エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇

  • 化学同人 (2011年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784759814552

感想・レビュー・書評

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  • ☆HIVはエイズの原因ではなく、米国政府と製薬企業の陰謀とする否認主義者の主張を受け入れたアフリカ諸国でエイズ禍が引き起こされた。

  • エイズ否認主義に呑み込まれた南アフリカ
    エイズ否認主義とは「エイズの原因はHIV感染ではない」という主張です。今回の3冊目「エイズを弄(もてあそ)ぶ人々」を読むまでそんな主義主張があることすら知りませんでした。なぜこんな否認主義がはびこるのか不思議な感じもしますが、デューズバーグという高名なウイルス学者あたりが震源地みたいです。なぜプロのウイルス学者がそんなことをいうのか、その心理分析も含めて、いわゆる否認主義・疑似科学の心理学的な解説(著者は心理学者)を読むと反ワクチン運動に通じるものを感じます。そしてネット時代の疑似科学は笑い話ですまされない大きな災厄を引き起こします。
    マンデラ大統領(在職1994~1996)の誕生で明るい希望にあふれる南アフリカにもエイズ感染の波が襲いかかります。21世紀になってマンデラの次のムベキ大統領(在職1999~2004)がネットでエイズ否認主義に取りつかれてしまいました。ムベキが国の政策レベルでエイズ否認主義を取り入れてしまったため南アフリカは急速にエイズ大国になってしまい260万人という死亡者を出すことになりました。恐ろしい黒歴史です。
    疑似科学による最大の健康被害のひとつがエイズ否認主義なんですね。このような疑似科学がらみの事件はネットのフェイク記事とからむことで日本でも他人事でなくなっています。同じ構図は現在の子宮頸がんワクチン騒動へもつながっていくわけです。

  • 原題:Denying AIDS: Conspiracy Theories, Pseudoscience, and Human Tragedy
    著者:Seth C. Kalichman
    翻訳:野中香方子


    【出版社による内容説明】
    「HIVはエイズの原因ではない.アメリカ政府と製薬企業が陰謀をはかっている」.一部の科学者を含むHIV/エイズ否認主義者たちの奇妙な主張が,南アフリカをはじめとする国々のエイズ禍を引き起こした! 社会心理学者でエイズ問題に取り組む著者が,疑似科学と陰謀説の実態を明らかにし,否認主義に陥る心理を分析する.
    http://www.kagakudojin.co.jp/book/b81032.html


    【目次】
    第1章 生き延びるHIV/エイズ否認主義 
    第2章 デューズバーグとHIV/エイズ否認主義の起源 
    第3章 エイズ疑似科学 
    第4章 否認主義者のジャーナリズムと陰謀説 
    第5章 否認主義の政治 
    第6章 否認から抜け出す 
    エピローグ 最も皮肉な陰謀 
    付録A HIV/エイズ否認主義の年表 
    付録B HIV/エイズ否認主義者のリスト 

  • エイズの原因をHIVであると認めない人達がいたことによって、起きた悲劇を描く。
    否認主義への批判がこれでもかとばかりに書かれている。

    ただ、この本の中の否認主義者の様な人達は、いろんな世界にいるのではないか?その事を痛切に感じた。HIVの様に死に至らないからといって放置しておくのは、いずれの問題になるのではないかと思う。

  • セス・C・カリッチマン『エイズを弄ぶ人々』化学同人、読了。副題の通り「疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇」はエイズ。HIV否認論(治療薬は毒で背後に巨大な陰謀!)の現実をリポートする。

    南アフリカのムベキ大統領は、否認論を受容し、失政が続く。アメリカでもエイズが認知されるまで数年を要している。そして助かる筈の患者が藁をもすがるように否認論に傾き死んでいく。

    本書の話題は、戦慄する初見ながら、無視できぬアクチュアルな一冊ではないかと思います。

    そして、カリッチマンの次の指摘は印象的。

    「否認主義者が書いたものを読み、何人かの否認主義者と直接話しをしてきて思うのは、彼らのうちどれだけの人が、エイズとエイズ患者のことを本当に心配しているのかということだ」。259頁。

    この頑なさが否認論の根柢にはあるのかもしれない。

    「覚えておいてほしいのは、科学は常に、主流とは異なる考え方をする人の力によって大きな進歩を遂げてきたということだ。異論を唱えるということは、すべての意見に耳を傾け、証拠を重んじることを意味する。異なる意見が道理に合っていると思えるときは、それを歓迎しよう。それを調べよう。そして、確かな証拠があるのなら、それを受け入れよう。エイズに関して異論を唱え、それでも信頼され続けた人は、HIVがエイズの原因だという証拠を受け入れ、さらに先へ進んで新しい貢献をした。先へ進むことを拒んだ人が、否認主義にはまり込んだのだ」。277頁。

    知見の漸進とは、それを否定する考えと向き合うことで成就される。しかし、否認論者は向き合わず頑なになる傾向というのは示唆的でもある。

  • HIVウィルスがエイズの原因でない.エイズになって死亡するのは治療に使われる抗レトロウィルス製剤のためである.とかエイズは貧困や生活環境による免疫力の低下が原因である.エイズは巨大製薬会社と政治家が作り上げた陰謀である.といった説を唱えるエイズ否認主義者と呼ばれる人たち.過去に癌研究で偉大な業績を残しているピーター・デューズバーグなどがアメリカに多くいることに驚かされる.南アフリカのムベキ大統領はこの説を信奉し自国のエイズ行政に多大な打撃を与えた.インターネット時代、一般の人は学術雑誌のように査読を受けない偽論文を簡単に読む事ができる.HIV陽性と告げられた人がエイズ否認主義に飛びつくのはわかりやすい.またその陰でエイズに効くというビタミン剤で大もうけしている人もいる.日本ではまだないのが救い.

  • HIV/エイズの否認主義者達への批判をこれでもかというぐらい丁寧に書いている。カリッチマンの怒りが伝わる。でも、ちょっとくどいかな?

  • 「HIVはエイズの原因ではない.アメリカ政府と製薬企業が陰謀をはかっている」.一部の科学者を含むHIV/エイズ否認主義者たちの奇妙な主張が,南アフリカをはじめとする国々のエイズ禍を引き起こした! 社会心理学者でエイズ問題に取り組む著者が,疑似科学と陰謀説の実態を明らかにし,否認主義に陥る心理を分析する.原著名:“Denying AIDS: Conspiracy Theories, Pseudoscience, and Human Tragedy”

  • 否認主義に陥る心理 地球温暖化問題を科学者の陰謀だっていっている人達にも通じるかな?

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著者プロフィール

翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業。主な訳書に、『武器化する経済:アメリカはいかにして世界経済を脅しの道具にしたのか』(ヘンリー・ファレル/アブラハム・ニューマン、日経BP、2024年)、『138億年のものがたり:宇宙と地球でこれまでに起きたこと全史』(クリストファー・ロイド、文藝春秋、2023年)、『資本主義の次に来る世界』(ジェイソン・ヒッケル、東洋経済新報社、2023年)、『監視資本主義:人類の未来を賭けた闘い』(ショシャナ・ズボフ、東洋経済新報社、2021年)ほか多数。

「2024年 『ダーク・マターズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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