エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学―

  • 解放出版社
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本棚登録 : 59
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759267396

作品紹介・あらすじ

エッチのまわりにあるもの――
セクハラ、DV、援助交際、性感染症にポルノ、さまざまあります。
そんななかで、高校生は、なやみます。

「避妊はしっているけれど、妊娠してみたい。そしたら、それが運命の人だよね!?」「好きになったのは同性だった…それってへん?」「彼氏がずっと一緒にいたがる…。これって、熱烈恋愛? それともDV?」「男の子がレイプされることって、あるのかな。あるよね、先生。私は、どうしてあげられる?」
保健室には、いつもいろんな相談がひしめきあいます。

そんな保健室で生徒たちと一緒にこたえをさがしてきた著者が、みなさんに「自分をすきでいてね」「いろいろあって、いいんだよ」とエールをおくります(やさしく よめる LLページつき)。

感想・レビュー・書評

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  • 高校の保健室の先生が書かれた本です。

    高校のリアルな性(セックス、ジェンダーなど)のお話が紹介されているので、思春期の子どもたちと関わる方にはぜひ、オススメしたい一冊です。

    セクハラ、DV、レイプに関するところでは、各々のジェンダー観や、虐待を含む生活環境について紹介されていました。

    私自身、自分が意識することなく「前提」としているものの存在に、気付かされて、自らのジェンダー観に、はっとしました。

    ニューカマーのところでは、就労に対する考え方についても触れられていて、これはニューカマーへの対応に限らず、私ももっと気をつけなくてはと思ったところでした。

    就労は当然のものであるという前提の元に、就労に向かう子どもたち。
    自分の学歴のために働く男の子と、当座の生活費のために働く女の子。
    切ない現実を突きつけられた気がしました。

    この本の素晴らしいところは、事例の紹介はもちろんのこと、参考文献の豊富さ、です。

    事例を読んで、いろいろ考えて、もやもやしているところに、その考えをより深める書籍を紹介して下さっているので、ほんとうにありがたいなと感じました。

    折に触れて読み返していく一冊になりそうです。

  • 定時制高校に勤める養護の先生による生徒たちをとりまくセックス、同性愛、セクハラ、DV、援助交際などの性にまつわる問題についての書。
    具体的なケースを挙げて紹介・解説している。
    著者の迷いも含めつつの記述に問題の難しさや正解のなさを感じながら、自分の身にひきつけて読むことができた。

    高校生からを対象読者にしているということでYAとしたが、高校生にはちょっと難しいか。
    学校の先生方にはすべからく読んでいただきたい本。

    本文中の引用や参考文献、脚注が非常にしっかりしており、もっと深く知りたいときに道しるべになってくれる。
    特に巻末の高校生・教員・深く学びたい人を対象としたテーマ別のブックリストは有用。

  • 高校の保健室の話。子供もいないので、今の高校生の実情や考え方はよくわからない。自分の時代と比較するとずいぶん変わっているのだと思う。また、養護の先生って大変なんだと。自分が保健室に行くことは(記憶の限り)なかったので、こんな苦労があるということも知らなかった。 男性原理、女性原理の原点、誤解は高校生の頃にはぐくまれるのではないかと思った。

  • タイトルが気になっていた本の著者・すぎむらさんが、こんど箕面のらいとぴあセミナーに来る!というので本を借りてきて読む。

    「すぎむらと同じ気もちのゆれを経験してみよう」と思われるなら、ぜひ第10章からとあったので、10章から読んでみる。10章は「「援助交際」とはなにか」。すぎむらさんを混乱に陥れた、3人の生徒・アヤナ、イズミ、ウヅキの話。

    アヤナ「…男の人が、あたしのためにお金を払うんだよ。すごくない? で、みんな、あたしをほめる。あたし、先生なんかより、ずっとたくさんの男の人にほめてもらってるとおもうよ」(p.222)
    イズミ「あったりまえじゃん。むこうはお金があるんだし、お金もらうから対等につきあえるんだよ」(p.222)
    ウヅキ「…わたしは、気分がいいの! モテモテ気分ってか、女王さまになった気分。ほめられるって、いいよ」(pp.222-223)

