ヌードルの文化史

制作 : Christoph Neidhart  シドラ 房子 
  • 柏書房
3.50
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  • 本棚登録 :58
  • レビュー :10
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760139996

作品紹介・あらすじ

パスタ、ラーメン、担担麺、蕎麦、うどん…麺の源流と未来の姿を、農耕文化の歴史から捉え直す。

感想・レビュー・書評

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  • 1位カレーライス、2位ラーメン、3位焼肉、4位寿司、5位ハンバーグ、6位パスタ、7位ステーキ、8位グラタン・ドリア、9位サラダ、10位チャーハン、小中学生の好きな料理ランキングの結果である。4位に寿司が入ることで、かろうじて和食の面目は保ったというところか。しかし、いまや国民食といえるもののほとんどは、外来のものがルーツとなっている。

    なかでも注目したいのは、ご飯という呼び名がお米を指すくらいに米を主食とする日本でも、麺類が二品目ランクインしていることである。なんといっても麺は、安くて手がかからない。乾燥させたものは保存性に長け、短時間で調理できる。そんな庶民の味方である麺は、世界各地で見た目や味付けを変え発展してきた。本書はそんな麺類の文化史を紐解いた一冊である。

    著者は、スイス出身のジャーナリスト。麺好きが高じて本書を執筆することになったというから、さぞや取材にかこつけて各国の麺料理を食べまくったに違いない。日本を始めとするアジアの麺事情にも驚くほど明るく、西洋、東洋における麺の文化をフラットな立場で描いている。

    それにしても悩ましい一冊である。パラパラとページをめくっただけで面白いのはわかっているのだが、どのように読んだら一番おいしいかなどと考えてしまう。麺の調理方法がさまざまであるように、本書の読み方もさまざまだ。

    麺の広がり方を見れば、人の交易の歴史がわかるというほどだ。本書によれば、麺の起源はメソポタミアという説が濃厚であるそうだ。現在のシリアまたはイラクかアフガニスタン北部あたりである。その歴史の始まりは、旅行者の携帯食であったという。それがシルクロードを通じて世界各国に広まったのである。

    本書では、ヨーロッパから東南アジアまで、さまざまな国の麺の歴史が紹介されている。その中でも、特に注目したいのが、中東から東西へ広がる過程においてそれぞれハブ的な役割を果たした二つの都市である。

    西洋のハブはいわずと知れたイタリア・ナポリである。その語源がネオポリスから来ていることも知られるこの都市は、イタリア人の町というより多国籍都市として栄えた。乳香、ワイン、桜桃、バラ、人間、思想、新しいものやエキゾチックな東方のものは、まずナポリに到達して、西欧各地に運ばれたという。しかし、意外なことに麺だけは少し経路が違うようである。スペインからシチリア島を経由してナポリに伝来した可能性が濃厚であるという。

    一方で東洋のハブはというと、ウズベキスタン、トルキスタンをはじめとする中央アジアである。中央アジアは、さまざまな文化と宗教が共存する地域であったがゆえに、麺料理もさまざまなものが共存していたという。まさにマルチカルチャー都市としての一面を持っていたのである。この地域では代表的な麺料理は、ラグマンやマンティと呼ばれるものなのだが、今では時代遅れとみなす傾向が強く、過去のものになりつつあるそうだ。ナポリではいまだに家庭の味として根付いているのに比べると、対照的な在り様である。

    また、社会の階級間における広がりを見ていくのもの面白い。イタリアではルネサンス時代までパスタは高級品とされ、貴族や僧侶のみが食べられるものであったという。これがルネサンス以降のナポリにおいて、プレス機などによる機械化がすすみ、マカロニの値段がどんどん下がっていった。これが貧しい庶民の飢えを満たすように、広がっていったという。上から下へという移動なのである。

    ところが、日本における麺類の広まりは少し違う。最も古い麺類である蕎麦は、はじめから粗野な食物とみなされ、労働者をはじめとする庶民の食事であった。これが後に豪族などに食べられるようになるというボトムアップ的な広がり方をしている。日本が何事もトップダウンで決められないのは、この時からの伝統なのだろうか。

    全編を通して掲載されているイラストも、非常に印象的だ。パスタを髣髴とさせる黄色がかかった色合いが、麺やそれを取り巻く人々の魅力を引き出している。いずれにしても、本というものの持つ優位性をこれほど体現している一冊もあまりないだろう。本書に登場する麺類を全て食べようと思ったら胃袋がいくつあっても足りない。これを数時間で、存分に堪能することができるのだ。願わくば、食卓で料理が出てくるのを待ちながら、お腹を空かせて読みたい一冊である。

