環境問題をシステム的に考える 氾濫する情報に踊らされないために (DOJIN選書23)

著者 : 井村秀文
  • 化学同人 (2009年3月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759813234

作品紹介

地球環境はいま、温暖化、生物多様性、化石燃料・鉱物資源の枯渇、環境汚染などの解決すべき問題が山積している。しかもこの問題群は複雑に絡みあい、また解決への道は平坦ではない。ではこれらの問題をどう理解し、いかに克服していけばよいのか。本書では、ミクロには見えにくかった各要素の関係をマクロにとらえ、複雑な問題を解きほぐすための新たな視点を提供する。環境問題の真の理解へ向けて。

環境問題をシステム的に考える 氾濫する情報に踊らされないために (DOJIN選書23)の感想・レビュー・書評

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  • 環境問題を、そのメカニズム・対策技術・社会経済等を含めたシステムとして捉える「環境システム学」の全体像を記した本。

    環境問題は、対象が多様で幅広い。自然科学や工学、経済学、社会学などいろいろな分野の素養がないと理解できない問題が多い。また環境問題は様々なステークホルダーが存在し、国や地域や人や時代によって利害の程度、問題の認識の程度が異なる為、共通の合意や理解に達するのは難しい。

    そのため、こういった問題の理解・解決に向けて、システム的なアプローチが必要とされる。このようなシステムを分析するには、大局的な動きを把握するマクロと、システムの構成要素の細部を分析するミクロの両方のアプローチが必要。問題事象によっては、それらの中間である、システムを構成するサブシステムに着目するアプローチも求められる。

    経済学においてはマクロ経済学とミクロ経済学が、物理学においては統計力学と熱力学が並立していることからも理解できるように、ミクロの単純な総和がマクロを再現はしない。その為、木も見て森も見る、ということが重要となる。





    以下メモ


    土地・食糧・エネルギーの不足など、資源の有限性という限界を超えようとする努力が人間の叡智を育てた。人間の持つ創造性や科学技術は限界を超えることに傾注されるべきであり、進歩や発展の原動力はそれしかない。

    モデルによるシミュレーションの目的は、複雑なシステムを決定する様々な要因(変数)を抽出し、その要因同士の相互関係を明らかにしたうえで、それらの要因を組み立てることで現実の再現性をテストすること。

    北京でチョウが羽ばたくとニューヨークで嵐が起こる。
    →複雑系において、入力パラメータの値を少し変えるだけで、結果が大きくことなることの例え。

    人体の生理的メカニズムを解明することによって、病気を治療あるいは予防するのが医学だとすれば、地球の医学とでも言うべき学問が環境学。これは、自然科学と社会科学の知識をおおいに利用しつつ、人類自身の生存を確保するという現実的な目的と適用対象を持った学問。

    数の増加に限界がある場合、その数がどのように変化するかを説明するのに役立つのがロジスティック曲線(シグモイドカーブ)。数が限界値に近づくに従って、増加率が鈍化するのが特徴。

    エントロピーは状態の乱雑性の尺度。
    エントロピーの増大とは、秩序ある状態が時間の経過と共に無秩序の状態に変化すること。

    私たちが扱う様々な系は、統計確率的な事実として、秩序から無秩序・乱雑に向かう傾向にあり、一方、生物は分子レベルでもマクロなレベルでも無秩序・乱雑な状態から、秩序を生み出す働きをしている。

    環境問題の本質を考える上で、含蓄に富むのが「コモンズの悲劇」という寓話
    「ここに共有の牧草地があり、多くの牧夫がそこで牛を飼っている。全体の頭数がまだ少ない時にはなんら問題は起こりらない。各牧夫が牛を増やしていっても牧草地はまだ余力があるからである。だが、牛の数が増えるにつれて牧草地には余力がなくなり、しだいに混雑が生じる。やがて、これ以上増やし続ければ回復不能なダメージを被る臨界点に到達する。」というもの。
    個々人にとっては合理的と思われる行動の結果が臨界点を踏み越え、社会全体としては好ましくない結果を生むことがある、ということ。

    「移動の自由」は人間の持つ基本的な欲求の1つ。

    エクセルギーとは、物体と外部環境の差によって物体から取り出せるエネルギーのこと。
    温度だけでなく、外部環境より圧力が高い(低い)状態、濃度が高い(低い)状態もエクセルギーを持つ。
    私たちの周辺には、エクセルギーを持ちながら利用されていないものがたくさんある。例えば、家庭から下水道に出される排水は河川の水より温度が高いし、雪国で冬季に積もった雪を夏まで地下に貯蔵しておけば外界より温度が低い。

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