『アラバマ物語』を紡いだ作家

制作 : Charles J. Shields  野沢 佳織 
  • 柏書房 (2014年1月発売)
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  • 本棚登録 :12
  • レビュー :1
  • Amazon.co.jp ・本 (517ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760143375

作品紹介

トルーマン・カポーティの幼なじみにして、ピュリッツァー賞作家、ハーパー・リー。生涯に書いたのは、この一作のみ。なぜ、彼女はこれ以降作品を書かなかったのか…カポーティ『冷血』の誕生秘話を含む、初の本格評伝。

『アラバマ物語』を紡いだ作家の感想・レビュー・書評

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  • 長きにわたり本棚で温めに温め続けた「アラバマ物語」を
    先日いよいよ読了し、読んだら読んだで俄かに登場人物アティカスに
    心奪われた私、続けてこの本を読んでみた。

    「アラバマ物語」の本は題名だけでも知っていても、
    作者についてはハテナ?と言う人が多いのだろうね、
    題名はこんな題名だもの。

    作者はなんどもハーパー・リーに取材を申し込むも
    完全に無視される中、丹念に関係者に取材を続け、
    この作品を書き上げた、とのこと。

    概ね伝記と言うのは、途中どうしても退屈になるのと、
    中途半端な感じで終わるものが多い印象。
    「事実は小説より奇なり」などと言うけれど、
    ある一つのエピソードをとれば、そんなこともあるけれど
    人生全部を語るとなると、やっぱり小説の様にうまいことは行かないよね。

    でも今回のこの本は途中飽きさせることもなく、
    成程と言う感じでラストを迎え、
    結構厚みのある本でしたが惹きこまれてあっという間に読んだ。

    その理由としては、
    主人公はもちろん、「アラバマ物語」の作者
    ハーパー・リー、なのだけれど、
    もう一人、影の主役にトルーマン・カポーティの存在があったのは大きい。
    (後ろについている年表に、ハーパー・リーと家族とカポーティの年表がついている)

    彼は、ネル(ハーパー・リー)の幼馴染でもあり、
    また彼の作品「冷血」の取材には助手としてネルが一役買った。

    この本の中でも、二人が取材に奔走するくだりは、
    分量も多めで、その題材から想像できるとおり、スリリングで、
    非常に興味深かった。

    カポーティの作品の中では唯一「冷血」だけ読んだことがあったので
    なんとかギリギリセーフで間に合った感じだ。
    (先に「アラバマ物語」はもちろん、カポーティの作品を読んでいれば
    さらに楽しめることは確か)

    「冷血」の現場の取材ではネルが活躍し、作品に大いに貢献したのに、
    カポーティは裏切って…、それでもそんな後でも
    薬物とアルコールでぼろぼろになったのカポーティに付き添ったり…

    幼馴染を超えた、なにか大きなよすががそこにはあるのでしょうね。
    トルーマン・カポーティは、両方の親に見捨てられ、過酷な幼少期を送ったこともあり、
    常に「自分を好きな人の事を傷つけてみて気持ちを試す」と言う
    悪い習性があったとのこと。

    私はそれに加えて、「冷血」の時の裏切りについては、ちょうどネルが「アラバマ物語」が
    大人気となっていたため、本当の人気者は自分だ、と
    見せつけたかったのかな?などと想像。

    ネルがかなり幼いころから自分の心に忠実で、
    一般的な理想や幸せに囚われないところに、勝手ながら憧れたり共感したり。

    しかし、最初の作品が超がつくほど大成功する、と言うのも
    なかなか難しいものなのだね。

    ただ、作家としての成功とか失敗云々ではなく、
    「アラバマ物語」と言う素晴らしい作品をこの世に生み出す使命を全うした、
    と言う感じ、でしょうか。

    また、「アラバマ物語」が映画になるところ、
    主人公のグレゴリー・ペックが登場したり、
    裏話も満載で面白い。

    ただ、グレゴリー・ペックが「(子供のシーンを減らして)俺の出番をもっと多く!」
    とものすごい注文を出してきて、
    映画がどんどん変更させられた、と言うところでは
    結構幻滅だったけれど、
    映画の大成功を思うと、結局それが正しかったのかな…などと思ったり。

    本と映画の好きな人、「アラバマ物語」の好きな人、
    カポーティが好きではないけれど気になっている人は、必読。

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