ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝

  • 化学同人 (2008年12月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784759811582

感想・レビュー・書評

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  • こんな厚い本だったのか、と、図書館で目にしてちょっとびっくり。自叙伝だと、まぁ書きたいこと山盛りなのかもね。
    しかも実際、この人いろいろやってるから、紙幅も必要だったのかも。

    てか、ゲノム解読にまつわる論争が書かれているという話から興味を持って読みたいと思ってたんだけど、その論争というのは、思い描いていたような、ゲノム解読そのものに対する倫理・哲学的な論争とかではまったくなくて(笑)。まさかの、誰が主導権を握るかとか、利益確保いかにすべき、とか、なんか、そういう醜い争いについてだった(笑)。
    こういうおっきい物事が動くときって、まさかのこうなるんだなぁ、って、かなり驚き。


    この作者は、民間の資金を使ってゲノム解読を先にやってのけていて、こういう完全なる基礎研究でそれができたのはすごいなと思いました。
    それから、彼の、ゲノム解読チームなら解雇された後のまた発想の湧きっぷりがすごい。無尽蔵。
    海洋のゲノム、という考え方かぁ。


    あと、全然関係ないけど、ディズニーのシュレックを作るのに、当時最高のスーパーコンピュータが導入されていたと知って驚いたり(笑)。

  • 前回読んでとてもおもしろかった本、「DNA」の著者でノーベル受賞者のジェームス・ワトソンと対立したクレイグ・ベンターの自伝。「DNA」も、年取った科学者が自慢と人の悪口を書き散らかしている感じがしたけれど、ベンターの自伝はさらに輪をかけて悪口と自慢に終始している。とはいえ、その中に遺伝子解読のための科学的知識も詰まっており、科学と政治とビジネスとさまざまな人間関係について述べられている。同じ内容がワトソンの目を通したのとベンターの目を通したのでこれほども違うのかという対比も面白い。

    このベンターという人、アメリカの科学者の中では、「ゲノム情報を特許化しようとした」とか「金儲け主義」とかとにかく評判が悪いようだ。ワトソンの「DNA」でもちらっと触れられていた。(詳細は覚えていない)ベンターが科学の世界で成功を始めてからは、いろいろな人に利用され、そのおかげで批判され、中傷を受けてきたようだが、真実はどうなんだろうか?この本の中で、ベンターはその中傷に対する反撃をし、自らの行為を正当化しているが、わたしにはどちらが真実なのかはわからない。多分、どちらも真実なのだろう。立場が違えば、ものの見え方は変わる。この本を読む限りベンターは科学を愛し、自分の信じるところを貫いてきただけのように思えるが、やり方が下手だったのかもしれない。

    DNAと本書を読むと、科学の世界もビジネスや政治が濃厚に絡みあっていることがよくわかる。その世界でもうまくやっていかなければ科学の世界での成功などないのだろうか?と考えてしまう。特に遺伝学は、多額の儲けをもたらす金の卵の研究であったため、その争いは熾烈をきわまったのだろう。潤沢な資金で好きな研究ができるというすばらしい環境があったともいえるが、その金と権力をめぐる競争や陰謀は熾烈を極めたようだ。人の命を救い、生命の不思議を明かす遺伝学、なんだか少々さびしい気がする。

  • 面白いが、なにしろ分厚い。ベトナム戦争に従軍した経験が原動力となっているという話、ヒトゲノム解読について、多方面から干渉があった事情が詳しく描かれている。もちろん、自伝なので著者の側の言い分のみが書いてあるので、彼の計画の障害となった人たちにもそれぞれの言い分があるのだと思う。研究費の争奪戦というのが、シビアだったことがうかがえる。それにしてもヒトゲノム解読なんて夢のようだと思っていたのに、科学の進歩に驚かされる。

  • 大規模プロジェクトを進めるには、金とバイオインフォマティクスとコミュ力が大切であることが分かる本でした。

  • ヒトゲノム解読を何年も早め、初めて解読に成功した人の自伝。



    クレイグ・ベンターという名より、セレーラカンパニーという名をよく覚えている。大学生のとき、ヒトゲノムが解読されそうだという話を聞いて、当時読んでいた生物学関連の雑誌で、セレーラの動向を逐一追っていたことを思い出して買った。


