さくさくかるめいら 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-6 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758441469

作品紹介・あらすじ

林家では、只次郎の姪・お栄の桃の節句を祝うこととなった。故あってあまり会えずにいた祖父・柳井もぜひ宴にと、声をかけられる。孫娘の祝いの席に何か特別な土産をと張り切る柳井だったが、お栄の母である娘からは「贅沢なものは不要」と言われてしまった。困り果て、居酒屋「ぜんや」で女将のお妙に相談を持ちかけると…。一方、お妙の笑顔と料理にぞっこんの只次郎に恋敵が現れる。小さな悩みも大きな悲しみも、まずはお腹を満たしてから。酒と箸が止まらない!ゆったり嗜む傑作人情小説、第四巻。

感想・レビュー・書評

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  • あ、あぁ~、美味しい……

    さくさくかるめいら―居酒屋ぜんやシリーズの4作目
    2018.02発行。字の大きさは…小。
    藪入り、朧月、砂抜き、雛の宴、鰹酔いの短編5話。

    お妙が、ぜんやで心を込めて作る料理が、美味しそうで、美味しそうで。私は、食べたくて食べたくて堪りません。そんな料理を出すお妙が恋をします。その物語です。

    【藪入り】
    寛政四年(1792年)睦月(1月)16日。俵屋に奉公に出ている熊吉11才が藪入りで、お妙のもとに帰って来た。お妙が、「蓮餅の餡かけ」を食べさせようと、熱した胡麻油の中に、俵形にまとめたタネを沈めてゆく。タネは擂り下ろした蓮根とつなぎを混ぜたものをカリッと揚げると。しゅわしゅわと泡を立てている蓮餅を引き上げ油を切った。黄金色に揚がった蓮餅は、割るとサクッと音がする。とろみのある餡はまだ冷めていないようで、掬い上げると湯気が立った。「うめぇ! え、蓮根だって? 本当に?」と驚きが……。
    『感想』書いていて、つばを飲み込み、ゴクリという音に我ながらビックリする。これを旨そうだ……。

    【朧月】
    勘定奉行久世丹後守の用人・柏木が、只次郎が飼っている鶯のルリオを譲ってほしいとの申し出は、林家の家を二分する争いになります。父、兄は、勘定奉行と誼を通じれば出世が出来ると只次郎に、献上するように言えば。母、兄嫁は、ルリオが居ることによる収入が一家を支えるため手放してはならぬという。只次郎は、ぜんやで柏木を招き円満にルリオを譲らなくても交誼を続けられるようにはかる。その旨を含んだお妙が出した料理が豆腐尽くしです。
    『感想』豆腐尽くしの最後に鍋の中に豆乳を入れ、とろとろの湯葉を食べ、その鍋ににがりを入れおぼろ豆腐を熱々のご飯にかけて食べるのを見ているとヨダレが出てきそうです。

    【砂抜き】
    お妙の危難を救った草間重蔵が、ぜんやの用心棒として店に居る。お妙は、火事で長屋を放り出された重蔵が気になりほっておけず、裏の長屋に住まわせて、ぜんやで三食を供し、用心棒代を払う。その姿を見て長屋のおかみたちは、お妙が恋をしたとはやし立てるが。お妙自身も戸惑う……。
    『感想』お妙の重蔵への接し方を見て、ため息をつく只次郎が可哀そうです。

    【雛の宴】
    只次郎は、利発な姪の栄7才に、兄・重正に内緒で学問を教えている。栄の雛祭りの席上、仲がよろしくない兄嫁とその父、只次郎と重正の仲の悪さを嘆いた栄が、仲良くしてくださいとお願いをします。
    『感想』子供は、よく見ているものです。その意見を、4人の大人たちが聞いて行動を起こします。良い方向に動いているようです(笑顔)

    【鰹酔い】
    只次郎は、ぜんやに居る草間重蔵が気になってしかたがない。お妙が、常に重蔵の動きに気を配っていることが見ていて分かるからだ。只次郎は、重蔵に対抗して兄・重正の指導のもと木刀を振るいだし、軟弱な体が少ししっかりしてきた、手には蛸まで出来て。
    『感想』只次郎の気持を思うと、可哀そうで。只次郎がんばれ!

