- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784760128860
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
タイトルや表紙から、20世紀のレトロな科学技術道具のコレクションかと、気楽に手に取った。ところが、読み始まるとこれが全く思い違いであり、少々面食らった。
取り上げられる道具は、確かに「電動歯ブラシ」から「高速度撮影機」まで、今では当たり前のように普及したり、時代遅れになって消えていったものばかりである。しかし、各々の道具とそれが産み出された社会的背景を語るときの言葉は、「身体性」「日常的身振り(ハビトゥス)」「バイオ権力論」「快楽」「性差」「幻想」などなど、いわゆる科学史的な記述スタイルとは全く異なっている。つまり、これは科学技術の解説史として読むべき本ではなく、社会に提供された科学技術が、大衆文化の中でどのように振る舞ったのかを分析する本なのである。著者のことばで言えば、《20世紀の現代的神話である「科学イメージ」のディスクール分析》(p.9)なのだ。
そのため本書は、M・フーコーなどの現代思想に多少とも興味がある読者でなければ、読んでみても迂遠な解説と感じるだけでピンとは来ないだろう。
個人的には、「戦争と平和の円環構造――空中広告機」(pp.182-193)で語られている、DDTの空中散布に関する当時の「科学的」言説が興味を引いた。R・カーソンが『沈黙の春』を書いて闘わなければならなかった、当時の空気がよく分かる。 -
博物学の本で、科学とは程遠い内容。著者は「ポピュラーサイエンス」という米国の雑誌を1930年代の創刊号から所有しているらしく、そこに出てくる工業製品の先駆けが紹介されている。最初のコンタクトレンズってこんなにゴツイものだったんだぁ、、、など面白くはあるが、予想していた内容とは大違い。タイトルと表紙で本を選んではいけないという教訓そのものだった。貧乏性で、開いてしまったら最後まで読まないと気がすまないという自分の性格も難儀ではある。
-
一般向けの化学は消費生活にこんなにも関わっていたのですね。身体・社会・生活のイメージと密接に結びついたポピュラーサイエンスと古き良き商品の数々。ちなみに飛行機好きの人には第4章「大空のキャンパス 飛行機の記号体系」が特に興味深いでしょう。
-
近代の科学信仰がどのように進行してきたか科学雑誌の記事を元に検証。第1章「心地よいからだ−快適さという神話」で紹介される電動歯ブラシ、コンタクトレンズ、テッシュペーパーや体温計が科学だけでなく健康・美容も消費する社会がいつから始まっていたのかを書いていて興味深い。