人身売買・奴隷・拉致の日本史

著者 :
  • 柏書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760143276

作品紹介・あらすじ

日本人奴隷は、ポルトガル商人によって東南アジア・インド・ヨーロッパへと売り飛ばされたが、悪いのは売ってくる日本人である!?日本人が日本人を襲い、日本人が中国人・朝鮮人を掠奪する。そんな暗黒の時代。

感想・レビュー・書評

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  • 広く律令期から江戸初期に至る様々な事例を紹介しています。戦国時代の雑兵は、満足な褒賞が出ないので、彼らの戦争目的は何と勝ち負けよりも「乱取り」にありました。乱取りとは、武器甲冑から女・子供に至るまで金目のものを鹵獲することです。武田信玄などの名だたる武将も、行軍を止めて乱取り休憩をしたり、占領地に在陣して鹵獲機会を与えたようです。女・子供は、人買い商人がいて、労役や風俗に供されます。残念ながら、本書は学術書ではなく、様々な文献を引用した読み物でした。この分野の研究が進むと日本の社会構造の変遷が見えてきます。良質な研究書が待たれます。

  • 本書には奴婢という日本では少なかったと思われる存在が、古代からの法律の観点から再点検をして、あまり知られていない事象を説明される
    次に人身売買だけでなく17世紀初頭まであった傭兵としての日本人の東南アジアにおける絶対的な暴力装置としての実力が説明される
    そして・・・秀吉の朝鮮出兵は後世に至るまで把握が叶わないほどの影響を与えている
    「文禄・慶長の役における朝鮮被虜人の期間」を著した金文子氏がフロイスの日本史を参考にして五万人程の捕虜だという
    「月峯海上録」を著した鄭希得は十万人程
    他、二~三万人という文献もある
    これ等拉致された朝鮮人については、20余年を経て国交回復した慶長十年からの重大な課題となり、帰国を望まないものも説得して最初の帰還者が1400人程だったらしい
    最近知識として得た、合戦における足軽など一般兵士は「乱取り」という戦場における荒稼ぎがあるからこそ従軍するようだ
    麒麟がくるの中でも今川義元が、味方の平氏が乱取りに明け暮れて、自軍の不利をもたらした状況に舌打ちをしていた
    実は日本の兵士達は朝鮮に行っても同様に乱取りをして、多くの労働力(奴隷的な意味が強い)を奪ってきたのだ
    秀吉自身は、方針として乱取りをすべて禁止しているが、戦端における統制など効くものでは無かった
    そのうち方針を転換したわけでもないだろうが、捕虜の中に細工の出来る者、縫官、手先の器用な女性を進上するよう命令を出す
    戦場に赴いた大名や捕虜を売り買いする商人はもっと明確に目的があった
    1.捕虜を日本で農耕にむける
    2.その分、日本農民を兵とする
    このことで明国への攻撃態勢を整えられる
    非人道的な法が益が大きい・・・

  • とてもセンセーショナルなタイトルに惹かれ手にとる。
    一番印象に残ったことは、悲惨な、過酷な、さながら〜のようとか、かなり情緒を感じる言葉の多さであった。
    私は不明瞭な歴史の話を、現代の尺度での情緒から語られることは好まない。そのため本書は読むことがなかなか苦痛だった。
    なるほどと思う記述はもちろんあるが、こんなに情緒丸出しだといちいち話の妥当性に疑問を持ってしまう。
    このタイトルなのに、ラストは朝鮮人からみた文禄・慶長の役の被害をつらつら並べて、皆が不幸になる戦争は二度としてはいけないと締めたところは圧巻だった。
    本当に苦手でイヤな本だった。

  • ふむ

  • ここに書かれているのは、ドラマや小説では描かれない過去の日本の姿であり、衝撃的だったが想像がかきたてられて良かった。
    今や基本的人権の尊重というのは当たり前だけど、日本の歴史の中では最近出てきたばかりということは忘れないでおきたい。

    この本は手紙や通達書など実在の資料をベースに説明しており、説得力があると感じた。また、資料は思いきり良く意訳されており、誤解を招くという否定的な意見はありそうだが、素人にはありがたかった。

  • 日本にも古代から奴隷はいて、「奴婢」とか「賎民」とかいう言葉は日本史でも習ったような記憶がある。
    一応表向きには人身売買や奴隷の使役はよくないことだ、とされてきたが、実際には奴隷に類する人はいたし、「公奴婢」という役所が使役する奴隷もいた。
    また奴婢(賎民)になると納税の義務がなくなったということで、重税から逃れるために自ら奴婢になる人も後を絶たず、奴婢が増えすぎると徴税に支障をきたすという事情も奴隷禁止令の根幹にはあったらしい。
    鎌倉時代や室町時代になっても、繰り返し禁止令が出されたにもかかわらず人身売買はやまず、騙して奴隷にしてしまう人買いや、自ら妻子や自身を身売りしてしまう人も多かった。

    戦国時代になると、農民兵たちは戦乱の中、人狩りをはじめとする収奪を盛んに行った。ほとんど無給で狩り出されているということもあり、そうでもなければ生きていけないという事情もあった。
    それでも豊臣秀吉が天下統一を目指す中で、人身売買や人狩りを禁じようとした。それは農村から人が連れ去られると、農地が荒廃し、復興がままならなくなるという発想で、日本すべてを我が物と考えた天下人ならではと言えるかもしれない。
    朝鮮出兵の中では日本人、朝鮮人それぞれが捕虜になり、連れ去られた。
    一方で布教のために来日したはずのポルトガル人が日本人を奴隷として買いあさり、アジアの別の植民地へ連れ去ることもあった。貿易の利益もありはじめキリスト教の布教に寛容だった秀吉が禁教に転じたのも、ポルトガル人による人買いがあまりに悪質だったからだという。

    現代においてもこうした人身売買はなくなっていないが、過去の歴史の中で何があったのか、改めて見つめてみるのも興味深いことと思う。

  • 古代から戦国においての人身売買や奴隷に関して、史料から実態を浮かび上がらせようとした一冊。でも読んでる途中、あまりの数の多さに日本人口が(特に農民が)いなくなってしまったのですがー。日本史と言いつつ最後に至っては朝鮮人の活躍だし。史料少ないから、仕方ないのかな。

  • 図書館:2014/04/25

    大河ドラマ「黒田官兵衛」で宣教師の追放のシーンがあるが、この本には宣教師たちが日本で何をやっていたか、それに対して秀吉がどう対応したかも書いてある。教科書には書いていないようなこともたくさん。1600年以降は日本は傭兵や武器(鉄砲)の供給地だったなど驚くことが多かった。日本人奴隷はヨーロッパで見られた、またメキシコなどでも見られたなどという記述もある。

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著者プロフィール

(株)歴史と文化の研究所代表取締役。専門は日本中近世史。
『豊臣五奉行と家康 関ケ原合戦をめぐる権力闘争』(柏書房、二〇二二年)、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』(星海社新書、二〇二一年)、『関ケ原合戦全史 1582-1615』(草思社、二〇二一年)、『戦国大名の戦さ事情』(柏書房、二〇二〇年)。

「2022年 『江戸幕府の誕生 関ヶ原合戦後の国家戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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