パリのすてきなおじさん

著者 :
  • 柏書房
3.88
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本棚登録 : 531
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760149117

作品紹介・あらすじ

難民問題、テロ事件、差別の歴史…。世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集!

感想・レビュー・書評

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  • 昨年度、学校図書館に購入した本。
    当時話題になり、イラストも素敵で読みやすそうだったので、生徒にも先生にもいけるのでは?と思ったのだが、パラパラとめくっただけで、きちんと読んでなかった。

    もっと早く読んでおけば良かった!
    しかし、このタイミングで読めて良かった!

    パリはオシャレなだけでなく、本当に懐の深い街なのだということが、色々なおじさんの語りから分かる。
    また、金井真紀さんと広岡裕児さんのコンビが絶妙。
    パリ在住40年の広岡さんの伝手でお願いしたおじさんも数人いたようだが、残りほとんどは街歩きの偶然頼み。しかし、金井さんのおじさんハント能力は目を見張る。
    自称25歳から92歳までのおじさんたちのそれぞれの人生が、このフランスの歴史を断片的に語り、この国の有り様を伝えてくれる。

    先の大戦、ドイツ占領下のフランスでもユダヤ人弾圧はあった。そのサバイバーである「隠れた子ども」だったロベール・フランクさんの話は、フランスでのユダヤ人たちがどんな状況にあったか詳細に伝えてくれる。学生の時ビデオで見たフランス映画「さよなら子供たち」ルイ・マル監督を思い出した。
    ベトナム戦争の頃フランスに逃がれてきたレ・ディン・タイさんの話や、クルド人領事館で働くイラクから逃がれてきたレワン・ハッサンさんの話もその体験は筆舌し難い。

    想像していた以上に、様々な人種と宗教を抱えるフランス。今は、新型コロナウィルスでアジア人への差別的行為が問題となっているが、共和国市民という共通の概念が、それを乗り越えていく礎にあることも、この本を読むことで分かる。2020.3.8

  • タイトルと絵が素敵なだけでなく、
    本のサイズと厚みも素敵な本。

    ハードカバーなのですが、
    文庫本より一回り大きく
    単行本よりちょっと寸胴な
    その姿…

    素敵なおじさんの本らしいサイズ感が
    すごくいいです。

    パリで出会ったおじさんを
    一人一人紹介しているこの本。

    おじさんばかり集めて
    ホントにおもしろい本になるの?
    と心配になりそうですが、
    おじさんを侮るなかれ。

    おじさん一人一人の歩んできた人生は
    どれも濃厚で、
    焙煎コーヒーのように味わい深いのです。

    おじさんの人生を垣間見ているつもりが、
    いつの間にかおじさんを通して
    生きた歴史や世界の見方を
    学んでいる自分に気づいて、
    呆然とするはずです。

    「泣きたくなる旅の日は、世界が美しい」(小林希・著)とともに、
    焙煎コーヒーを飲みながら
    苦味も酸味も、そして香りも
    味わいたくなる本です。

  • パリという街。お洒落な街。芸術の都。憧れのパリ。私にとっては仕事仲間のいる場所でもある。

    この本はすごく面白い企画で、パリに在住する実に様々な人種・状況の、とにかく「おじさん」に体当たり取材をしていろんな話を聞き出している。これだけの数の様々な話を読んで見ると、あぁ、自分が観ていたパリというのはほんの一握りの一面だったんだなと気づく。

    素敵なおじさんがいっぱいだった。私もおじさんだから、なんだかとっても嬉しい。こだわりの強いおじさん、おしゃれなおじさん、モンマントルで最後の一人の画家として残ったおじさん(ピカソやダリとも親交があった)、PSG(パリサンジェルマン)を熱狂的に応援するおじさん、おじさんだらけなのに、いろんな人の話を読むのが実に心地よい。

    中でも最終章の「いまを生きるおじさん」が一番印象に残りました。ナチスドイツが暗躍した時代にパリに住む、ユダヤ人一家の中で生き残ったおじさんの話は心に響きました。フランスなら安全と世界中からユダヤ人が集まっていた32万5千人のうち、8万2千人が殺されたとか。(うち、子供もが1万千4百人)。このおじさんの話が一番すさまじかったですね。そのおじさんは今はなんと無神論者となり、こう語ります。「人間には人を憎む気持ちがある。権力者はそれを推奨する。だけど、人は変わることができる。変わらなければならない」。いまは憎んでいたドイツ人も彼の歯医者にやってきて、仲良く親交を深めているそうです。
    また、難民問題、パリ同時多発テロの話などにも著者は切り込んで、おじさんに話を聞き出しています。後半はなんともやるせない気持ちではあったのですが、ベトナムから難民で逃れてきたおじさんの言葉が心に響きました。
    「人生で大切なことはなんですか?」
    「いま、このときを味わうこと。大事なのは将来ではない。いまですよ。いま、この瞬間に大事なものをちゃんと愛することです」と即答されました。
    私などとは比べ物もならない大変な人生を歩まれてきたおじさん達。そう、パリはそんな人種のるつぼの中、こんなに魅力的なおじさんたちがたくさんいるんだなぁと感激しました。

    そうだ、自分の同僚のパリのおじさんにももっと話しかけてみよう!!

