今日のハチミツ、あしたの私 (ハルキ文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 229
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758442404

感想・レビュー・書評

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  • 寺地はるなさんらしい、優しくて繊細で、苦しい状況をしっかりと受け止めていく主人公の心情と次第に変化していく様子が描かれており、休日の午後、心地よく読書できました。

    いじめをうけていた高校生時代、食べ物を自ら吐いてガリガリだった自分。死のうかとしていた主人公にさりげない出会いが。大人の女性と小さな子供、そしてひとさじの「蜂蜜」。

    いい蜂蜜をひとさじ舐めると幸せな気分になる。これは私も体感済です。蜂蜜ができる過程を考えると、とても神秘的なものを感じてしまうし、自然からの恵み、自然との共存を大切にしたいという思いに駆られる。蜜蜂が一生をかけて集めたひとさじの蜂蜜。辛い時には心に染みるというのはとても分かる。

    この物語に登場する人物の中で、男性陣はなかなかのヘタレである。仕事がまともに続かず、かといって絵の才能もあるかどうか分からない恋人。傲慢で、自分の思った通り事が進むと信じ切っている父親。ひたすら自分を卑下することで元妻や娘をまもろうとした不器用な黒江。

    主人公の碧は自分がどうやって生きて行ったらいいのかも精一杯なのに、出会いを大切にし、養蜂を愛し、不幸な自分の運命をもはや受け入れて前に進もうとする気持ちが見える。

    全てはハッピーエンドではなく、物語にまだ続きがあるような終わり方がまた秀逸。そう人生とはどの断面を切っても、死ぬまで続きがあるものだから、この物語はこの終わり方でよかったように思う。

    宮下奈都さんの解説も、短編集を読んでいるかのようでよかったですね。

  • この作品に出てくる登場人物は皆生きた「人間」だと思った。
    漫画や映画のキャラクターじゃなくて、人間。何度も間違えるし、かっこ悪いし、日々苦しんでる。笑っている他人を見て、「いいよな、気楽で」なんて思ってしまうこともあるだろう。
    聖人君子のような人物はここにはいないが、私はこの作品に出てくる人々が好きだ。愛しい、とさえ思った。己の答えが正しいかなんて一生分からないけれど、そんな正しさなんてものよりも大事なことがある、と思いたい。

  • 今いる場所や新しい場所を自分の居場所にすること。その場所で生活していくこと。そのためにひとつひとつをコツコツとこなしていく。簡単ではないし色々なことがあるけれど誠実に向き合っていくしかない。その場所にいる人たちや空気に助けられながら馴染んでいく碧。その過程がすごくいい。苦労したぶんが報われるかどうかもわからないし先への不安もある。それでもやっぱり少しずつしか進めない。そのなかでの変化を見逃さずにしっかりと見ていきたい。蜂蜜が色々な料理に合いながらも個性をちゃんと主張するように、誰にでもいい顔をするのではなく自分という存在を認めてもらいその場所を見つけ立っていたい。

  • 表紙のホットケーキが美味しそうで咄嗟に手に取った。お話を読んで更に嬉しくなった。はちみつが人の心をほぐしてくれる。主人公が「蜂蜜をもうひと匙足せば、たぶんあなたの明日は今日より良くなるから」という言葉をかけられ、ゆっくりと歩みはじめ、いつしか自分の居場所をゆっくりゆっくりと作っていく。そんな姿に読んでいるこちらも嬉しくなった。作中にでてくる蜂蜜をつかった料理や甘い食べ物も凄く食べたくなってしまう( *´艸`)

  • 私はそれまで号泣していた。涙が乾いた頃、ゆっくりとこの一冊に吸い寄せられるように読み始めました。
    噂で聞けば、今日は特別な日らしいから。貴方の毎日におめでとうとありがとうと、笑顔と蜂蜜ひと匙分の甘味を♡そして最高のプレゼントは、言葉で贈るよりも、やっぱり私がその一年で一番の特別な日に寺地先生の作品を読むことだと思いました。ただ、読了が間に合わなかった、ごめんなさい

  • 表紙買いなんだけど、思ったよりずっと良かった。
    ご都合主義で説教臭いんだけど、嫌味じゃなくて胸に落ちるのは、本当は私達は皆、おせっかいな位の優しさを欲しがってるからじゃないかと思う。
    すきな文章をフレーズ登録しようと二箇所栞を挟んでいたら、解説で二箇所とも引用されていて切ない。恋の痛みを忘れるのではなく、飲み込んで歩こうと思える30代かっこいいと思います。

  • 今日のハチミツ、あしたの私 読み終わり。
    すごく好き…ハチミツを胸塗られて、そこから甘さが沁みてくるみたいだった。
    黒江さんの不器用さも、あざみさんのかっこよさも、麻子さんの必死さも、安西のカッコ悪さも、とても好き。

    これから、家にハチミツ常備しておこう。

  • 食べたらなくなる物にお金をかけることがもったいないと思える時がありました。この小説を読むまでは。
    碧ちゃんはある女性と出会って以来、食べることをとても大切にしていて、そんな彼女の作る料理はどれも美味しそうです。わたしも碧ちゃんみたいに食と向き合いたいな、と思いました。

    自分を導いてくれた人がいい人じゃなくたって、その人がくれた言葉や物の価値が変わるわけじゃない。誰かとの関係が終わってしまっても、その人と過ごした時間は今に繋がっている。そんな碧ちゃんの考え方がわたしは好きですぞ。あと、真百合ちゃんが好きですぞ。

  • 8/3ははちみつの日

    「明日なんて来なければいい」と思っていた時、
    見知らぬ女性から受け取った小さな蜂蜜の瓶…

  • おもしろかった。
    碧も安西も黒江も朝花も三吉さんも、家族関係に問題があって、良いところも悪いところもあって、綺麗事だけじゃなくて、辛いこともあって、人生も人間も複雑だよな、と思う。
    「笑ってる人はみんな気楽って発想、幼稚すぎるよ」
    てホントそれ。
    100パーセント幸せな人生も、悲劇しかない人生もどちらもない。
    だから毎日コツコツと頑張って生きるしかないなー。
    とりあえず、蜂蜜たっぷりのパンケーキが食べたい!

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著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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