スエズ運河を消せ: トリックで戦った男たち

  • 柏書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (566ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760140206

感想・レビュー・書評

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  • 一応史実ということだが、かなり小説風に脚色されているし出典も無いのでエンターテイメントとして読むべし。という前提のうえで、面白い。
    第二次世界大戦のイギリス軍で、マジックを応用して敵の目を欺くことに奮闘した人々の話。有名マジシャンをリーダーに、動物学教授、コソ泥、マンガ家、大工、軍人、画家で組まれたチーム「マジックギャング」…という設定が既にフィクション的。
    こちらの戦力を誤認させるハリボテの戦車作り。重要な戦略拠点の港や運河を「消す」方法。周りに比較対象となるものが無い場合、模型の大きさが実物と違っていても、比率が正確ならば人間の目は騙されるそう。かと思えばわざと下手なカムフラージュを見せつけて裏をかく。
    当然このやり方は諜報活動とも密に関わってくる。無線機を潰す、デタラメな地図をばらまくなどの情報戦もあわせて行われている。
    エンターテイメントとして面白いが、この面白さは最終的に勝った側だからこそだろう。妙なもの(技術)を戦争に応用する試みは、たとえば日本の風船爆弾なども思い浮かぶが、仮にあれが大いに成果を挙げて戦争に勝っていたとしたらこういうエンターテイメントとして語られていただろう。逆にイギリスが敗者になっていたら、マジックギャングの試みは劣勢な軍の空しいあがきとして皮肉に語られただろう。

  • 奇術師一家のプリンスが志願してエジプトの砂漠に赴き、大学教授や偏屈な画家、腕利きの大工、パンチ誌に寄稿していた漫画家、若くハンサムで向こう見ずな二等兵らと「チーム」をつくり、エルヴィン・ロンメルを打ち負かす——とくると何から何までちょっとよくできすぎで、「ほんまかいな」と言いたくなる。
    ジャスパー・マスケリンは(寡聞にして知らなかったが)実在の人物であるようだが、訳者あとがきにあるように、「小説仕立て」と考えておくのが妥当なのかもしれない。同じ一文にあるように、映画化されたら抜群に映えそうではあるが、さてどうなったのか。
    ただ、そんなことはどうでもいいとも言える。紛れもない一大冒険活劇であり、「ストーリー」だ。100パーセントのフィクションであっても、人はしばしば魅了されるのだ。ならば100パーセントのノンフィクションでないからといって、切り捨てるには当たらない。
    ジャスパー・マスケリンと彼の「マジック・ギャング」は、何もないところから二個師団を作り出し、川のない場所にドイツの戦艦を浮かべ、アレクサンドリア港を動かし、スエズ運河を消してみせた。
    これらはみな、誇張ではない。掛け値なしの「真実」である。

    2017/7/13〜7/14読了

  • 内容は第2次世界大戦下の北アフリカ戦線で、武力や作戦で圧倒的に優勢だったドイツ軍に対し、その劣勢なイギリス軍情勢を次々と打開していった立役者であるイギリス人有名マジシャンを主人公として、主人公とその仲間で結成したマジック・ギャングの面々が、いろいろな偽装(トリック)を駆使して、最終的にドイツ軍を打ち破るという話です。
    マジックでのトリックを戦場に持ち込んで、敵を撹乱させる様は、もちろんそのアイデアを生み出した主人公の功績は大きいものの、それを支えた仲間達の力も大きく、またその個々の才能を見出し、1つのチームとしてまとめあげた主人公の才には感服しました。
    ノンフィクションの話なので、実際、第2次世界大戦でこのような偽装作戦が使われていたのだというのにも驚きましたね。
    読み終えて、これを映画化したら面白いのではないか?と思っていたところ、巻末の解説を読んでいてトム・クルーズがこの本の映画化の版権を購入していたとは驚きました。映画化されたら観に行きたいと思います。

  • 【レビュー】
    良い点:戦争にはこういう側面もあるのか、ということを教えてくれる傑作。ダミーが縦横無尽に活躍したことを初めて知った。また、諜報活動を前提とした作戦を立案することも知って、諜報活動がいかになされていたかも知った。
    否定的な点:「スエズ運河を消せ」とトリックというタイトルにだまされてしまった。あまりトリックとはいえないことが多い。結局は工場でダミーをたくさん製造しました、につきてしまうし。
    結論:夜寝る前に楽しむ本としてよい。

  • このタイトルでスエズ運河を消してからの方が長いとは思わなかった。特に思い入れの無かったマジックギャングの面々に愛嬌が出てきた頃にフランクが死んで呆然となった。

  • 2020/5/2読了。

  • 戦場でマジックを披露した男たちの話。
    と言ってもこの場合、慰労公演という意味ではなく偽装工作という意味でだ。

    まずキャラクター設定(と言いたくなるがこれはノンフィクションだ)からして良い。
    一悶着ありつつ何とかカモフラージュ部隊を作ることができたマジシャンのジャスパーの部隊に入ろうとするメンバはやはり変わり者が多く、まるで戦隊物のキャラ付けの様にデコボコだ。
    動物擬態を専門とする大学教授フランク、チンピラとでもいうのが適当な若者マイケル、木材加工の専門家である大工ネイルズ、平和主義者の漫画家ビル、扱いの難しい部隊の中でも最も気難しい画家フィリップ、ここまで変なのばかりの中だと逆に目立ってしまう普通の軍人ジャック。

    そんな彼らが殆ど何も与えてもらえない中、ゴミ捨て場やその辺に落ちているものを組み合わせて何とか偽装戦車を作ったり偽の街を作ったり(?!)して実績を作っていき、タイトルにもあるようにスエズ運河を消すわ潜水艦を作るわ上陸作戦を行うわと縦横無尽の活躍をしていく。
    勿論そう何もかもが上手くいくばかりではないが、誰しもが不可能だと思うことを自分のできる全力でやっていく姿は、痛快とも関心とも違って、どうしてそこまで…と思ってしまう。これが軍人なのだろうか。

  • エンターテインメントとしては一級。面白かった!!

  • 近代の戦争は、国家と国家の総力戦と言われるが、マジシャンの能力(才能等)を有効活用する戦争があった、ということに、驚きあり。あの有名な砂漠での戦いの裏側にあった、もう一つの戦い。敵の裏をかくというか、相手を翻弄するというか、謀略戦の全体像は、なんとも凄いモノがあります。生真面目だった、戦前の帝国陸軍に、マジシャンの才能を、戦場で活用するという大胆なアイデア(度量等)は、流石になかったかな。(残念)

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