死を招くファッション 服飾とテクノロジーの危険な関係

  • 化学同人
3.85
  • (12)
  • (18)
  • (5)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 385
感想 : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759820140

作品紹介・あらすじ

19世紀から20世紀前半,欧米諸国の衣服や装飾品のデザインや素材には,科学技術の進歩によって革新的なものが生まれ,流行してきた.いつの時代も,その当時の最新技術によるファッションは,悲惨な出来事を引き起こした.本書は,それらを取り上げて,歴史的・社会的背景や,科学的側面とともに示す.それらの出来事に巻き込まれざるを得なかった人々の悲劇的エピソードは,それぞれが胸に迫る.そして,同様の問題は現在も存在することが,具体的な事例とともに指摘される.美しい色や贅沢な装飾の服,帽子,装飾品などの写真と,それらにまつわる悲劇との対比が,たいへん印象的である.

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ファッションアイテム 生地素材加工方法
    毒性や 職業病
    まがいものには危険性がおおい

  • 19~20世紀前半の科学技術の進歩は、ファッションの世界にも
    革新をもたらした。新しい素材や奇抜なデザイン・・・しかし、
    それらは美のみならず、悲劇・・・病や死をも引き連れてきていた。
    序論 現実でも物語でもファッションは死を招いている
    第1章 病んだ衣服ー細菌や寄生虫との戦い
    第2章 毒を含んだ技術ー水銀入りの帽子
    第3章 毒を持つ色素ーヒ素を含む緑
    第4章 色ー死をもたらす美しい色
    第5章 絡まる、窒息するー機械に巻き込まれる事故
    第6章 炎に包まれる生地ー燃え上がるチュチュと可燃性ペチコート
    第7章 爆発するまがい物ーセルロイドの櫛と人工シルク
    結論 ファッションの犠牲者を出さない未来へ
    カラー画像豊富。注、参考文献、索引有り。
    19~20世紀前半の、主にフランス・イギリス・北米のファッション。
    科学技術の進歩と最新技術は、高価だった&憧れだった衣服や
    装飾品の模造品を生み出しました。
    贅沢品の原材料たる生物の絶滅には歯止めになった面もありました。
    が、それらを製造する現場の労働者たち、身に着ける者たちには
    大いなる悲劇がもたらされました。
    機械に巻き込まれる、服やアクセサリー、髪。
    毒は、製造現場で人体に取り込まれ、身に着ける肌着や靴下、
    使用する靴墨、髪染めで、肌に染み込む。
    流行の帽子のフェルト成形に水銀。ヒ素グリーンの魅惑的な美しさ。
    当時の合成アニリン染料の鮮やかな色彩は消費者の色への欲求。
    奇抜なファッション・・・膝を拘束するホブルスカートの事故。
    燃え上がるバレリーナ。クリノリンの功罪、フランレネット。
    鼈甲を模したセルロイドの櫛や、人工シルクは発火。
    美と醜、賛美と苦痛は背中合わせ。
    美の神は突如仮面を外し、死神に変貌し鎌を振るう。
    しかも現代でも進行形という、恐ろしさ。
    日本の事例も序論に載っていましたし。(厚底靴)
    汚れた服や下着に沸いたシラミは発疹チフスを発症。
    古着や裾を引きずるスカートでも細菌や寄生虫は媒介される。
    これら細菌や寄生虫の話は、新型コロナウイルス感染の問題に
    直面している現在、これもまた現在進行形なのだと、
    しみじみ思いました。

  • この本は、なぜか図書館でとても人気があり、予約がよく入っている。どこで知ったのか聞きたい。

    この本はショッキングな健康被害の事例をカラーで入れているので、一見派手に見えるけど、全体を通してみると不完全燃焼だと思う。

    この本がやろうとしていることはとても崇高なことである。
    産業革命以降、ファッションに重金属等有害物質が無秩序・無規制に投入されたことを踏まえて、現代のファッションへの教訓にしようとしている。
    前者については、様々な事例(とはいえ、ちょっと少ないように感じた。もっと山ほどあるでしょ)を出して紹介している。
    ・・・だが、残念なことに後者までじっくりたっぷり論じるには、本の厚みが足りない。全ページカラー刷りなこともあって、ページ数が増やせないのだろう。

