『アラバマ物語』を紡いだ作家

制作 : Charles J. Shields  野沢 佳織 
  • 柏書房
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本棚登録 : 13
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760143375

作品紹介・あらすじ

トルーマン・カポーティの幼なじみにして、ピュリッツァー賞作家、ハーパー・リー。生涯に書いたのは、この一作のみ。なぜ、彼女はこれ以降作品を書かなかったのか…カポーティ『冷血』の誕生秘話を含む、初の本格評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 『アラバマ物語』があまりにも気に入ったので、ついこれも読んでしまったけれど、読んでいるうちに『アラバマ物語』が少し色褪せて見えてきてしまった。
    作品があまりにも気に入ると「どんな人が書いたんだろう」と書いた人のことが気になるものだけれど。
    ファンって勝手だな、と自分に対して思った。

    『アラバマ物語』はフィクションだけれど、私が思っていた以上に、彼女の実体験や実在の人物がもとになって描かれているんだと知ってビックリした。だから二作目はずっと書けなかったのか、と腑に落ちた。
    一作目で自伝的なものを書いて高く評価された作家の「あるある」な話だと思う。この本の言うような「性格がまじめすぎた」とか「プレッシャーが大きかった」ということ以上に、0から何かを創作することの壁にぶち当たったのかなと思った。

    そういう意味では、やっぱりカポーティはプロの作家で、作家になるべくして生まれた人だと感じる。彼の作品には才能がきらめいている。
    逆にハーパー・リーは依頼された内容に合わせて何かエッセイのようなものを書くこともうまくこなせなかったようで、それなのにピューリッツァー賞まで取ってしまったものだから、カポーティは本当に腹立たしかっただろうなと思う。
    彼が大人げないのは確かだけれど、彼の感じた苛立ちはとても理解できる。クリエイティブな職業すべてに言えることだけれど、才能が評価や報酬に正当に反映されるわけじゃない辛さ。

    また、明らかにハーパー・リーも2人の実力の差については分かっていたようで、そのことに関してとても謙虚だっただけに『冷血』での献辞の件は読んでいて哀しかった。
    彼女はインタビューでカポーティの才能を認めてほめていたし、『冷血』でも友達としてすごく誠実に仕事をしただけに、あの仕打ちは本当に驚いただろうと思う。

    ということで、なんだか読後はしょんぼりしてしまった。人間の悲しい部分、というか、人生の悲しい部分、が浮き彫りにされている伝記でした。

    蛇足だけど、カポーティがハーパー・リーの恋愛について友達に書き送っていたという事実はとても嫌な感じがした。こういうこと(人の秘密)を、心配しているフリをして吹聴したがる人は世の中に多くいて、うへぇ~と思う。
    でも、私はカポーティの『叶えられた祈り』はかなり好きで(けっこう、相当、好きです)、あの小説って、彼のそういう性格が大いに生かされた小説だと思われるので、なかなか複雑。エラそうに非難しながらも、そういう作品を楽しんで読んでいたりもして、私ったらどうなの、とも思う。

    そうそう、映画については、私が原作で気に入っている部分の多くが映画には入っていなくて少しガッカリしたのですが、この本を読んで、それはグレゴリー・ペックのせいだったと分かった。割と好きな俳優だったけど、原作への理解力はその程度だったのかと幻滅した。知性派なイメージがあっただけに。この部分はできれば知りたくなかったかも。(笑)

  • 長きにわたり本棚で温めに温め続けた「アラバマ物語」を
    先日いよいよ読了し、読んだら読んだで俄かに登場人物アティカスに
    心奪われた私、続けてこの本を読んでみた。

    「アラバマ物語」の本は題名だけでも知っていても、
    作者についてはハテナ?と言う人が多いのだろうね、
    題名はこんな題名だもの。

    作者はなんどもハーパー・リーに取材を申し込むも
    完全に無視される中、丹念に関係者に取材を続け、
    この作品を書き上げた、とのこと。

    概ね伝記と言うのは、途中どうしても退屈になるのと、
    中途半端な感じで終わるものが多い印象。
    「事実は小説より奇なり」などと言うけれど、
    ある一つのエピソードをとれば、そんなこともあるけれど
    人生全部を語るとなると、やっぱり小説の様にうまいことは行かないよね。

    でも今回のこの本は途中飽きさせることもなく、
    成程と言う感じでラストを迎え、
    結構厚みのある本でしたが惹きこまれてあっという間に読んだ。

    その理由としては、
    主人公はもちろん、「アラバマ物語」の作者
    ハーパー・リー、なのだけれど、
    もう一人、影の主役にトルーマン・カポーティの存在があったのは大きい。
    (後ろについている年表に、ハーパー・リーと家族とカポーティの年表がついている)

    彼は、ネル(ハーパー・リー)の幼馴染でもあり、
    また彼の作品「冷血」の取材には助手としてネルが一役買った。

    この本の中でも、二人が取材に奔走するくだりは、
    分量も多めで、その題材から想像できるとおり、スリリングで、
    非常に興味深かった。

    カポーティの作品の中では唯一「冷血」だけ読んだことがあったので
    なんとかギリギリセーフで間に合った感じだ。
    (先に「アラバマ物語」はもちろん、カポーティの作品を読んでいれば
    さらに楽しめることは確か)

    「冷血」の現場の取材ではネルが活躍し、作品に大いに貢献したのに、
    カポーティは裏切って…、それでもそんな後でも
    薬物とアルコールでぼろぼろになったのカポーティに付き添ったり…

    幼馴染を超えた、なにか大きなよすががそこにはあるのでしょうね。
    トルーマン・カポーティは、両方の親に見捨てられ、過酷な幼少期を送ったこともあり、
    常に「自分を好きな人の事を傷つけてみて気持ちを試す」と言う
    悪い習性があったとのこと。

    私はそれに加えて、「冷血」の時の裏切りについては、ちょうどネルが「アラバマ物語」が
    大人気となっていたため、本当の人気者は自分だ、と
    見せつけたかったのかな?などと想像。

    ネルがかなり幼いころから自分の心に忠実で、
    一般的な理想や幸せに囚われないところに、勝手ながら憧れたり共感したり。

    しかし、最初の作品が超がつくほど大成功する、と言うのも
    なかなか難しいものなのだね。

    ただ、作家としての成功とか失敗云々ではなく、
    「アラバマ物語」と言う素晴らしい作品をこの世に生み出す使命を全うした、
    と言う感じ、でしょうか。

    また、「アラバマ物語」が映画になるところ、
    主人公のグレゴリー・ペックが登場したり、
    裏話も満載で面白い。

    ただ、グレゴリー・ペックが「(子供のシーンを減らして)俺の出番をもっと多く!」
    とものすごい注文を出してきて、
    映画がどんどん変更させられた、と言うところでは
    結構幻滅だったけれど、
    映画の大成功を思うと、結局それが正しかったのかな…などと思ったり。

    本と映画の好きな人、「アラバマ物語」の好きな人、
    カポーティが好きではないけれど気になっている人は、必読。

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