  • パリ在住の素敵なおじさんたちをインタビュー。パリといえばまずは華やかなイメージを思い浮かべるけれど、歴史、難民、テロ、華やかでない面もあり、インタビューされた方の心に影を落としていた。それをうまく引き出して書いている。素敵な絵とともに、目の前で話を聞いているようで、時にはああたたかく、時にはじんわり、時には寂しさが伝わってくる。移民の国でもあり、おじさんたちは、宗教もバラバラで、インタビューされたのはごくごく一握りの人だけれど、一人一人がパリを作っているんだなあと。ユダヤ人のお話しなど、歴史を語るところもあり、一面ではあるが、ガイド本とは違うパリを知れる本ではないかな。また、哲学的なセリフもあるので、心がブルーな時に読んでも。それにしても素敵なおじさん集めてきたね。

  • 著者の金井真紀(1974年~)は作家・イラストレーター。
    本書は、パリ在住40年のフリージャーナリスト広岡裕児(1954年~)と組んで、二人の共通の商売道具である好奇心と、金井氏の選おじさん眼と、広岡氏が自在に操るフランス語の3つを武器に、パリの街を2週間歩き回り、捉まえた67人のおじさんを“陳列”したものである。それぞれのおじさんについて、話に加えて、著者の描いたすてきな似顔絵が添えられている。
    67人のおじさんは、ルーツ・民族・宗教・職業・年齢・・・実にバラエティに富んでいる。カリブ海諸国からの移民を両親に持つ絵描き(50歳)、世界中を旅するスペイン人のギター作り職人(76歳)、チュニジア移民二世の老舗クスクス屋の店主(50歳)、休日にサッカーに興じるアルジェリア移民二世のベルベル人(45歳)、人気サッカーチームのパリ・サンジェルマンのファンが集まるバーの店主(53歳)、毎日競馬場に通う引退したアルジェリア移民(92歳)、西アフリカ・マリからの出稼ぎのスーツが似合うコンシェルジュ(56歳)、フランス系ユダヤ人とチュニジア系ユダヤ人を両親に持つチュニジア生まれのお菓子屋(72歳)、中国浙江省生まれの小さな出版社を経営する中国人(50歳)、ホロコーストで両親と3人の弟妹をなくしたポーランド系フランス人(87歳)、在仏クルド人自治区領事館に勤めるイラクから逃げてきたクルド人(29歳)、キュリー研究所で長年ガンの研究をしてきたベトナム人(76歳)、等々。
    私は知命を過ぎた、まさに著者のメインターゲットとなるおじさんで、「“すてきなおじさん”になるためのヒントが得られるといいな~」くらいの気持ちで本書を手に取ったのだが、登場するのは期待に違わぬ味のあるおじさんばかりであった。
    しかし、それにも増して印象に残ったのは、たった2週間の滞在でこれほど多彩なおじさんに出会う、パリという街の奥深さであった。パリはやはり、様々な歴史・地理的要因を背景にした人種のるつぼであり、ある意味、世界の縮図なのだ。(東京で同じことをやろうとしても絶対にできない)
    すてきなおじさん達の話を聞きながら、世界の多様性を感じることができる良書である。
    (2018年2月了)

  • パリのおじさんから見る世界。深くてとってもおもしろかった!

  • パリで出会ったおじさんたち。職業も出身地も生き方もさまざま。もっとファッション中心の本かと思いきや、いろいろな人生を見せてくれる。

  • パリの表面上の華やかさだけでなく様々な移民や難民、異性愛者など多くのおじさんを取り上げていてよかった

  • 金井真紀さんと広岡裕児さんがすてきなおじさんたちとお話ししたように、この本が好きな方とお話ししてみたい。
    そう思わせてくれる本。

  • パリは、おじさんも雰囲気があってどこかおしゃれ。
    そんなパリの町で出会ったおじさんを紹介しています。
    カラーイラストで一人一人の風貌が描かれ、親しみがもてます。

    普通の(?)おじさんでも、特にお金をかけた格好でなくても、ちょっとしたアクセントなどで小粋に決めているのは、自然に培われてきたセンスでしょうか。
    無難な服装を選ぶ日本のおじさんたちとはずいぶん違います。

    しかし、おしゃれなだけではなく、貧しさも垣間見えます。
    パリは移民の都市。民族問題は根強く、失業率も高いです。
    でも、人々はクールで飄々と生きている感じ。
    「セ・ラ・ヴィ」とか「ケ・セラ・セラ」という言葉を思い出しました。

    大勢のおじさんが紹介されている中で「隠れた子ども」の話が一番強烈でした。
    ナチスドイツから逃れたユダヤ人の子供たちが、一定数フランスで生き延びています。
    家族を収容所に送られ、天涯孤独になった子供たちが、少数ながらフランスに逃げ延びて、人々に守られて生き抜いています。

    生々しい歴史に翻弄された男性の話は胸を打たれるものです。
    そんな、パリを闊歩するおじさんたちの悲喜こもごもが、暖かいイラストとともに紹介されています。

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著者プロフィール

1974年生まれ。テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て、2015年より文筆家、イラストレーター。著書に『世界はフムフムで満ちている』『酒場學校の日々』(いずれも皓星社)、『はたらく動物と』(ころから)、『パリのすてきなおじさん』(柏書房)、『サッカーことばランド』(ころから)、『虫ぎらいはなおるかな? 』(理論社)など。農業経験は、田植えの手伝いをわずかに5回ほど。

「2020年 『マル農のひと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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