    著者は女性で、女性にとってのファッションは「らしさ」や「性別の役割」を押し付ける道具として使われてきた(し、今も油断してるとそうなってしまう)。
    だから著者には言いたいことが山ほどある。労働者にとっても安全なファッションをもたらすこと、そして万が一危険なファッションが生み出されたとしても、本人の意志とは関係なく、「着るべきだから」「女/男だから」の同調圧力でそれを着せられる構造をなくすこと。
    一応文章の端々で主張は滲ませているけど、もっとじっくり聞きたいと思った。

    著者には是非もっと真面目な単行本で自説を語り尽くしてほしいと思う。

  • 主に19世紀以降、生活に化学が入り込んできたことによる死亡事故を取り上げている。
    したがって、ネタとしては既知というか予想のつくものがほとんどなのだが、切り口が秀逸。当時の貴重な資料を図版として多数収録し、視覚的インパクトは充分である。
    そして、
    ・時代が進み19世紀ともなると「男性の服は合理的に進化していった」が、女性の服はそうではなかったこと。
    ・ゆえに、ファッションによる死亡事故は女性が圧倒的に多かったこと。
    ・男たちはそのように不合理で窮屈で危険な服をまとうよう女性に社会的圧力をかけ、それら産業で莫大な利益を得ながら、「そんなヤバいものを着てまでエロ媚売ってるオンナは死んで当然www」「自己責任www」とあざ笑っていたこと。
    をはっきりと指摘することで、多くの社会問題の背景には(男性による)女性差別があることを、みごとに浮き彫りにしてみせている。

    「フェミニストは何を見ても差別の話題にこじつけるwww」のではない。その逆で、この世には隅から隅まで女性差別が蔓延っているがゆえに、すべての話題がそれと無関係ではいられないというだけなのだ。
    「言語道断、卑劣な差別をなくしたい」という当たり前の命題に異議を唱えるものは、「アンチ・フェミニスト」などではない。全人類の敵と言われるべきなのだ。

    2020/2/10〜2/11読了

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1340393

  • 【推薦コメント】
    本当にあったとんでもない服飾品
    ⚫ 毒を含んだ技術‐ 水銀入りの帽子
    ⚫ 毒を含む色素‐ヒ素を含む緑
    ⚫ 爆発するまがい物‐セルロイドの櫛と人工シルク
    19世紀から20前半,欧米諸国の衣服や装飾品のデザインや素材は,科学技術の進歩によって革新的なものが生まれてきた一方,科学技術は,悲惨な出来事を引き起こしてきた.本書はそれらを取り上げ歴史的,社会的そして科学的背景を踏まえ示している.
    科学に興味のある方やファッションに関心がある方に大変おすすめな一冊です.
    (工学部・3回生 U)

    【所蔵館】
    中百舌鳥図書館

    OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000963414

  • もうなんかね、いろっいろ黒歴史に充ち満ちているのですよ。興味深いけど、闇も深い…!
    現代の事例も結構あって、海外の著者さんですが日本での出来事も幾つか取り上げられてます。
    一時期流行った超厚底靴とかね!

    ヒ素由来のグリーン、ドレスも子供服も手袋も200年くらい前の物でも綺麗に色が残ってました。
    これは着用者より製造側の労働者にかなり被害が出ていたそうですが、気に入ってよく着ていれば影響無しとはいかなかったでしょうね。
    服飾品以外にも壁紙やファブリックや家に塗る塗料・お菓子に使う食紅・画家(ゴッホやゴーギャンなども使用)が使う絵の具・造花を染める染料、果ては子供用のおもちゃにまで使われていて、ナポレオンの死因もこういった物が関わっていたのではなんて説もあります(諸説有り。
    子供の生活かなりシビア…ヴィクトリア朝で言えば他にも、泣き止まない子に阿片チンキでもっておとなしくさせたとかありましたし…。
    ※この時代は阿片チンキ=咳止めや鎮痛剤といった常備薬的な物として、特に規制されず大人から赤子にまで広く使用されていました。
    そんな風に世を席巻していたグリーンの塗料も、毒性が認知されてからは殺虫剤(農薬)や殺鼠剤として再利用されていたそうです。