    【読後】
    お妙の作る料理が美味しそうで、この文章を書きながら唾が出て来ます。今巻は、只次郎に恋敵が出現してヤキモキします。重蔵は、今後もぜんやに居続けるのか。そして只次郎の気持はどうなるのか次巻が楽しみでなりません。
    【豆知識】
    「袖頭巾(そでずきん)」とは、江戸時代、女性が用いた、着物の袖の形をした頭巾。袖口から顔を出すようにしてかぶる。のち、御高祖(おこそ)頭巾となった。 P8
    2021.05.10読了

    ※シリーズの感想と読了日
    ころころ手鞠ずし―居酒屋ぜんやシリーズの3作目 2021.05.05読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4758441073#
    ふんわり穴子天 ― 居酒屋ぜんやシリーズ2作目 2021.02.23読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4758440603#
    ほかほか蕗ご飯 ― 居酒屋ぜんやシリーズ1作目 2020.11.06読了
    https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/475844000X#

    • Macomi55さん
      やまさん、はじめまして。いつも有難うございます。
      蓮餅の餡かけは本当に美味しそうですね。手間がかかりそうですが、その分愛情が感じられます。
      ...
      やまさん、はじめまして。いつも有難うございます。
      蓮餅の餡かけは本当に美味しそうですね。手間がかかりそうですが、その分愛情が感じられます。
      私もいつも「食べたい、食べたい。」と食い意地が張っていますが、健康のことなど考えると食べすぎはダメなので、本で食欲を満たしたいと思いますが、逆にそそられてしまいますね。
      2021/05/11
    • やまさん
      Macomi55さん♪こんばんは(^-^)
      こちらこそ、ありがとうございます(*^_^*)
      坂井希久子さんの「居酒屋ぜんや」のシリーズは...
      Macomi55さん♪こんばんは(^-^)
      こちらこそ、ありがとうございます(*^_^*)
      坂井希久子さんの「居酒屋ぜんや」のシリーズは、美味しいものが出て来て、書きながら唾が出て来たり。喉がゴックンと鳴ったりして、自分でもビックリしています。
      Macomi55さん♪今後とも宜しくお願い致します。
      2021/05/11
  • 人気の「居酒屋ぜんや」シリーズ4作目。
    美人女将のお妙が腕を振るう店に、只次郎の恋敵が登場?
    前作で発覚した事件の犯人は、牢にいる状態。
    それはおいといて、庶民の暮らしは進んでゆく。

    寛政4年睦月、16日。
    この日は藪入りで、奉公人が親元に帰れる日。奉公に出ている熊吉が、ぜんやに帰ってくることに。
    親のない子だから、たまたま縁あってやって来るのだが、お妙の実の子という噂が立ちます。
    が、そう思われてもかまわないと鷹揚に構えるお妙。
    只次郎が用意してくれた凧をあげに行って楽しむが、そこにいた少年と喧嘩に。
    それでもその子の面倒を見ようとするお妙に、熊吉はちょっと僻んでしまうが…

    鶯の鳴き合わせの会に、審査役で出た林只次郎。
    優勝した鶯の飼い主・柏木に声を掛けられ、好感を抱きます。
    ところが只次郎の愛鳥ルリオを譲ってほしいと持ち掛けられ、困惑。
    ルリオはめったにいない美声で、小禄の旗本である林家の家計を支えているのだから。
    しかも、柏木は勘定奉行の用人とわかり‥

    お妙が往来で絡まれていたところを助けてくれた男。
    ばったり再会したお妙はお礼に食事をご馳走し、話を聞いてみると…
    草間重蔵は浪人で、長身で目つきが鋭い、いい男。
    店の用心棒として雇うことにしたため、周りは驚きます。
    只次郎はしょげ返るが…

    只次郎の姪・お栄の七五三のお祝い。
    招かれた柳井殿が孫に祝いを持っていく相談に店を訪れる。
    男前で派手好み、やり手の柳井殿だが、お栄の母である実の娘・お葉とはあまり相性が良くないのでした。
    「贅沢なものは不要」と既に釘を刺されています。
    ぎこちない場面を救ったのは。

    事件の全容が明らかにならないまま、お妙の身辺には不安が立ち込めています。
    それで用心棒を置いたのだが…
    只次郎の家族とも間接的に付き合いが出来ていますね。
    さて、どうなる?
    続きも楽しみです。

