敵の顔―憎悪と戦争の心理学 (パルマケイア叢書)

制作 : Sam Keen  佐藤 卓己  佐藤 八寿子 
  • 柏書房 (1994年11月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760111190

作品紹介

敵意の幻想に楔を打ち込む、戦争心理の図像学。古今東西の《敵の顔》に隠されたレトリックを読み解くことからはじまる、無類のヴィジュアル・サイコロジー。恒久平和への意味に支えられた柔軟な構想が満載。

敵の顔―憎悪と戦争の心理学 (パルマケイア叢書)の感想・レビュー・書評

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  • 帯文:”敵意の幻想に楔を打ちこむ 戦争心理の図像学” ”古今東西の《敵の顔》に隠されたレトリックを読み解くことからはじまる、無類のヴィジュアル・サイコロジー。恒久平和への意志に支えられた柔軟な構想が満載。”

    目次:序章 敵対人(ホモ・ホスティリス), 第一章 敵の元型, 第二章 敵意の心理学, 第三章 敵意の未来, 第四章 現況, あとがき ……etc

  • 第一次大戦、第二次大戦を中心に、戦意高揚のためのプロパガンダとして、敵国をどのように描いてきたかという点を、ポスターや風刺画などをもとに分析している。
    そこには敵を悪く描くことは勿論だが、非人間的なもの(モンスターや醜い虫や獰猛な獣、もしくは無機質なただの黒塗りの影)として描くことで、敵がやっている事と同じ残虐行為(戦闘の中で人を殺す事)を殺人ではない別のものとして認識させるための欺瞞が含まれている事を指摘している事が興味深い。

  •  プロパガンダ研究の古典的著作。豊富な図版解説を踏まえて、敵意を煽るプロパガンダの「話法」とその発想を論理化してみせる。「敵対人」の背後に〈敵〉をめぐる偏執狂的なこだわりが見出せること、〈敵〉の表象が自己の内的なもの(=喪失感、剥奪感)の投射であること、特に偏執狂的な敵意の背後に〈自分はここにいる、無視するな〉と訴えるという意味での暴力性の発露を指摘していることは、現在のヘイト・スピーチ問題にもつながる視点だと言えよう。

     だが、やはり冷戦時代の議論ではある。それは、著者が米ソの相互表象を中心に論じているという理由ではない。キーンは、最後のところで、プロパガンダのシステムを作って〈敵〉を不断に貶めつづけないかぎり、人々が「戦争」に向き合えないことこそが、逆説的な希望なのだと書いている。しかし、キーン自身も書いているように、現代の戦争は〈いかに他者としての敵と出会わないか〉〈いかに自分が敵の身体を傷つける瞬間を見ないか〉を追求するテクノロジーの中にある。つまり、キーンの願いは、いわば根底から否定されつつあるのだ。冷徹で、つねに合理的にふるまうことのできる、エンジニアのような兵士。「無人攻撃機」は、そうした人間を排除する戦争=兵器の論理がもたらした、必然的な解答なのである。

     巻末の解説で、佐藤卓己は、本書に「日本人がその「敵」を描いたポスターが一枚もない」と書いている。それが「良きにつけ悪しきにつけ「敵」を意識的に排除したわが国の鎖国的文化システムの特徴」ゆえなのかは疑問だが、たしかに、日本の日中戦争、アジア・太平洋戦争では、「敵」のイメージは驚くほど不明瞭である。では、そこで文学作品は、いったいどんな表象/イメージを産出し、提示していたのだろうか?

  • 確認先:府中市立中央図書館

    今読み直してもその価値は十分。そして、「敵」とはどうやって構築してきたのかということを再度問い直す絶好の名著かもしれない。そして読んだ人にうならせながら悶えさせる。

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