初夏の春巻 食堂のおばちゃん 13 (ハルキ文庫)

  • 角川春樹事務所 (2023年1月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784758445375

作品紹介・あらすじ

本日の日替わりは鶏じゃがと豚の生姜焼き、焼き魚はホッケの干物、煮魚はサバの味噌煮。ワンコインは親子丼──
姑の一子と嫁の二三にお手伝いの皐で営む佃の「はじめ食堂」は、ほっとする美味しい料理と温かな気配りで、今日もお客の笑顔で一杯だ。
そんな中、一子の孫で出版社に勤めている要に難問題が持ち上がったり、二三が迷い犬を保護したり……。
お陰様でシリーズ累計五十万部突破! ますます絶好調の大人気シリーズ最新刊。
どの巻からでもお楽しみいただけます。

感想・レビュー・書評

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  •  東京都中央区佃。
     江戸時代から庶民の町として栄え、現代でも旧佃島地域は昔ながらの人情と風情のある古い街並みで知られている。
     そんな佃で2人のおばちゃんが営む食堂兼居酒屋を舞台にしたグルメ&ヒューマンドラマ。『食堂のおばちゃん』シリーズ13作目。
              ◇
     「日替わり牡蠣フライ、2つ!」

     皐のよく通る声が店内に響く。今日のランチのメインは牡蠣フライとあっていつにも増して人気だ。
     はじめ食堂の牡蠣は身が大きくジューシーで食べでがある。しかも初代店主の孝蔵が考えた自家製タルタルソースがたっぷり付いてくる。これに小鉢が2品つきごはんもおかわり自由で 700円とかなりリーズナブルだ。

     実はこの値段はずっと変わっていない。平成元年に消費税が導入されたときも、その後3度の税率アップのときも、営業努力で価格を据え置いてきたのである。
     けれど近年の食材価格高騰の煽りを受け、さすがに経営が苦しくなってきた。このままでは昼営業は赤字に転落するのは目に見えている。

     対策としては、50円値上げするか小鉢を1品減らすかが考えられる。そのことについて常連さんに相談してみると三原茂之や野田梓などは値上げの方に賛成で、理由は小鉢は2品食べたいからのこと。
     それを聞いてもまだ思い悩む様子の一子たちを見た三原は、所用で訪れた大阪でたまたま入った大衆食堂の話を始め……。
       ( 第1話「未練のカキ鍋」) ※全5話。

          * * * * *

     今回は大きな変化はないものの、いくつかの恋模様を核にして展開していきます。


     まずは安定したところで、康平と瑠美のその後です。
     もう何年も連れ添った夫婦のような2人。今回は泊りがけで北関東酒蔵巡りに出かけます。泊まるのは日光金谷ホテルとちょっと贅沢ですが、新婚旅行代わりだそう。
     酒の康平と料理の瑠美。専門家の2人が酒蔵の若夫婦に手を貸すストーリーはなかなか楽しめます。


     続いて、新登場の塩見秀明。江戸時代についての著書も多い大学教授です。アニメオタクであまり女性にモテないため独身なのですが、ひょんなことから要の勤める出版社とご縁ができ、接待した要に惚れてしまいます。 
     この塩見教授、はじめ食堂に通っては要の帰って来る看板近くまで粘るほどの入れ込みよう。一方、好きでもない相手ながら大切な仕事相手でもあるため、困惑する要。教授の恋の行方は !?


     そして、これも新登場のシリポーン・ムサクンラット。ショーパブ風鈴のニューフェイスのダンサーで、もちろんニューハーフ。
     シリポーンの出身はタイ北東部のイサーンです。真面目で辛抱強い性格のシリポーンですが、日本では故郷の料理が口に入らないため元気がありません。

     そんなシリポーンを見て義侠心を発揮したのが万里です。イサーン料理を出す店を探し出し、予約までしてシリポーンを招待することにします。
     それを聞いたはなが親切すぎるのではと心配した通り、異国の地で自分に優しくしてくれる万里にシリポーンは恋してしまいます。いきなりシリポーンに口づけされて頭を抱える万里ですが……。


     最終的には要と万里が結ばれてはじめ食堂を継ぐのではと思っているので、さほど心配せずに読めたこともあり、この2つの恋の成り行きを大いに楽しみました。

     最後にもう1つ、万里についての変化を。
     これまで魚、特に尾頭付きのものは食べられなかった万里ですが、割烹八雲で修業するうちにこのままではだめだと気づき、食べる練習を始めます。万里の食わず嫌いは矯正できるのか。興味を引くところですね。

     ともあれ安心して楽しめる13作目でした。


    追伸
     他作品とのコラボもありました。
     第1話に ( 名前だけですが ) 登場する2人。
     1人は谷岡樹という女性。(『ゆうれい居酒屋』) もう1人は日高真帆という女性。(『婚活食堂』)
     どちらも民間の研究者で、要の出版社が仕事を依頼するのですがあいにく都合で折り合えなかったという設定でした。
     こんな読者サービスが最近の作品ではよく見られるようになったので、ますます読むのが楽しみになりました。