  • 居酒屋ぜんや シリーズ4

    小十人番士の旗本の次男坊・林只次郎は、鶯が美声を放つよう飼育して、その謝礼で一家を養っている。

    只次郎は、居酒屋「ぜんや」の料理上手で美人女将・お妙に、密かに恋焦がれている。

    只次郎の父の上司であった佐々木が、預かり先で亡くなり、駄染め屋も、速やかに処刑されて、お妙に目をつけて、殺人まで起こさせた訳を追う事ができなくなった。

    「ぜんや」で、酔客と揉めた際に、お妙を助けてくれた浪人・草間重蔵が気になり、お妙は、店の用心棒として雇うことにした。

    お妙の重蔵に対する気持ちが、気になる只次郎。

    豆腐尽くし、鰹尽くしと、美味しそうな料理がやたら出てくる。

    やはり、人の心を射止めるのは、胃袋か。

  • 「居酒屋ぜんや」シリーズ、第4弾。
    お妙の身辺に暗い影を落としていた駄染め屋の事件が一段落して、ぜんやにも明るさと落ち着きが戻ってきた。
    これでまた、読者としても安心して、お妙の料理の数々を想像の世界で味わうことができる。
    今回も、豆腐尽くし鰹尽くしに、唾液腺が痛い!

    しかし、只次郎にとっては、一難去ってまた一難?
    恋敵の登場にやきもきし、林家のドル箱であるルリオの後継をめぐっての、周りからの重圧も悩ましい。
    がんばれ、非力な武家の次男坊!!(笑)

    そんな中、“かるめいら”という和スイーツがタイトルということで、子供がらみの話だろうとは思ったが、なんとも微笑ましいエピソードだった。
    只次郎の姪・お栄の、可愛さと賢さに、これからも期待したい。
    そして、草間重蔵は何者なのか?
    駄染め屋のような悪い人間ではないと思うけれど、秘密はありそうだ。


    『藪入り』
    小さいころから親元を離れて奉公に出される少年たち。
    藪入りは、待ちに待った里帰りのお休みだが…
    江戸時代の男の子は若いうちからしっかりしているなあ、と感心しつつも、そんなに小さなうちから苦労して…と、ちょっとほろり。

    『朧月』
    主君をお慰めするために、鶯の美しい声を聞かせたい、という柏木。豆腐が好物。

    『砂抜き』
    酔っ払い武家乱入であわや刃傷沙汰?!というところへさっそうと現れた、強い浪人。
    何者なのか?

    『雛の宴』
    お妙が浪人者を用心棒に雇ったことで、自分の頼りなさを実感して落ち込む只次郎。
    にわかに剣術の稽古を始めたが体がなまっている。
    姪のお栄が、ひな祭りのお祝いに祖父の柳井殿を呼んだ。

    『鰹酔い』
    妻の志乃が子供を産んでから、升川屋は、仕事以外の飲み歩きを控えているが、初鰹を三尾持ってきて、内祝いをしたい、と旦那衆を呼び集めた。

  • 居酒屋ぜんやシリーズの4巻
    只治郎さんに謎のライバル出現!
    お妙さんの料理は相変わらず美味しそうで、どんな感じなのかと想像が膨む。
    姪っ子の雛祭りのお祝いにさくさくのかるめいら。大人達が考えさせられる場面も中々良かった。
    ルリオの雛達も楽しみ。

  • 今回も笑いあり、しんみりあり、ほっこりありと
    安心の物語也。
    恋のライバルが出てきて、ちょっとはハラハラするけど
    話にメリハリが生まれてそれもよし。

    こういう優しい気分にさせてくれる小説を読めるというのは
    とっても幸せなことじゃなかろか。
    あっという間に読み終えてしまうのが、もったいなく思える。

  • 1~4作まで読みましたが、この作品が一番良かった。
    「さくさくかるめいら」、特に。

  • 只次郎の家族の不和が姪っ子お栄のおかげで解決する、さくさくかるめいらのお話がとても良かった。お栄あっぱれ。柳井もかっこいい。
    只次郎が少し逞しくなってきたり、お妙との距離感も縮まりつつあったところに登場する謎の浪人、この後どのようになるか楽しみ。

  • 居酒屋ぜんやの四作目。相変わらずの可愛い表紙と上手そうな料理の数々。表題通りさくさく読めます

  • 只次郎の情けなさが光る。ただ、恋敵が現れたことで、色々な方面に努力するようになったので、それが上手く成長につながると良いなと思います。

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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