エンパワメントと人権: こころの力のみなもとへ

著者 :
  • 解放出版社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759260403

作品紹介・あらすじ

エンパワメントは自分の中にあるちからを,他者との関係の中からひきだすこと。そのような視点から,いじめ,人権侵害にどう取り組んでいけばよいのかの具体的な方法を提供する。

感想・レビュー・書評

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  • 子どもの権利を勉強する中で、また、CAPの概念を学ばせていただく中で、エンパワメントと言う言葉に出会いました。なんて魅力的でパワフルな言葉なのでしょう。とは言え、言葉にして説明するには、なんと表現をしていいのかわからない。そこでこの本を手に取り、エンパワメントの輪郭を知り、具体的な取り組みを通じて、人ってこんな力を持っているんだ。だから、人権を大切にする必要があるんだということが見えてきました。じっくり読み進めていきたいと思います。

  • エンパワメントという言葉の意味が理解できた。
    衣食住とならんで大切な基本的人権は「安心して」「自信を持って」「自由に」生きることという考えも共感でき、またそのために必要な要素がよく理解できた。

  • エンパワメントと人権―こころの力のみなもとへ。森田ゆり先生の著書。人と人との信頼関係の大切さ、人と人とのコミュニケーションの大切さが実感できる良書です。人権という言葉の本質を理解するのは難しいけれど、カリフォルニア大学主任研究員として人権問題の専門家としてのご経験がある森田ゆり先生のように人権をわかりやすく定義してくれると理解できる人はたくさんいるのではないでしょうか。子供と接する機会が多い人や子育て中の人はもちろん、人権問題や人権啓発に関心がある全ての人におすすめできる内容です。

  • 曰く「人権とは「人が尊厳を持って生きるためになくてはならないもの」のこと」。それは「なくてはならない」ものだということを気付かせてくれる語りとしてのそれでもある。月刊誌『ヒューマンライツ』の連載に大幅加筆された森田ゆりさんの一冊。「エンパワメント」という概念一つとっても、改めてなぜそのような営みが生まれ、かくも実践されてきたのかということは、やはり一人ひとりの実践と蓄積によって語られるインパクト。その意味ではまだ、「人権」やその侵害の、双方の当事者たる気づきがないのかもしれない。人が生きる、生きていくことに敏感になる。

  • 社会福祉援助論や人権擁護論で当たり前のように使われている「エンパワメント」。その言葉のもともとの由来が知りたくて、本書をひもといた。概念的な説明も詳細だが、実践的な説明にも多くの紙幅が費やされていることが特徴で、本当に勉強になる。

    子ども、女性、多文化共生(ダイバーシティ)と各論が展開されていくが、これらの課題は類書をさらに深める必要を感じるが、それでもところどころ、差別とエンパワメントをめぐってハッとさせられる言葉に出会うことが出来た。

  •  題名からも察することができるように、本書は「エンパワメント」と「人権」に着目するものである。

      筆者によれば、エンパワメントとは「持てる者が持たざる者にあげる慈善行為といった類の言葉」ではなく、「お互いがそれぞれ内に持つ力をいかに発揮しえるかという関係性」という文章に集約される。より詳しく記述すれば、「わたしたち一人ひとりが誰でも潜在的に持っているパワーや個性を再び生き生きと息吹 かせること」であり、そのためには「肯定的パワー(権利意識、共感、連帯、信頼、技術、等等)をもってこの外的抑圧(権力、抑圧、暴力、差別、いじめ、等)と内的抑圧の両方を取り除いていくこと、人々の心を深く侵食している無力感と闘う」ことが必要であり、まさにこれがエンパワメントである。

      エンパワメントを考える上で重要なのは、これまでの「弱者」だと思われてきた人々が実は「弱者」ではない、むしろ彼女・かれらの「弱点」だと思われてきたスティグマやラベリングを「長所」であると捉える発想にある。これは、筆者が指摘するように従来(今でもそうであるが)日本で使われてきた「エンパワメ ント」が、たとえば「女性の社会進出」や「女性を強くする」あるいは「女性の自立」といったような、強者から弱者への一方的なまなざしが内在するニュアン スで使われるような間違った使い方を改める、いわば戦略ともいうべき思考である点に特徴がある。筆者自身も、「外に力を求めるのではなく、自分の内にすでに豊かにある力に気づき、それにアクセスすること」がエンパワメントであると論じている。

      したがって、エンパワメントは「差別をされる側、被害を受ける側、弱者とさせられてきた者の側(略)に立つことを選んだときに初めて可能になる関係のあり方」であり、抑圧される側の立場に立って考えなければ、エンパワメントの考え方に至れないという含意がある。

      また、エンパワメントは「理念ではなく、日常的な人間関係の極めて実践的な方法」であり、主義・主張にとどまらない。そこで、エンパワメントを促進するためには、「まずもって一人ひとりが自分の大切さ、かけがえのなさを信じる自己尊重から始まる」。ここでいう自己尊重を理解するために、筆者は「人権」や「権利」という道具を使って説明する。

      筆者によれば、権利とは「基本的人権」と「その他もろもろの権利」に大別される。後者には義務が伴うものである。たとえば運転免許を持つ人は車を運転する 権利があると同時に、安全に走行する義務が生じる。一方で、前者の場合は、義務が伴わず、等しく人間であれば誰でも享受を受ける権利である。

      ここで、人権とは一言で表せば「人が人間らしく生きるために欠かせないもの」である。権利の中でも前者の基本的人権は「人が人間らしく生きるために欠かせないもの」であり、エンパワメントを考える上で重要な要素となる。筆者によれば、基本的人権には「安心」「自信」「自由」の3つの権利が重要であり、子どもの虐待や女性へのセクシャルハラスメントは上記の3つの権利を侵害するため、人間の尊厳を踏みにじる、すなわち人権侵害となるので社会問題であると考える。そこで、人権を守るためには、「権利意識」が必要であり、筆者によれば、「人権意識」は「自分を大切にする心のこと」だと定義される。


    (感想)
     この本のもっともキラリと光る部分はやはりなんと言っても「エンパワメント」という思想(解釈)であり、従来の考え方とは異なる点だと思います。これは、「弱点」を「長所」へという180度の価値転換であって、鮮やかな驚きと新鮮を覚えました。好きです、こういう考え方。
      最後に森田先生のお言葉で最も感銘を受けたコメントを引用させてもらって僕のコメントも終わりとしたいと思います。

    「社会問題とは、あなたが問題の一部になっていないのなら、あなたは問題の一部なのである。」 by 森田ゆり

  • サブタイトルの「心の力のみなもとへ」が心にピリッときます。
    心にパワーをたくさんもらえる本でした。

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著者プロフィール

元カリフォルニア大学主任アナリスト(ダイバーシティ・トレーナー)。元立命館大学客員教授。米国と日本で、多様性・性暴力・虐待・DV防止専門職研修とプログラム開発に40年たずさわる。虐待にいたってしまった親の回復プログラム「MY TREE」を開発、22年間日本各地で実践し1501人の回復者を出している。トラウマを負った子どもと大人のためのヒーリングヨーガALOHA KIDS YOGAを開発。そのリーダーを全国に養成。アメリカン・ヨガ・アライアンス賞を受賞。第57回保健文化賞、産経児童出版文化賞、朝日ノンフィクション大賞など受賞歴多数。『トラウマと共に生きる』(築地書館)、『子どもへの性的虐待』(岩波書店)、『体罰と戦争』(かもがわ出版)など多数の著書がある。

「2024年 『多様性とエンパワメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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