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Amazon.co.jp ・本 (333ページ) / ISBN・EAN: 9784759313611
感想・レビュー・書評
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文化人類学者だからなのか、感性は若い時のままだ。60代半ばを過ぎて、若い頃に暮らし訪れたところをめぐる旅、一種のタイムスリップ。
場所はサンクトペテルブルク、ニューヨーク、パリ、ソウル、ケンブリッジ。数十年の間に、なにが変わり、なにが変わらなかったか。新旧さまざまなエピソードが語られる。
出会った人と知己になるのが巧みだ。年齢や国籍に関係なく、女友達も男友達もすぐできる。ミシェル・フーコー、ジョルジュ・デュメジルといった有名人とも懇意になる。彼らとの交流のエピソードがこの本の伏流をなす。もちろん、師エドマンド・リーチなど、ケンブリッジの大学院時代の人びとも顔を出す。
韓国は日本的な面をもっているのに、それが日本人には隠されているといった考察、パリにはパリジャンがいなくなったという考察、ロシアがあれだけの革命と反革命を経ても、本質はなにも変わっていないといった考察が興味深い。
68年の東大紛争の時、船曳は学部の1年生。学生運動に嫌気がさして休学。1年間世界を放浪する。これが彼の旅の始まりだった。ところが、同じく紛争を嫌って東大を辞めた(ただし、学生の船曳らとは反目した)教員の平井啓之と放浪先のパリの地下鉄で遭遇する。運命的なシーンだ。 -
著者の学生時代からその後に訪れた5つの都市にまつわる旅行記です。
面白かった点は、まず、著者はいずれの都市も大学生又は大学院生の頃(1970年~80年代)に訪れ、中には一定期間暮らしており、若気の至りとも言えるエピソードも含め、丁寧に示されてます。
そして、都市によって異なりますが、その10~30年後に再びそれらの都市を訪れる機会を得た筆者が観察し体験し感じた、それぞれの都市が纏っている空気感を、変わるもの/変わらないものという観点から、ありのままに記されています。
最後に少しだけ文明論的な観点からそれぞれの国を描いていますが、その際の視点、土台も可能な限りご自身の体験を下にされており、『旅行記』たらんとしている姿勢が印象的でした。 -
1990年代に東京大学出版会から出版されたロングセラー・シリーズ、『知の技法』、『知の論理』、『知のモラル』を小林康夫と共同で編集した文化人類学者による、過去複数回の滞在・訪問経験のある世界の都市に関する考察。取り上げられている都市は、サンクトペテルブルク、ニューヨーク、パリ、ソウル、ケンブリッジ(とロンドン)。
一見旅行エッセイ風だが、内容は全く異なり、過去の旅の印象、再訪の旅の印象、そしてそれらの旅を振り返る現在の考えの三つを縒りながら、夫々の都市の”変化”と”不変”を語っている。
そして、夫々の都市へ関わった期間も深さも区々であることから、長期間居住したケンブリッジ(とロンドン)、一年未満の滞在ながらフーコーのような学者との交友もあったパリ、短期滞在のソウル、ニューヨーク、一通過者に近いサンクトペテルブルクでは、分析の視点や角度は自ずから異なっている。
それぞれの都市の視点・テーマがかなり異なることから、やや読みにくい感じもするが、「旅をしながら、あれこれと、考えるときがありますね。脇に人がいたらきっと話したくなること、それを振り返って、私の一人旅の決算として書いています。」という著者の言葉からすれば、それも当然なのかも知れない。
旅をするときに様々な視点を持つことの面白さを教えてくれる。
(2014年11月了) -
旅しながら読んだ。旅したくなった。
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