不便から生まれるデザイン: 工学に活かす常識を超えた発想 (DOJIN選書) (DOJIN選書 42)
- 化学同人 (2011年9月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784759813425
作品紹介・あらすじ
不便で良かったことはありませんか?便利の追求で見落とされた不便の効用を掘り起こし、デザインの糧とする不便益のシステム論。
感想・レビュー・書評
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「便利」と「豊か」は同一視できるのだろうか、という一文から始まる。不便を解消する際に生まれる問題があるならば、不便の中にも益が存在するのではないかという視点がテーマとなっており、日常の不便で良かったエピソードや、不便益をシステムデザインに活かすための方法を考える一冊。便利を追求するのではなく、不便を活かすという考え方が斬新で面白かったです。
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便利害⇆不便益
便利なものは仕組みがブラックボックス化
不便なものはトライアンドエラーと習熟の機会がある、と単に不便で害があるものもある。
局所的な便利最適化もあるが、系を恣意的に分断せず関係ネットワークに着目。
不便益のススメの方がライトなので、読むなら本書を次に。 -
「不便益」という観念について初めて触れ、考えさせられた本。
といっても言葉として初めて聞いただけで感覚としては多かれ少なかれ世の人みんなが抱いていることなのではないだろうか。
p69にある現代の「便利」は「空疎」であり「現実感がない」というのはまさにその通りだと思う。身近なところでは24時間営業のコンビニやスーパーに並ぶ野菜や弁当・惣菜など、よくよく考えたら凄い事である。レジ横にあるフライドチキンとか、何日も何週間も品切れているのは見た事がないが一体全体その為にどれだけの鶏が日々捌かれ、産まれているのだろうか。考えたことも無い。
また、日用品やなんかについても、「いつでもどこでもだれにでも」使える/手に入るモノは一見ありがたいが、確かに愛着とか「オレだけ感」→’ありがたみ’’感謝’は抱かないかもしれない。行き過ぎた’機会均等’は日々の些細な喜びを感じる機会を奪っているのではないだろうか。
私個人の身近な例では人気コミック限定版や著者サイン本など、自ら汗して探し回って手に入れるから尊いのであって、いつでもポチッとすれば届くのではそれほどありがたくないしそうじゃない。
色々考える機会をくれた本である。
2刷
2021.6.11 -
誰にとっても使いやすいって何なのか考え続けていると、ときどき極端な方向に走ってしまうことがある。ここのところ、世の中のいろいろなものが「両手両足が使え目が見え耳が聞こえる人」にばかり最適化しすぎているのではないかと思うようになってきた。それはこういう人たちが多数派で、経済的にも効率的だからなのだろう。ユニバーサルな社会というからには、こうした人たちに多少不便でも、それ以外の人たちにメリットになるように修正していったほうがいいんじゃないかな。なんてうっすら考えていたところ、朝日新聞で川上浩司という先生を知って「やはり既にこういうことを考えてる先生がいるのだ」と。
川上先生のこの本は理系論文的で少し読みづらいが、文系の私のぼんやりした思索を理論的にまとめてくれるのでありがたい。私が思っていた「多数派に不便を強いろ」という話ではないが、二層式洗濯機をつい最近まで愛していた私には、事例がいちいち腑に落ちる。慣れ親しんで習得した技術が新しい便利さで取って代わられそこに慣れていく自分の悲しさ。もう1回読んで考えを深めたいと思いました。 -
便利が豊かに直結しない時代はしあわせで不幸だ。
というのがよくわかる。成熟社会の贅沢な悩みだなぁ……。 -
僕は、それはもう便利なものが好きで好きで、どうでもいいガジェットに随分無駄遣いをして来ました。その反動か、世の潮流か、近頃は、不便でもええよなあ、となっています。
本書は、便利・不便と、益・害というマトリクスの中の不便益についてあれこれ語る本。全体を通してとても賛成できる内容ですが、サブタイトルには「発想」と付いているけれど、発想の背景にある考え、という印象です。ハイテクとローテクとか、閉じると開くだとか、普段やっているようなことに対する、自分のやっていることとは違う表現で、愉しい本でした。 -
便利 = 不便であり 不便 = 便利である
それを総称した言葉が不便益? 考え方はそれでよいのか? -
【読書がしたい】
本書では「不便の益」の事例を様々な分野に渡り紹介している。
例えば図書の世界では、知的書評合戦と言われるビブリオバトル。ネットと比べ不便だが、時に学生が教授を負かすこともあるらしい。 -
「便利であることと豊かであることは、必ずしも一致するものではないのではないか。」
日々暮らしていく上でなんとなく感じていた違和感を解明してくれるのではないかと、期待して手にとった本。
本の内容としては、具体的事例より不便から生まれる益「不便益」の定義の探求に始まり、そうした定義から見た現実の世の中は、不便益を増大させる商品はどんなものが考えられるか、といった展開。
印象として、全体的にセクション毎のつながりが分かりにくく感じたり、いきなり専門的な用語が出てきたり(特に最後の章)、分かりやすくまとめて一般に普及させるというよりは、工学の専門家に対しての問題提起と成果報告、アイディア出しのような内容に感じた。
ただ、便利さを追求する工学に対して、不便である事から得られる益を工学として考えてもいいのではないか、とする筆者の姿勢からは、「何のための工学か」を考え直すいいきっかけになるのではないかと、素直に共感出来るものがある。豊かさに多様性が含まれてきた現代で「いいもの」を考え続ける真摯さは見習いたいと思う。 -
ディスコース...に続いて良い本でした。
【不便益】「あちら立てればこちら立たず」状態でも、トレードオフに対して妥協せず、それ自体をなくす方策を。新たな道具/方法を旧知の技術で?旧知の道具/方法を新たな技術で?