明治の外交力―陸奥宗光の『蹇蹇録』に学ぶ

著者 :
  • 海竜社
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759311709

作品紹介・あらすじ

現代と様相が重なり合う明治期に、日本の生存を全うした陸奥宗光の外交文書。平成の危機をどう乗り越えるか。

感想・レビュー・書評

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  • ○この本を一言で表すと?
     陸奥宗光「蹇蹇録」解説の本


    ○面白かったこと・考えたこと
    ・外交の裏側、公式文書に現れないやり取りを記すメモワールという形式で書かれた文書というのは確かに有用だなと思いました。いつか「蹇蹇録」を直接読んでみたいなと思います。


    ○つっこみどころ
    ・「蹇蹇録」の原文が筆文字のような字体にされていましたが、読み辛いだけで無意味だなと思いました。

    ・同じ著者の「陸奥宗光とその時代」を読んだことがありますが、その抜粋版というか劣化版と言ってもよいくらいのレベルだなと思いました。その本を読んでいなければ目新しい情報として受け入れることができたかもしれませんが。

    ・家系図を載せて、著者が陸奥宗光の母方の親戚筋であることを載せていましたが、確かに身内びいきと言えるほど極端に陸奥宗光を評価していて、内容の信頼性をより低下させる情報だとも思えました。

  • 明治の外交力の背後に横たわる教養力《赤松正雄の読書録ブログ》
     
     デモクラシーはどうしようもない政治であるが、かつて存在したどの政治制度よりましな制度である―ウインストン・チャーチルのこの言葉は、今一段と真実味を増す。政権交代後の民主党政権の惨状を見せつけられている現在、「国民が既に大正デモクラシーとその後の軍人の支配を経験していて、クーデターなどしてもどうなるものでもないことを知っている」とはいえ、ニヒリズムやファシズムの台頭を懸念する声は少なからずある。そんな時に岡崎久彦『明治の外交力』(前述の言葉はあとがきより引用)を読み、天を仰ぐ思いがする。

     日本の民主主義の基礎を築いた陸奥宗光。日清戦争に直面した際の彼の回想メモ『蹇蹇録』。もはや明治の回想録でさえ、漢文の素養がないものにとって、決して読み易くはない。私もかつて挑戦しようとしたが、断念した。それを岡崎さんは、分かり易く解きほぐしてくれている。つい、百年あまり前の日本にこんな指導者がいたことに改めて深い感嘆の思いを抱く。岡崎さんの『陸奥宗光とその時代』を読んでからもう十数年が経つが、一層深刻になっている日本に、陸奥のようなリーダーが出てこないことに慨嘆せざるを得ない。

     一体なにゆえに彼我の差は大きいのか。その要因の一つに挙げられるのがリーダーの持つ教養かもしれない。岡崎さんが五、六年前に書いた『教養のすすめ』は、五人の明治の知の巨人たちの器の大きさを描いて余すところがない。福沢諭吉、西郷隆盛、勝海舟、安岡正篤と並び陸奥宗光が取り上げられている。陸奥宗光については、「孤高を恐れぬ才学双全の人」と評しているが、人生で三回の勉学集中期間があったとのくだりが興味深い。

     一回目は、幼少年期。一家離散の悲運にあいながら徹底して漢学を学んだ。二回目は、西南戦争の際に政府転覆の企てに失敗して入獄した四年半。ベンサムの哲学などを翻訳。三回目が41歳からの二年間の外遊時。ヨーロッパで憲法や議会制度を学ぶ。こうした時期にそれこそ寝食を忘れ徹底して勉強をした様子が書かれており、唸るばかりだ。

  • 『蹇蹇録』の背景を読者にわかりやすく講義しています。もともとは、WEB「文語の苑」で連載されたものがベースです。久彦の文語文を堪能したい人、そちらをのぞいてみてください。すでに読んでいる人、あらためて口語で復習といきましょう。宗光のエッセンスはこの一冊で掴めます。

    もちろんこの一冊だけで陸奥宗光がわかるということにはならないので、もうすこし詳しく知りたいという人、伝記文学として光彩を放つ、岡崎久彦『陸奥宗光とその時代』(PHP文庫)をオススメします。宗光の生涯を辿りながら、明治という時代をじっくり考えてみては。。

    『蹇蹇録』は岩波文庫にあります。ワイド版がでているので、そちらのほうが読みやすいかと思います。ただ、校註者の解説だけではあまりピンとこないでしょうから、本書などが手元にあると心強いはずです。

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