パリのすてきなおじさん

著者 : 金井真紀
制作 : 広岡 裕児 
  • 柏書房 (2017年10月24日発売)
3.93
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  • レビュー :7
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760149117

作品紹介

難民問題、テロ事件、差別の歴史…。世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集!

パリのすてきなおじさんの感想・レビュー・書評

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  • 著者の金井真紀(1974年~)は作家・イラストレーター。
    本書は、パリ在住40年のフリージャーナリスト広岡裕児(1954年~)と組んで、二人の共通の商売道具である好奇心と、金井氏の選おじさん眼と、広岡氏が自在に操るフランス語の3つを武器に、パリの街を2週間歩き回り、捉まえた67人のおじさんを“陳列”したものである。それぞれのおじさんについて、話に加えて、著者の描いたすてきな似顔絵が添えられている。
    67人のおじさんは、ルーツ・民族・宗教・職業・年齢・・・実にバラエティに富んでいる。カリブ海諸国からの移民を両親に持つ絵描き(50歳)、世界中を旅するスペイン人のギター作り職人(76歳)、チュニジア移民二世の老舗クスクス屋の店主(50歳)、休日にサッカーに興じるアルジェリア移民二世のベルベル人(45歳)、人気サッカーチームのパリ・サンジェルマンのファンが集まるバーの店主(53歳)、毎日競馬場に通う引退したアルジェリア移民(92歳)、西アフリカ・マリからの出稼ぎのスーツが似合うコンシェルジュ(56歳)、フランス系ユダヤ人とチュニジア系ユダヤ人を両親に持つチュニジア生まれのお菓子屋(72歳)、中国浙江省生まれの小さな出版社を経営する中国人(50歳)、ホロコーストで両親と3人の弟妹をなくしたポーランド系フランス人(87歳)、在仏クルド人自治区領事館に勤めるイラクから逃げてきたクルド人(29歳)、キュリー研究所で長年ガンの研究をしてきたベトナム人(76歳)、等々。
    私は知命を過ぎた、まさに著者のメインターゲットとなるおじさんで、「“すてきなおじさん”になるためのヒントが得られるといいな~」くらいの気持ちで本書を手に取ったのだが、登場するのは期待に違わぬ味のあるおじさんばかりであった。
    しかし、それにも増して印象に残ったのは、たった2週間の滞在でこれほど多彩なおじさんに出会う、パリという街の奥深さであった。パリはやはり、様々な歴史・地理的要因を背景にした人種のるつぼであり、ある意味、世界の縮図なのだ。(東京で同じことをやろうとしても絶対にできない)
    すてきなおじさん達の話を聞きながら、世界の多様性を感じることができる良書である。
    (2018年2月了)

  • 人を通して街の姿を描いた一冊。

    様々な出自をもつ人々が集まる街で、皆それぞれ何を思って生きているのか。
    複雑な問題の間で揺れる現在のパリの様子が、おじさんたちの言葉から浮かび上がってくる。

    みんな違って、みんな居ていい。

  • 移民の国なだけあって、いろいろ。

  • 大傑作。折に触れて手に取りたい。いろいろな人生が詰まった得がたい本の一つ。

  • 取材後記に書かれている「この旅は、人間というもの、生きるということの破片を集める旅だった」というまとめにしびれた読後感。

  • 植民地政策の生々しい現実と、身の回りにいるキャラクターの強い人たちの話にぐいぐいと引き込まれました。
    とても楽しい読書体験でした。
    人は話してみないとわからないことが多いが、たくさんの人とたちのこだわりを聞くたびにその思いを強くした。

    あまり意識していないけれども、似たようなキャラクターの濃い人たちが周りにいるかもしれない。そーゆー目でいろんな人たちと話をしてみるのもいいかもしれない。

  •  つい先日、中島京子著『ゴースト』を読んだところ。その中島京子が「推薦!!」と帯にあり、つい手に取ってしまった(笑)

     お手軽なイラストエッセイと思い読み始める。「おしゃれなおじさん」「アートなおじさん」。フムフム、なるほどパリっぽい。
     ”選おじさん眼”に自信の著者が選んだだけあって、一家言を持ったおじさんが並ぶ。
     「白と黒は補完し合う関係だ」と黒人系のピアニストは語る。 「2分考えればすむことを、みんな大袈裟に考えすぎ」とMUJIブランドを愛するシンプルを信条とするシャレ者や、ピカソを「嫌な奴だった」と述懐するアーティストは、芸術は経済に蹂躙されたと嘆息する。

     たった二週間で取材したとは思えない含蓄に富んだオジサンたちの人生訓が陳列されていく。

     やがて、「あそぶおじさん」の章で人生の真髄に迫り、「はたらくおじさん」「今を生きるおじさん」と進むにつれ、宗教や難民問題、昨今のテロや人種差別など、フランスという国家が抱える諸問題へと話が深まっていく。。。

     昨年(2016)見たフランス映画『奇跡の教室』で、ひとクラスに29もの民族がいるというかの国の実態に驚いたが、本書に登場する67人のおじさんも人種、国籍、経歴、職業、宗教が実にバラエティに富んでいるのだった。

     たまたま絵になる、フランスはパリのおじさんをモチーフに選んだのかもしれないが、今この渾沌とした世界の縮図とも言えるパリで敢行されたこの試みが、実に時宜を得て成功している気がする。
     2015年に起きたパリ同時多発テロの現場となったカフェにも足を運ぶ。女主人(ここだけは、おじさんじゃないのだけど)は、一旦は取材を拒否するが、やがてこう語る。

    「わたしたちは、生きることに決めたの。前を向くことに決めたの。そのためには忘れる時間が必要なの」

     ここ数年の間、2度足を運んだパリだが、また見る目が変わった気がする。人種、民族、文化、宗教・・・あらゆるものが百花繚乱。花の都の愛称は伊達じゃあない。

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