    当初ヒトゲノム解読は非常に時間がかかるものとされ、何千にも科学者が何十年もかけないと不可能だろうと考えられていた。実際政府主導によるヒトゲノム解読はそれくらいかかる見込みだったし、それくらいかかりつつあった。しかし、ベンターは公言通り9年程度でそれを成し遂げ、かかわったチームのメンバーも数十人程度だった。


    当時は政府対私人の闘いの構図が話題になったが、俺はヒトゲノム解読によって画期的な生物学的進歩が見られ、自分の身近にも形となって現れると思って記事を追っていたが、実際特に何も変化はなかったなw

  • 今まで金儲けが好きな悪人ぐらいに認識していたベンターの自伝。
    公的ヒトゲノム計画の陰で、民間プロジェクトが成果を上げていた事実はあまり知られていないのではないだろうか。
    でも本当は、壮絶な体験の後に科学を学び始めた人であり、その科学・医療への姿勢は真摯なものがあると感じた(ここまでの情熱を自分は科学に対して持つことができるのだろうか)。
    ヒトゲノムをめぐる政治的闘争というのはすさまじく、だがあまりに不毛だった。また、セレーラを巡る話なども、金と科学のせめぎあいである。買収やらストックオプションやらまったく理解できない。
    ビックサイエンスという分野の正しいあり方はどこにあるのだろうか?
    できれば距離を置きたいと思ってしまうのは科学者志望失格なのか・・・

    最近のベンターは藻類の培養に挑んでいるらしい。科学者の枠に収まりきらない彼が、また大きな成果を生み出すことが楽しみだ。

  • 文句なしに面白い女性で 男の人ってさっぱりしていていいわねぇ 女ってどろどろしてるから ってなことを 言う人がときどきいますがどうして この本なんかを見ると 男同士の足の引っ張り合いって言うのもねぇ

  • 毀誉褒貶の激しい人、クレイグ・ベンターの自伝。
    ベトナム従軍時代から、大学院生として論文を大量生産していた時代、NIHでのワトソンとの確執(ワトソンは、ネイチャーに向かって、ベンターの論文を出すなら今後、自分たちの論文は一切投稿しない、と脅迫したらしい。でも、これが言えるあたりはさすが大御所)、TIGR設立、最近おこなっている0からゲノムを作り上げるというプロジェクトまで、500ページを越える大著。CeleraやHGS、PEコーポ、TIGR といったバイオ企業が続々と出てきた背景、国際プロジェクトとのヒトゲノム解読共同発表の舞台裏など、当時を思い出しながら楽しく読める。

    ・どうもこの人には、遺伝子を特許で縛ろうとする企業家のイメージが強いのだが、(自伝なので当然かもしれないけれど)本人は、会社の設立などの援助を受けた資本家たちに翻弄されただけで、ゲノム解読結果は科学的な成果として、人類全体で共有すべきものだと考えていたという。

    ・本文中に囲み記事の形で自身の塩基配列を読んだ結果が挿入される。ある種の疾患にかかりやすいという変異も包み欠かさず明かされるが、遺伝子によって人生は運命付けられているわけではなく、その後の生活で変化できるということが何度も強調される。

    ・「ミシンを一台もっていて、生産高を二倍にしたいと思ったら、もう一台ミシンを追加すればよい」というように、Celeraの結果はどうしても力任せの物量作戦のようにしか思えなかった。が、DNAを断片化するショットガン法では、その断片数が増えるに従って幾何級数的に計算時間が長くなるため、アセンブラなどは非常に洗練されたものであったらしい。

    ■当時もいまもわたしは、成功こそが批判者の心を動かす最善の戦略だと確信している。優れたデータはつねに議論を制するものなのだ。

    ■賢明な人なら気の利いたアイデアはいくらでも思いつくものだが、それがただ気の利いたアイデアで終わるか、それとも革新的なアイデアとなるかは、それがどのように実行され、どのように現実のものとなるのかによって決まる

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著者プロフィール

翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業。主な訳書に、『武器化する経済:アメリカはいかにして世界経済を脅しの道具にしたのか』(ヘンリー・ファレル/アブラハム・ニューマン、日経BP、2024年)、『138億年のものがたり:宇宙と地球でこれまでに起きたこと全史』(クリストファー・ロイド、文藝春秋、2023年)、『資本主義の次に来る世界』(ジェイソン・ヒッケル、東洋経済新報社、2023年)、『監視資本主義:人類の未来を賭けた闘い』(ショシャナ・ズボフ、東洋経済新報社、2021年)ほか多数。

「2024年 『ダーク・マターズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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