    • magatama33さん
      麺嫌いな日本女性が翻訳しているというのも面白いですよね。

      最後のほうは特に悩ましい。飲茶。
      2011/09/16
  • テーマ史

  • 世界中で愛されているヌードル(麺料理)は、アジアが起源で、マルコ・ポーロがシルクロードを逆方向に移動しヨーロッパに伝たえたといわれている。 この本の著者は日本在住のスイス人、奥様は中国人ということで和洋中の食文化が実体験を含めて書かれているのでとてもわかりやすい。 新たな発見があるかもしれません。

  • 読むのに3週間ぐらいかかったけど、それだけのボリュームが
    ある本だった。
    イタリアのパスタについても歴史などを踏まえて色んな視点から話が
    されているし、お蕎麦も楽しい内容だった。
    とにかくいろんな麺が網羅されていて、読んでいるだけでも
    旅行気分も楽しめるし、どんどんとお腹がすいてくる、
    そんな本だった。
    いろんな麺を食べたくなるなぁ。

  • 序章 ヌードル四千年の歴史
    第1章 ヌードル文化九つの舞台
    第2章 麺と小麦
    第3章 ヨーロッパのヌードル
    第4章 アジアのヌードル
    終章 ヌードルを超えた食文化

  • 世界のいろんなヌードル(定義はちょっと微妙なところもあり)についての歴史や現状を、基本的に、著者が世界中を巡って得た話をベースに旅行記に近い形で書いてあるのが面白い。日本の年越しそばの話も合って、中の人と深く知りあっているが故にかける現場の話が興味深い。著者はスイス人で中国人の奥さんを持ち日本に住んでるという経歴も、いろんな考え方を理解し、受け入れる著者の感性に影響してるのかも。残念なのは、ヨーロッパのパスタの文化あたりでは、いろんな国名、それぞれの国のパスタの名称とカタカナばかり出てきて、歴史的な経緯で入り混じった時に、もうどれがどれかわからなくなってしまったこと。本のせいではないのだけど、その辺が、私が外国文化を理解する限界かなぁ・・・。

  •  いまや世界中の人が食べる、パスタ、ラーメン、うどん、そば。麺類からひも解く文化とは何かをつづったのが今回の本。

     麺に魅せられている人は数知れず。意外に思ったのが、あのアメリカ合衆国第3代大統領のトーマス・ジェファーソンだ。著者によると、パリに滞在していた外交官時代、マカロニのとりこになり、マカロニ・メーカーをイタリアから取り寄せ、それが壊れると、自分でマカロニ・メーカーを作って客に自家製パスタをふるまった。頭の中がマカロニに占領されていたのかな。

     何かの本で日本のパスタはイタリアのパスタに比べて歯ごたえがしないと書かれていたのを覚えている。確かになよなよとまでは言わないが、うどんやそばを少し硬くした程度のパスタがある。日本人の口に合うように日本化したパスタなのだろう。食は、本家から離れると変化形が登場する一例だ。カリフォルニア巻きや、ライスバーガーなども例として浮かんでくる。

     ベトナムのフォーに関してフォーと思ったことがある。フォーは米を使った麺だ。フォーの語源だ。フォーという言葉自体、昔から使われていたわけではなかったとありびっくりした。もっともポピュラーな説として次のものがある。

     その昔ハノイの道ばたで陶製の鉢に火をおこし、麺をゆでて売るようになった。これが「coffre-feu 鉢の火」だ。火がないと麺をつくれない。だから、「feu」はあるかと訊くようになり、いつしか麺料理の名前になった。feuはフランス語で「火」を意味する。ついでにnoodel「ヌードル」の語源はドイツ語Nudelnだとは以外だった。パスタのイメージがあったので、ラテン系の言葉かと思っていたからだ。

     そばについて面白い記述がある。「蕎麦自体はほんのり木の実の味がする。栗の風味があると感じるのは、栗のピュレと色がそっくりなせいだろうか」。言われてみれば、マロンケーキの色にも似ている。

    麺を巡る歴史をたどることでより一層麺に対する愛着がわいてくる。読んでいると麺が頭の中でぐるぐる回ってラーメン、うどん、そば、パスタが食べたくなった。ただの食気か。除夜の鐘を聞いても取れない煩悩だなあ。

  • 紹介:ミステリマガジン 2011年12月 P.210

  • スイス人がドイツ語で書いた麺の本?面白かったです。それに読みやすい。

    ただ読んでいる最中に無性にギョーザが食べたくなって材料を買ってきてこね始めたり、スーパーのパスタの棚の前で矯めつ眇めつしたりしたので読むのに時間がかかりました。

    そうめんと冷麦について何も書いてないのはなぜ?

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