仏教は宇宙をどう見たか アビダルマ仏教ノ科学的世界観 (DOJIN文庫)

  • 化学同人 (2021年7月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784759825015

作品紹介・あらすじ

仏教の思想を体系的にまとめた『アビダルマコーシャ』(倶舎論)のエッセンスを抽出し,「難しいけど面白い」仏教的世界観を紹介した『仏教は宇宙をどう見たか』が文庫版で再登場.超越者の存在や奇跡などの超常的現象を考慮しない,原因と結果の関係で展開する機械的宇宙.そこに示される物質,精神,エネルギー,時間,因果則などの概念とはいかなるものなのか.現代科学に通じるようで全く異なる世界観を提示し,仏教と科学の類似と相違を探った心躍る知的冒険の書.

感想・レビュー・書評

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  • 仏教がまだ「宗教」という枠組みではなく「叡智」そのもののように扱われていた世界線での話。

    世の中に対する「なぜ」の全てに、答えらしきものを提示してくれる装置が仏教であったとき、その仏教が「地球の外には何があるのか」という素朴な問いにどうアンサーしたのか、という哲学が、大変わかりやすく解説されています。

    わたしにとってはむしろこの本を読んでから「科学とはなんだろう」と考えるきっかけとなった、まさに「世界の見え方が大きく変わる」一冊です。

  •  著者は花園大学文学部仏教学科教授.著者紹介によると専門は,仏教哲学,古代インド仏教学,仏教史.

    以下は書評者なりのまとめであって,感想は含まれていない.


    序章
     仏教は,およそ2500年前,シャカムニによってつくられた.人生の苦しみについて,その原因と消し去る方法を説いた.

     シャカムニの説法の内容は断片的である.その断片を集めたものを『阿含経』あるいは「ニカーヤ」と呼ぶ.ただし,シャカムニの言葉をそのまま伝えるものではない.

     およそ2000年前から,ニカーヤをベースとする体系的仏教書が編纂され始める.これを「アビダルマ」と呼ぶ.アビダルマは,およそ500年間作られ続けた.アビダルマは大乗仏教を含まない.

     現在残っているアビダルマ書は,「パーリ仏教」地域と,カシミール・ガンダーラ地方にいた「説一切有部」グループから出たものである.

     日本仏教に影響したのは,説一切有部のアビダルマであり,この本では世親著玄奘訳『阿毘達磨倶舎論』に従って述べる.

     『倶舎論』の前半は,「この世の中はどういった構造になっているか」「どういった原理で動いているか」「悟りはどういう位置にあり,どのような状態をさすのか」に費やされる.『倶舎論』の示す世界の様相は,原因と結果の関係だけで展開する機械論的宇宙である.後半は仏教修行の技術論.

     世親著『倶舎論』には,世親独自の世界観も述べられているが,本書ではその部分は取り上げていない.

     アビダルマ哲学は,機械論的因果則だけで全宇宙を説明しようとして,それに成功した.アビダルマ哲学は仏教で最も科学的な領域である.

     「みかけの日常世界の背後には,見えない構造が存在しており,それを解明した時,我々自身の世界観・価値観は転換する」


    第一章 仏教の物質論――「仮説」された虚構存在の奥に,基本的な実在要素「七十五法」がある.
    「無為法」――絶対に,いかなる作用もしないことが確定している存在
     「択滅」煩悩が完全に静められて静謐な,こころの状態
     「虚空」物体の容れ物としての空っぽの空間領域
     「非択滅」未来にある法を未来に閉じ込めて,現在にいかなる作用もさせないようにしている
    「有為法」――作用することがある存在
     「色法 rūpa」物質
      「眼根 cakṣus」「色境 rūpa」
      「耳根 śrotra」「声境 śabda」
      「鼻根 ghrāṇa」「香境 gandha」
      「舌根 jihvā」「味境 rasa」
      「身根 kāya」「触境 sparśa」
      「無表色」(アビジュニャプティルーパ avijñaptirūpa)

    第二章 心・心所――精神的な実在要素.
     「心・心所(精神)」
      「心」意 manas・識 根からの刺激によって励起される反応の内,純粋な刺激の反映
         一刹那前の心は,意根として働き,意識を生じる
         六識は,一刹那に,どれか一つだけ起こる
      「心所」 心への投影に付随して起こる様々な個人的な反応
       「大地法」必ず一緒に起こる 楽・苦・不苦不楽という感情をともなう
        「受」感受作用 根を通じて心に生じる写像の受け取り方
        「想」
        「思」意思作用 意図をもって動作すること 業の発生源となる
        「触」
        「欲」
        「慧」諸存在を分析すること
        「念」
        「作意」
        「勝解」
        「三摩地」
       「大善地法」善(仏教の目的に役立つもの)い心と常に同時に起こり,ワンセットで起こる
             輪廻を止めるために役立つこと 仏道修行 涅槃
        「信」
        「勤」
        「捨」
        「慚」
        「愧」
        「無貪」
        「無瞋」
        「不害」
        「軽安」
        「不放逸」
       「大煩悩地法」悪なる心・心所 および 有覆無記なる心・心所に伴う
        「無明」正しい観察と正しい理解を阻害する愚かさ
        「放逸」
        「懈怠」
        「不信」
        「惛沈」
        「掉挙」
       「大不善地法」悪なる心・心所に伴う
        「無慚」立派なことがらを重んじない,自らを省みて恥じない
        「無愧」罪を恐れない,他者とひきくらべて恥じない
       「小煩悩地法」悪なる心・心所 および 有覆無記なる心・心所に伴う単発の煩悩
        「忿」
        「覆」
        「慳」
        「嫉」
        「悩」
        「害」
        「恨」
        「諂」
        「誑」
        「憍」
       「不定地法」その時々で,いろいろな所に起こってくる心所
        「悪作」後悔
        「眠」体を支えられない,心の縮こまり
        「尋」
        「伺」
        「貪」
        「瞋」
        「慢」
        「疑」