  • 食べたことのない食材や食べ物がたくさんありましたがどの料理も美味しそうでした。

    ぬたを食べたことがないので近いうちに挑戦できたらいいな〜と思いました。

  • はじめ食堂ではない場所の瑠美康平の始まりもいいと思う、二三と皐とどちらが厨房に掛かりなのかな、皐次第なんかね、ガッツリ厨房で料理のいろはを勉強したい筈だから。焼酎の品数が多く出てきたし、料理の工夫もたくさんだし、皐の目からで実際には山口恵以子さんがよーく調べている 日替わりランチメニュー見てても飽きないよう。あと一子の手紙も素晴らしい こういう人と人との繋がりが題材がとても楽しい どれもマルく収まるから、もう白鶴マル〜ってこと

  • シリーズ13
    安定の面白さ‼️

    今回は、風鈴のお姉様方の登場もあって、嬉しかった。

    ワンコも出てきて、その敵をさっさと退治した痛快さ、心地よかったです。

  • これまで借りていたのでコンスタントに読めていたが、買って手元に置いてしまうと途端に読む順番が後回しになる(苦笑)

    安定のはじめ食堂。近頃の社会問題「値上げ」にも言及、というと大げさだが、値上げしなければやっていけないのに悩むはじめ食堂のみなさんの優しいこと、優しいこと。さっちゃんも馴染めてるようで一安心。

    他の巻は図書館で借りていたけれど、料理のポイントとかあるし手元に置いておきたいかな・・どうしよう、迷う。

  • 食堂のおばちゃんシリーズ13冊目。
    姑の一子と嫁の二三が切り盛りする、はじめ食堂。
    万里と入れ替わるように入った皐が頼もしい即戦力となり、
    今日も食堂は、美味しい料理と常連さんの語らいで賑やか。
    第一話 未練のカキ鍋・・・要の勤める出版社での窮地を救った
      のは、皐の助け舟。その思わぬ縁により、塩見が来店。
      カキの土手鍋の未練を語る。
    第二話 発酵レストラン・・・塩見の連日の訪問に興味津々の
      はじめ食堂の面々。一方、旅行先で老舗酒造での親子の
      わだかまりを知った康平と瑠美は、はじめ食堂に彼らを招く。
    第三話 スペアリブと犬・・・二三についてきた迷い犬。ほどなく
      飼い主が見つかったが、その裏には疑惑が。気づいた皐。
      彼女に助言する一子。そして飼い主と犬との愛が解決に。
    第四話 めでタイ正月・・・タイと言っても地域で異なる食。
      「風鈴」のダンサー・タイ人のシリボーンに郷土料理との
      再会をと、動く万里。そして、まさかの結末が!
    第五話 初夏の春巻・・・塩見のタイ人女性との電撃的結婚。
      新婚の二人に初夏の日本の味覚を味わって欲しい。
      初夏の春巻の味わいで、語られる馴れ初めの話。
      そう、幸運は訪れる。奇跡は起こる。
    <巻末>食堂のおばちゃんのワンポイントアドバイス・・・レシピ。

    優しい心遣いが味付けになる大衆食堂での、人情話短編集。
    時は、2021年からの食品や調味料の値上げ続きの頃。
    イカの不漁での高騰も含め、はじめ食堂でも値上げをするかで、
    頭を悩ませますが、常連客などのアドバイスで乗り越えます。
    苦労を重ねてきた皐の言葉も良いし、アイデアが豊富です。
    また、魚が食べられなかった万里が、修業の中で考え、
    ついに一口食べられた様子には、つい拍手。
    人間的にも落ち着いてきて、確実な成長が感じられました。
    ただ、時折出てくる老いの話題。老眼や食の内容の変化など、
    一子と二三の今後が気になってしまう。

  • 食事のおばちゃんシリーズ13作目。ワンちゃん登場でまた新しい展開になるのかと思いきや。。落としどころがさすがだった。万里くんやメイちゃんの元同僚絡みのタイ案件も面白かった。そんなに運命の相手に簡単に出会えたら苦労はしないのに、とか言ったらダメだね(笑)

  • 食堂のおばちゃん13、安定した面白さでした。旬のものを美味しく頂く大切さをいつも教えてくれます。常連客の顔ぶれにも変化がありまだまだ先が読みたいです。

  • はじめ食堂に迷い犬!
    その犬の登場の仕方に、えつ!あのマジックが⁈
    最近読んでいるシリーズ本「迷犬マジック」を思い出してしまった(笑)

  • 姑の一子と嫁の二三が営む「はじめ食堂」のシリーズも、13作目。
    しかし、四季折々おいしいものは尽きない。
    皐(さつき)もすっかり食堂の店員が板につき、一子の孫娘みたいな感じだ。
    常連さんたちもお元気で、三原と野田に経営のアドバイスをもらったり、康平と瑠美には酒と料理のアドバイスをもらったり。
    そんな中、二三の娘の要(かなめ)や、料理修行中の万里(ばんり)に思わぬピンチが訪れたりするが、そこへ皐がポツポツともらす一言一言が、苦労した人だなあという感じで、二人とは同い年ながらも老成感がある。

