- Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
- / ISBN・EAN: 9784759810820
作品紹介・あらすじ
トラ、ライオン、ヒョウ、ピューマ、クマ、オオカミ、ハイエナ、ヘビ、ワニ、ワシ…人類の祖先は数々の肉食動物に捕食されていた脆弱な生き物だった。多くの人がもち続ける「人類=狩猟者」のイメージを徹底的に打ち破り、新たな初期人類像を描きだす。
感想・レビュー・書評
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言われてみれば、そうだよなという内容。
しかし、日本語題しか見ずに買ったので、進化のほうにウェイトをおいて期待していたので、捕食されていたという事ばかりで一寸物足りない・・・
買う前にもうちょっと内容を把握しておけばよかった。 -
人は他の動物に食べられているということを直視した本。考えたくない話だが、冷静に考えれば、当然の話とも言える。
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まずは タイトルがいい。表紙のアンリルソーの絵もいい。この本を読んでから ペットに癒しを感じることはなくなりました
文系が読んでも、理解できます -
最初の人類は、肉食獣がうようよする世界で、道具や火を用いて「狩っていた」と思っていたけれども、現在の学会では「狩られていた」のが人であるらしい。
確かに、どー考えても)最新の兵器を持っているとしても)ヒトvs獣だったら獣が勝つ。(わたしは確実に負ける)
面白かったのは、ハイエナが、大抵の場合は狩りをしていて、ほとんど死肉あさりをしないこと、ハイエナ雌の方が強いらしいこと。
ヨーロッパでの人狼伝承が起きる素地は、未だに狼に人が食べられているという現実的な要素を下地としていること。けれどもアメリカにいる狼は人を襲わないこと。
そして、人は狩られる側であるからこそ、知恵を発達させて、現代まで生き延びているのだなぁと、ご先祖様の偉業にしみじみする。 -
資料番号:010991917
請求記号:469.2ハ -
人類の進化においてアウストラロピテクスからホモ属(ヒト)が分化するのに狩猟行動が影響を与えたという仮説がある。いわゆるキラーエイプ仮説で、他と霊長類とは違い人類の祖先は捕食性で強い攻撃性が人類の本性として残っているというものだ。2001年宇宙の旅のオープニングで動物の骨を道具として他のサルを叩き殺した映像が象徴している。アウストラロピテクスの化石とともに狩られる側の動物の骨が出て来たのと、頭骨に残ったくぼみは殺し合ってできたものだというところからこの仮説が生まれた。
それに対して人類の祖先は狩られる側で、捕食者から逃げることが進化を促したというのがこの本の仮説である。アウストラロピテクスの頭骨の穴は見事なまでに化石ヒョウの犬歯の位置と一致し、同じくアウストラロピテクスの化石として有名なタウングチャイルドの化石では頭骨に薄い切り傷や缶切りであけられた様な穴がありこちらは猛禽類のかぎ爪の跡に一致する。また、北京原人の化石の再現では巨大ハイエナに食べられた形跡が示されている。
Man the Huntedという原題が示すようにこの本では捕食者がどうやって霊長類を捕まえ、補食しているかが半分以上のボリュームを占める。現世の捕食者と霊長類の関係から霊長類は常に食べられる側だったということをデーターを元に示している。毎年多くの人が補食動物に教われなくなっているのも事実だ。
話はそれるがビル・ゲイツが発表した記事によると人間を一番多く殺している生物は蚊で毎年70万人以上、次が人間で50万人弱、ヘビが5万人、犬(狂犬病)が2.5万、ツェツェバエ、サシガメ(カメムシの1種)、カタツムリ1万でこれらは伝染病や寄生虫を媒介する。回虫2500、サナダムシ2000と続き、捕食者としてはワニが最も危険で1000人。カバ500、象とライオンが100で狼とサメは年間10人ほど。現代人はエサとして狩られる側にはいない。
ハジメ人間ギャートルズに描かれるようにマンモスを狩るヒトというイメージは捕食者側と一致するのだがこれは年代が大きく違う。アウストラロピテクスがいたのは400ー200万年前、身長は120−140cmほどで脳の大きさもチンパンジーやオランウータンと変わらない。二足歩行はしていたが腕の方が脚より長く、足の指も長く曲がっていて森林の中でも地上でもうまく動き回れていた様だ。25万年前にネアンデルタール人とホモ・サピエンスが生まれ7万年前から1万年前までの最終氷期を生き延びた。
ヒトの進化といえば道具、石器、火の利用が挙げられるが道具はチンパンジーも使う。石器は230万年前に現れ、木製の槍は40万年前に見つかっている。考古学者によるとヒトが狩りを重視するようになったのは40万年前以前では無さそうだ。火を使っていた証拠は周口店の北京原人遺跡で見つかっており古くて40万年前。このころのホモ・エレクトスは脳容積もアウストラロピテクスの2.5倍、現代人の8割ほどになって来ている。ギャートルズ達はクロマニヨン人でマンモスと同じく1万年前まで生きていた。例の肉を食べていたのは最終氷期を生き延び狩猟と料理を覚えた人たちでごく最近のものなのだ。
この本でどう補食されるかは丹念に書かれているのだが、残念ながら補食されることがどう進化を促したかの説明としてはあまりピンとこない。「友だちの数は何人?」のロビン・ダンバーはパートナーを固定し群れを作ることが脳を発達させるという説を挙げておりこちらの説の方が納得できる。 -
『はじめ人間ギャートルズ』ではないが、原始人類は「狩猟生活者」だったというイメージがある。“man the hunter”というわけだ。その構図に疑問を投げかけ、実は人類は一文字違う“man the hunted”「狩られる人間」として再定義されるべきだというのが本書の主張。著者は、現代に生きる霊長類が他の動物の餌食になるようすを徹底して研究し、化石記録を点検し、この結論に達している。
頭蓋が陥没した有名なアウストラロピテクスの化石。いままで人類どうしの抗争の結果、武器で砕かれたあとだと説明されてきた。ところがその傷は、大型ネコ科生物の犬歯とぴったりと一致するというのだ。著者らは、現代の霊長類が他の動物の餌食になるようすを徹底して研究し、化石記録を点検して、他の動物から「狩られる」という圧力が、人間の進化に及ぼした影響について追究していく。
調べれば調べるほど「狩るヒト」仮説に化石的な証拠はなく、「原罪」というキリスト教の理論的枠組みや、人類研究の中心を担ってきたヨーロッパ人の肉食生活が先入観になっているのだと著者は説明する。化石証拠を見ていくと、人類が狩りを始めたのはつい最近で……40万年よりも前のことではないという。
途中、野生動物がいかに人間を襲っているのか……という話が膨大に挿入されていて、いいかげん飽きてくることをのぞけば、仮説と結論はなかなか興味深い。捕食圧は、他の動物の研究では重視されているのに、なぜ今まで人間にはあてはめられてこなかったのか……たしかに不思議なことのように思えてくるのだ。
コレ一冊で人類の進化を俯瞰できるわけではないが、興味深い視点を提供してくれている。