    第三章 仏教の時間論――諸行無常と業.
    「刹那滅」ごく短時間で現在は消える
    「三世実有説」煩悩は過去・未来についても発生する
           認識できるものは実在する
           過去の業が現在・未来に影響する
    「未来雑乱住」現在に何が来るかは決まっていない
    「異熟」「後になってから」「必ず」「違った形で(無記)」報いがやってくること
     ただし,善因→楽果・悪因→苦果(無記果)となって因果の連鎖は終わる
     (世親は現世だけが存在するとし,因は構成要素の集合状態に微小な変移が生じるとした)

    第四章 仏教のエネルギー概念.
      「心不相応行」色法にも,心・心所法にも含まれない存在
        「得」 有情(生命体)のみにおいて働く,法の結合エネルギー 離繫得を含む
        「非得」有情(生命体)のみにおいて働く,法の分離(排他)エネルギー
        「衆同分」有情においてのみ働く,ある生物グループを他から区別する実在する基準
        「無想果」無想定を経験後に死んで再生する無想天で,その死後に心・心所を再稼働するエネルギー
        「無想定」低レベルの精神集中状態から抜け出して,心・心所を再稼働するエネルギー
        「滅尽定」高レベルの精神集中状態から抜け出して,心・心所を再稼働するエネルギー
        「命根」寿命を維持する生命力のエネルギー
        「生」「正生位」にある有為法が現在に姿を現すときのエネルギー
        「住」現在という一刹那に安定的に存在するためのエネルギー
        「異」現在から消滅し始めるためのエネルギー
        「滅」現在から消滅するためのエネルギー
        「名身」ものごとの名前が,他者に概念・想念を伝達するエネルギー
        「句身」文章が,他者に概念・想念を伝達するエネルギー
        「文身」音節が,他者に概念・想念を伝達するエネルギー

    第五章 総合的に見た因果の法則――六因・五果.
    「能作因」いてもかまわないよ
    「倶有因」互いに支えあおう
    「相応因」心・心所で互いに支えあおう
    「同類因」仲間よ後に続け 同じ法がずっと連続して現れ続けている場合
    「遍行因」煩悩仲間よ後に続け
    「異熟因」後になって業の果を引き起こす

    「増上果」いてもかまわないよ
    「士用果」互いに支えあおう
    「等流果」仲間よ後に続け 同じ法がずっと連続して現れ続けている場合
    「異熟果」後になって引き起こされた業の果
    「離繫果」有為法と無為法の中継ぎをする

    終章 分類によって変わる世界の見方――五蘊・十二処・十八界.
    「五蘊」有為法の72を分類する
     「色」
     「受」
     「想」
     「行」
     「識」
    「十二処」75法を分類する
     「眼」
     「耳」
     「鼻」
     「舌」
     「身」
     「意」
     「色」
     「声」
     「香」
     「味」
     「触」
     「法」
    「十八界」認識を独立させる
     「眼」
     「耳」
     「鼻」
     「舌」
     「身」
     「意」
     「眼識」
     「耳識」
     「鼻識」
     「舌識」
     「身識」
     「意識」
     「色」
     「声」
     「香」
     「味」
     「触」
     「法」


    三界九地
     「欲界」散心
     「色界」定心(初禅 第二禅 第三禅 第四禅)
     「無色界」定心(空無辺処 識無辺処 無所有処 非想非非想処)
    有漏 煩悩との繋がりを断ち切ろうとしていない状態 ⇔ 無漏
    随眠(anuśaya 根本煩悩) 貪・瞋・慢・無明・見・疑 ⇔ 随煩悩
    アビダルマでは,世界は単一であり,仏陀は人間である ⇔ 大乗の並立世界
    西洋では,世界を物質と精神に二分し,自然科学は物質を対象とすると考える
    アビダルマ仏教では,色―根―心・心所 を含めて精神と考える

    2022.12

  • 科学は時間や空間、物質・生命に関する法則を明らかにしようとするが、古代仏教にも独自の深い世界観がある。科学と宗教の違いを考えてみるのはどうだろうか。工学部出身の仏教学者がガイドしてくれる本である。

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著者プロフィール

1956年福井県生まれ。花園大学文学部仏教学科教授。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科仏教学専攻卒業。同大学大学院文学研究科博士課程満期退学。カリフォルニア大学バークレー校留学をへて現職。専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史。著書に『宗教の本性』(NHK出版新書、2021)、『「NHK100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば』(NHK出版、2012)、『科学するブッダ』(角川ソフィア文庫、2013)ほか多数。訳書に鈴木大拙著『大乗仏教概論』(岩波文庫、2016)などがある。

「2021年 『エッセンシャル仏教 教理・歴史・多様化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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