    それから1909年の青い素敵なエジプト風ドレスの上半身部分にフィレレースが使われていて、あぁ実際こんな風に使われていたのね!とレース編み好きとして反応してしまったところ。
    マス目をかがって刺繍してあって遠目にはクロッシェの方眼編みのよう。
    ハーダンガー刺繍みたいな雰囲気の物もあるんですよね。
    それでこのドレスは更にスパンコールやビジューやガラスビーズで飾られているんですけど、スパンコールがセルロイド製で危険視されたのだとか。
    セルロイドは燃えやすい上に、一度火がつくと摂氏815度とかなり高温になり、燃えた後は毒性の強い煙・ガスを出すのが特に危ないのでした。
    元々は狩られまくって絶滅の危機に陥った象牙の代替品として開発された物で、きっかけはよかったんに…。
    現在はもっと安全な合成樹脂がありますけれど、そこにたどり着くまでいろいろあったものですわねぇ。

  • 主に18〜20世紀にかけてのファッションにまつわる怖いお話です
    古くはシラミを媒介する軍服や裾を引きずり街中のホコリ(や病原菌そのたあらゆるもの)を家の中に誘い込むスカート、毒を持つ緑色、つくる人もかぶる人も殺すフェルト帽子、履いた人の皮膚がただれる靴下、長く垂れ下がるファッショナブルなそれでいて都市生活には不向きなスカーフ、など危険で魅力的なファッションについて論文並の内容がそろってます。

    一方現代では自分が履いてるパンツ1枚、材料はどこから来て誰がどんなところで縫製し、ここまで運ばれてきたかわからなくなってしまいました。現代はこういったファションの危険性が非常に見えにくくなっています。

    ファッションが好きな人ならこのことについて知ること、知ろうとすることは必要な姿勢ではないかと感じました。

  • 過剰消費と危険な労働条件

    100枚をゆうに超える色鮮やかな美しい写真を眺めていれば幸せだけど、本文を読むと色を失ってしまいそうなほど悲惨な現実。

  • これはジャケットプラステーマ買い。


    今写真で振り返っても美しいドレスや帽子にまとわりつく暗い陰。
    服飾売り場で買ったものを無条件に信じ、着ている。
    まさか着衣しただけで、あるいはうっかり口にくわえてしまっただけで、彼岸にいってしまうなんて誰が思うだろう。

    この本のおもな舞台は19-20世紀前半のパリやロンドンなどの大都市だ。
    悪質な環境で害のある化学繊維を使って作業せざるをえなかった労働者。
    炎が明かりとして身近にあったからこそ、燃え移って火だるまになるレーヨンやモスリン素材。

    メインテーマではないか、動物たちの搾取によってつくられる装飾や毛皮、剥製の数々。

    そして、それらは現代にまで続いている。

    私は着物を着るのだが、昔の着物は正絹という素材でできているものが多い。
    絹は、蚕を犠牲にできている。
    ファストファッションでなにも考えずに買う洋服の染色は、製作過程は、劣悪でないといえるのだろうか。

    本書の印象に残った2文を引用する。

    こうした帽子の流行のスタイルとシルエットは、なんと寿 命が短かったことだろう。それと対照的に、有害とわかっていつつ帽子 作りに利用された化学的毒物は、なんと寿命が長いことだろうか。

    ファッションの力はあまりにも強くて、実用性はしばしば スタイルに打ち負かされた。それが今も続いている。

全29件中 1 - 10件を表示

Alison Matthews Davidの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×