ひとのことばの起源と進化 (開拓社言語・文化選書)

著者 :
  • 開拓社
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本棚登録 : 26
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758925198

作品紹介・あらすじ

わたしたち人間だけがことばを自在に操ります。ひとのことばの本質的特徴とは何であり、動物のことばとどう違うのでしょうか。そして、人類は、そのことばをいつ、どのようにして獲得したのでしょうか。言語学の視点をベースにしながら、最近めざましい発展を遂げている言語の起源・進化研究の学際的知見を駆使して、それらをやわらかい語り口と平易な文章で解き明かそうというのが本書のねらいです。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、そのタイトルにもあるように、ひとのことばの起原と進化について、生成文法という視点から、大変興味深い仮説を述べています。

     普段当たり前のように使用しているにもかかわらず、ひとのことばには数多くのミステリーが残されています。例えば、「なぜひとだけがこれだけ複雑で高度なことばを使うことが出来るのか」、というとても壮大な謎から、「なぜスターバックスはスタバと略し、木村拓哉はキムタクと略すと据わりが良いのか」、といった身近な事例まで、ミステリーの種類も様々です。

     また、本書で取り上げられている興味深い指摘として、ひとのことばとミドリザルの警戒の声の違いが挙げられます。ミドリザルの警戒の声は、3種類の声を使い分けて、外敵からの脅威を知らせます。仲間のサルはその声を聞き分けて、茂みの下に身を隠したり、木の高い所へ上ったりして、身の安全の守リ方を適宜選択するそうです。
    このように、音を発して意味を伝達するという点では、ひとのことばと共通しています。しかし、現在確認されている範囲では、ひとのことばだけが、非現実的なものをことばで表わせる唯一の動物なのです。ミドリザルでさえ、危険を勝手に想像して、警告を発することはできません。しかし、ひとはこの世に存在しないものについてや、思考や想いのレベルでさえも発話することができます。
    この違いは、一体どこから生じるのでしょうか。

     本書は高校生から専門家まで幅広い層を対象として書かれています。
    この壮大なミステリーに、一度触れてみてはいかがでしょうか。
    (2012ラーニング・アドバイザー/人社NAMIKI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1377734&lang=ja&charset=utf8

  • 編集の川田賢氏の人選がすごいのか、ばずれが少なく、気に入って呼んでいる開拓社の言語文化選書シリーズ。これで12冊目の読了。

    テーマを狭くとって深堀りしているのが特徴で、それに専門の学者が語る。
    少ないページにまとめられていて、いずれも7時間ほど連続した時間があれば、一冊を一気よみして中断無く理解できるのか嬉しい。


    ・この本のミソ
    と言いつつ、起源と進化は科学の最も難しい問題と称されているそうで、決着していないテーマでもあります。
    つまり、それを主題としているこの本を読む意味は、著者の主張と提案を知ることにあると言えそうです。

    ・章立てについて
    これを知るに当たり、46ページの併合、91ページの3つの進化理論は読み流しはしてはいけない。コアとなる。それを踏まえての114ページ7.2が実質のまとめ。7.2.2がこの本の真骨頂で、初出の仮説と思われる。
    8章以降は、主題にそったこぼれ話的な要素ですが、ロマンがあって好き。


    日本語の非普遍文法である、連濁と複合語短縮規則の例証から始まっていて、書籍の主題に入りやすい。



    まとめ
    ヒトは、脳が肥大化するという前適応*1変化のスパンドレル進化*2により、ヒト固有の併合*3と再帰表現*4を可能にするI言語能力*5を得た。この能力を得たあるヒト一人が、自然選択的適応をへて集団化した。

    *1 機能的に近似した前駆体が飛躍的に突然変異を遂げる変化
    *2 前適応によって発現した能力の副産物によってもたらされる変化
    *3 語と語を結びつけて一連の句をつくる言語操作
    *4 存在しない概念の表現、標示づけ(品詞づけ、ラベリング、句表現)
    *5 Internalized Language

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著者プロフィール

名古屋外国語大学外国語学部 教授。専門分野は言語進化学、生成文法理論。主要業績:『言語と進化・変化』(シリーズ 朝倉〈言語の可能性〉3、編著、朝倉書店、2009)、『ひとのことばの起源と進化』(開拓社、2010),『言語の設計・発達・進化 生物言語学探求』(共編著、開拓社、2014)、など。

「2018年 『言語の獲得・進化・変化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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