    どうも、3人とも「援助交際」で自尊心が高まっているらしい。すぎむらさんは混乱しながら、彼女らそれぞれの事情もふりかえりつつ考える。

    ▼…「さみしさ」の穴うめだったら、彼氏でも友人でもよかったのではないか。注意をひくためだったら「暴走族」にはいってもいい。「援助交際」を嗜癖や自傷行為の一種とかんがえるなら、「リストカット」も「摂食障害」もえらべた。しかし、「援助交際」なのだ。(p.226)

    それらを手軽にみたせるのが「援助交際」ではないかとすぎむらさんは考える。「"女子高生"というブランド」さえあれば。では、そのブランドを成立させているものはなにか? 学校から、生徒から、性的なニュアンスを消し去ろうとする学校文化こそが「援助交際」を可能とする「女子高生ブランド」を生みだしているのではないか。性的な身体をもっている高校生が、そのように身体を使うのは禁止されている、その落差が"発情装置"になるのではないか。

    魂に悪いとか、身体を売るなんて心に傷がつくとか、そんなことを言って生徒を止めるのは簡単でうるわしいかもしれない。でも、援助交際=悪という前提やその是非を問う議論よりも、高校生はこうあるべきという規範に沿うよう生徒を指導するよりも、自分の価値観がぐらぐらになるかもしれへんところで、生徒と向きあわれへんのか!と、すぎむらさんは書いている気がする。

    援助交際について先生どうしで話し合ったときに出た率直な意見は、しかし「先生としては、こんなことは言えないよね」と封じられてしまう。教師としては、親としては、○○としては「言えないよね」というのは、立場?常識?保身? ぐるんぐるんといろんなことを考えながら10章を読んで、本のはじめから読む。  

    自分が生徒に「こうであってほしい」と考えてきたこともまた常識にしばられていたのかもと書くすぎむらさんの言葉は、読んでいて、きもちに添うかんじがする。「こうあるべき」「こうするべき」よりも、いま自分の前にいて、こう生きている生徒の姿をうけとめ、そこから自分をかけて、考えてるかんじがする。

    とくに印象に残ったのは、性的虐待について書いた7章で、高校生の相談する先が「実質的にない」ということだった。児童相談所に電話をかけたすぎむらさんは、「もう17歳なんですよね。こちらも手いっぱいで… どうしても小さい子どもや命の危険があるケースが優先になりますから」と言われ、女性センターでは「未成年のかたは… こちらはDV被害にあっている女性むけなので」と言われる。本人でなくても、ぐったりしてしまう。じゃあ、たすけを求めたい高校生やティーンエイジャーが頼れるところは、どこにあるのかと。必要な人がそこにおるんやからやるんやと、そうふみきれない制度のうすさ、線引きのわからなさ。

    この本は、各章のはじめに「LLページ(日本語がにがてな人にもやさしく読めるページ)」があり、章のなかにも「言葉のせつめい」がやはりLLページでもうけられている。誰もがよめる、たのしめる本というこんな試みがあることは知ってはいたが、実際の本で取り入れられているのを見るのは初めてに近い。

    すぎむらさんが、明日のセミナー「からだのこと、性のこと、思春期のこどもたちにどう伝える?!」で、どんな話をしはるんか、すごくたのしみ。

    (9/30了)

  • 特段のことはない。でもまじめにがんばっているのはわかる。

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著者プロフィール

すぎむらなおみ
1965年うまれ
大阪教育大学教育学部卒業後、高等学校で養護教諭として勤務しています。
それなのに、わたしは「学校」が苦手です。でも、生徒のみんなといっしょにいたくて、学校はやめなかった。
勉強すれば、この苦しさからのがれられるかと…定時制高校在任中には、名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程にもかよっていました。(笑)
「こんな世の中になってほしい」という願いをこめて、養護教諭のなかまたちとつくった本に、すぎむらなおみ+「しーとん」『発達障害チェックシートできました-がっこうの まいにちを ゆらす・ずらす・つくる』(生活書院、2010年)があります。
「だれもが、のびのびできる場所」そんな場所が、世の中にたくさんふえますように。

「2011年 『エッチのまわりにあるもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

すぎむらなおみの作品

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