    第一話 未練のカキ鍋
     物価の高騰の荒波にもまれ、はじめ食堂も値上げを検討せざるを得ない状況に。
    値上げも仕方のないことだが、お店の誠意が感じられるかどうかでお客の受け止め方も違ってくる。

    第二話 発酵レストラン
     康平と瑠美は北関東の蔵元を巡る

    第三話 スペアリブと犬
     人間と身近な動物が人柄を判断できるのは、実感あり

    第四話 めでタイ正月
     世界にはいろんな食文化がある。自分だったら食べないというものでも、顔に出してはいけない。自分の国の料理が嫌がられたら悲しいもの、という万里。ずいぶん人間ができてきたと嬉しい。
    料理に限らず。いろいろな文化を尊重したい。

    第五話 初夏の春巻
     本当に「めでタイ」のは、最後のこのお話である。

  • シラスの梅しそ春巻き美味しそう。
    犬の出てくる話、可愛くて良かった。
    チキン南蛮が食べたい。

  • ああおいしかった、ならぬ、ああ面白かった

    今日はくたびれていたので、家事の合間にのんびり読書がしたい…、と、いうことで迷わずこのタイトルを選択
    がっつり楽しんで読了できた

    さっちゃんがグイグイきてていいね~!
    万里くんが卒業(?)してどうなるかなと思ってたけど、いやいや、違う風が吹いてきてこれはこれで面白い

    今回も恋模様(言い方)を、ごはんに絡めて濃いめにフューチャーしてはるな、と、思ったけど、いやいやいつもこんな感じやったか

    もうここまでシリーズを楽しんでたら、一子さんも二三さんもほんま健康で長生きしてくれ…、と、いう気持ちになってきた(笑。失礼)

    このシリーズだけに限らず、著者の本は、ご縁ってすてきやなとしみじみ思う
    だからくたびれた休日に読みたくなるんやろうね

    わたしにもご縁があればいいな

  • 安定の食堂シリーズ。
    料理もお酒もとっても美味しそうです。

    後、登場人物がみんな前向き&魅力的で、楽しく読めるシリーズです。

  • 食堂のおばちゃん13, いろいろなメニューが出て作って見たいとは思うけどなかなか、来るお客の中、色々と思いを持ってくるが、一子の対応が年の功なのか、本当にいつも冷静な対応で感激こんなお店が近くにあったらいいな、中々こういうお店は少ない有ればきっと通い続けると思う。

  • 展開が早すぎてついていけない時もあり…

  • はじめ食堂の娘・要と、元社員の万里にそれぞれ春が来るかと思いましたが、本人達は全くその気がなくて別のお相手と一緒になったのは残念でした。

    フリーターだった万里が、苦手な魚を克服しようとする姿に成長を感じました。

    迷い犬の弥生も、はじめ食堂のマスコットとなりそうでしたが、まさかそんな裏があったとは。破談になって何よりでした。

  • もう安定のほっこり感。万里くんがあまり出てこないのにも慣れた。だけど、そうなるとこのストーリーも女の人ばっかりになりがちだなと思ったり。
    けっこう実在のものが出てくるけど、はじめ食堂みたいな食堂も佃のあたりにあるのかな。

  • はじめ食堂で迷い犬を保護するという珍事の一方、要が仕事で知り合った大学教授に惚れられたり、万里がお店に来たニューハーフのシリポーンに惚れられたりと、恋愛模様も忙しい。安定の瑠美先生と康平さんは北関東の酒蔵巡り。料理だけでなくお酒の知識も楽しい本作だけあっていいエピソードだと思う。苦手だった青魚に挑戦する万里、次々に新しいメニューを考案する皐月と、若者の成長がたくましい。

  • 食堂のおばちゃん13
    初夏の春巻
    山口恵以子

    ∞-———————∞

    迷子の柴犬がはじめ食堂に。お店に動物がいて和むお客さんたち。
    万里は苦手な魚を食す。そしてニューハーフさんに惚れられる。
    今回は特別なんか大きなことはなかった感。

    炊き込みご飯風混ぜご飯は作ってみたい。煮物にして煮汁と一緒にご飯を炊いて、最後に具とご飯を混ぜる。レシピは筍だったけどキノコでやってみたい。
    ここ何巻かは、ところどころレシピメモしてる。肉をちょっと入れるとコクが出るとかそういう細かいとこがためになる。

    2024/07/31 読了(図書館)

  • 一子、二三、皐の3人が働くはじめ食堂。
    家庭的な雰囲気で昼は食堂、晩は居酒屋。
    常連さんたちのエピソードや美味しそうな料理が癒してくれるシリーズです。
    本作は13作目、タイ人、タイ料理が登場。

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著者プロフィール

1958年、東京都江戸川区生まれ。早稲田大学文学部卒業。松竹シナリオ研究所で学び、脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年、『邪剣始末』で作家デビュー。2013年、『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞。その他の著書に「婚活食堂」「食堂のおばちゃん」「ゆうれい居酒屋」シリーズや、『風待心中』『ゆうれい居酒屋』『恋形見』『いつでも母と』、共著に『猿と猿回し』などがある。

「2023年 『婚活食堂9』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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