月草糖 花暦 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫)

  • 角川春樹事務所 (2024年5月15日発売)
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本 ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784758446372

作品紹介・あらすじ

ぜんやに転がりこんできたお転婆姫──只次郎の姪のお栄は大奥に仕えていたのだが、将軍からお手つきとなるのを嫌い、暇を貰って只次郎の許へと逃げていた。
家に戻ってもどこぞの武家に嫁がされるに決まっている、と町人となって己の才覚で生きていくことを望むが……。
熊吉は熊吉で世話焼きの血が祟り、お花はそれにもやきもき。
ままならぬ江戸の世を、若者たちがもがきます。
独活の穂先と人参のかき揚げ、桃の節句の手鞠寿司、楊梅の金玉羹、露草で青く染めた砂糖。
料理が気持ちを彩る、傑作時代小説第六弾!

感想・レビュー・書評

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  • 「居酒屋ぜんや」のセカンドシリーズ、“花暦 ”・第六弾。

    美人女将・お妙が切り盛りする居酒屋〈ぜんや〉を舞台に、お妙と只次郎の養女・お花と薬種問屋〈俵屋〉に奉公する熊吉を中心に描かれる人情噺、連作五話が収録されています。

    大奥勤めを辞めて〈ぜんや〉に身を寄せていた、只次郎の姪・お栄。
    町人になって習い事の師匠になりたいと願っていましたが、結局は林家に戻ることを決断します。
    ようやくお花とも打ち解けて、仲良くなれた矢先だっただけに寂しいですが、きっとお栄なら“自分の道”を歩んでいけると思います。
    いつか〈ぜんや〉でお花たちと再び“女子会”ができると良いですね。
    最近お花が徐々にオープンハートになってきて、胸の内を話せるようになり、健やかな成長を見せているのが嬉しいです。
    一方、熊吉は売れ筋商品の「龍気補養丹」の製造に携われるようになったのは良いですが、かなり過労気味で心配な状態だったのに加えて、唐瘡に罹った女郎への“親切心”から独りよがりな世話焼きを発動してしまいます。
    お陰でお花に“女郎屋通い”を誤解されて塩対応されてしまったり、挙句は〈俵屋〉のご主人に露見してしまう羽目に。
    それにしても熊吉って、同僚たちからまんべんなく妬まれていますよね。
    これまでも長吉から裏切られたり、留吉から嫌がらせを受けたり、今回も別の同僚から旦那様へチクられるという・・・熊吉自身は頭も切れるしいいヤツではあるのですが、何気に“鼻につく”ところがあるかもしれないなと思いました。
    ここは、只次郎や〈俵屋〉の若旦那のような“人好き”するタイプのソフトな物腰を見習った方が良いのでは?と、老婆心ながら思った次第です。
    そうそう、〈俵屋〉の若旦那といえば、グズグズしていたお梅ちゃんとの婚姻の件について、やっと心を固めたようでしたね。

    そんな訳で、悩める若者たちの成長が眩しいセカンドシリーズですが、今後もお花や熊吉を見守っていきたいと思います~。

  • 今回もたのしませていただきました。

    あの熊ちゃんが深川へ行くとはねぇ。(遊女がいました)でも、結局、何もできなくて話を聞いてしまったことから同情してしまうという(-"-;A ...アセアセ

    いや、これはもう熊吉が悪いよね。梅毒は当時は治らない病でしたからね。薬問屋の手代が情をかけてはいけんのよ。

    そのことも含めてみんなの成長がうれしい一冊でした。

  • 居酒屋ぜんやシリーズ最新作!
    お栄ちゃんの選択、俵屋の若旦那とお梅ちゃんとの関係やら色々と問題解決した今作。
    ずっと見守ってきたお花ちゃんと熊ちゃんが大人になっちゃって、嬉しいような淋しいような。
    今後も楽しみ!

  • 熊ちゃんは優しいね。

  • 『居酒屋ぜんや』の子世代シリーズも、もう六作目。
    今回は凶悪な事件は一応収まり、若い人たちの成長に筆が割かれる。
    年齢や事情が少しずつ異なるものの、思春期を抜けて青年期に差し掛かる微妙な心理が描かれている。

    女子たちの間では、お梅が一番しっかりしているかなあ。そのうち、熊吉の雇い主の奥様になるのである。どんな関係性になるのかな。
    只次郎の姪のお栄は、幼い頃からたいそう聡明に描かれていて、先が楽しみだなあ、どんな人生を歩むのかしら、と思っていた。大奥に勤めることになった時は、んんんんん・・・?と思ったのだけれど、そこには様々な仕事があると知り、一応は納得、しかし将軍からお声がかかるという、望まない方向に行ってしまった。
    やはり、女である限り避けて通れないのは、まだまだこの時代、誰かに嫁ぐこと。
    お栄は決断をして・・・そして夢を遥か遠くへと先送る。

    熊吉だが・・・相変わらず、自分の力ではどうにもならない事に心血を注いでしまう。何もしてやれないのなら、その優しさは残酷でしかない。なのに本当に、本当に一生懸命なのだ。この辺りが非常に危ない感じがする。

    そして、今回は若者たちを描くために表舞台への登場を抑えられた大人たちだけれど、その中で、「成長」していると感じるのは、升川屋のお志乃。上方から嫁いできて、江戸に馴染めず食ものどを通らなかったという新婚時代から見てきて、ずいぶん立派な女将になったものである。しかし・・・立派になり過ぎてモンスター化していかないか、いささか心配。
    そして、その息子・千寿の将来がどうなるのか・・・
    個人的に、おかやは嫌。ふさわしい人が突然登場しないだろうか。気が揉める。

    ちなみに、タイトルの『月草糖』あおいろが美しいつゆ草は、染まりやすい。
    『月草に衣は摺らむ朝露に濡れてののちはうつろひぬとも』は、女郎のお万の気持ちでもあるのかなと思うと少し切ない。

  • そんなベタな展開に…

  • お栄ちゃんの家族って素敵だな。
    こんな信念を持った母になりたい。
    もう、無理だけど。

  • 江戸と料理のキーワードに惹かれて読み始めたがストーリーもとても好きだ。新刊をいつも楽しみにしている。

    今回はお花とお栄の友情が微笑ましく熊吉の己の無力さに打ちのめされる姿にも心温まる。 居酒屋ぜんやを取り巻くすべてが好ましい。

    私には読後がいつも幸せな本だ。

  • 大奥から逃げてきた只次郎の姪のお栄は己の才覚で
    生きることを望むが…。江戸の世をもがく若者たち!
    ウドと人参のかき揚げ、手毬寿司…。料理が気持ちを
    彩る人情小説。

  • 明るくて聡いお栄ちゃんが、とても可愛い。
    叔父のように町人になりたくて実家を出た後の、お栄の決意と覚悟。
    先祖から受け継ぐ武家の身分や家門を尊ぶ、祖母や母の気持ちも、自分の能力で羽ばたきたいお栄の気持ちも、よく分かります。
    お栄が幸せになりますように。
    そして、熊吉の、色の話。
    身請け云々、考えが甘すぎるなぁ…でも、それが若さなのかな。
    前シリーズではまだまだ子供だった彼らが、急に大人になっていくようで、少し寂しくもあります。

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著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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