。「押しボタン式の信号機」、「誰もいない二十四時間営業のスーパー」、「カラフルなパッケージの冷凍食品」、「未来を舞台にした推理小説」、「子羊のロースト」、「<抜き打ち検査官>につづく謎の職業<ひとしらべ>」そして「A~Nまでの十四種類の分類」。
    靄の中から見れば世界はぼやけていてそこが現実なのか、架空なのかよくわからない。
    こういう世界が(知識として?体験として?)自分の中にあると、現実に打ちのめされても倒れないでいられる気がします。

  • 十二人の主人公たちは、皆、誰もがラジオを聴いている。いつの間にか消えてしまったものと、変わらずそこにあるものとをつなぐ、美味しい記憶。
    途中で断念…したのだけれど、この世界観を味わえないのは、なんだか悔しい。また手に取りたくなるときまで。
    装幀 クラフト・エヴィング商會

  • この本に収められた短編小説は、それぞれ市井の人々の日常をとらえているのですが、海苔巻きだけがメニューの小さなお店、故郷の誰も知らない街にあるビフテキ屋、美味しいミルクコーヒーを提供するスタンドそして古びた冷蔵庫など、今やなくなろう、捨てられようとしている存在やモノを効果的に使って物語を組み立てています。

    小川洋子さんの書評に、それぞれが宝物のようでいとおしみながら大事に読む、といった趣旨のことが書いてあったと思いますが、まさにその言葉がしっくりくる作品だと思います。

    生きていると、最初は目的や希望があるように見えても、しだいにそれは日常の繰り返しになり、ぼんやりと、そしてたんたんとしたものになることが実感されますが、そうした気分を表現しながら、そんななかにあっても人とのつながりを通じて前に進んでいく姿を一歩引いて後ろから描いているように思われました。

  • 不思議な世界観だったー
    前半は普通に受け入れられる話が多かったけど、後半は現実味のない感覚。
    でもこの空気感、好きなんですよね。

    『マリオ・コーヒー年代記』が好きです

  • 2017.10月。
    タイトルがいい。
    12の短編
    全てに食べものが出てくる。
    全てに同じラジオ番組が出てくる。
    短編どうしがゆるくつながってたりする。
    流れる空気がどことなく心地いい。
    静かな夜にゆっくり読みたい。
    吉田さんの文章って、天気が悪い日や体調が悪い日の夜が似合う。

  • あとがきで作者が発言していた、物語の「始まりのところ」が私も好きなんだろう。
    終わりを覚えていないから(面白くなかったという意味ではなく)何度だって読み返したくなるのだ。
    読んでいると灯油の匂いを嗅いだときのような懐かしいようなほっとするような切なさに包まれるのも良い。

  • 短編集。どの話が一番面白いか?を考えながら読んでいた。同じラジオ番組を聞いてる人でも境遇はまちまち。いろんな人たちが登場する小説を読み、たまたま駅のホームに立ってる人、同じ定食屋にいる人が、どんな人生を抱えてるのか?を自身の日常生活でふと考えるようになった。異なる視点を持たせてくれる変な小説でした。

  • 安定の吉田篤弘の世界。ほんの少し不思議な世界と、そこにある日常の食事とラジオと。

    普段ラジオは全く聞かない人間だけど、こういうのは好き。

  • つむじ風食堂の夜と同じ空気だった。ほっとする日常のような感じ。旅に出て、電車で読むのにいいと思う。

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