消えたベラスケス

制作 : 五十嵐 加奈子 
  • 柏書房
4.13
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本棚登録 : 71
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760149735

作品紹介・あらすじ

十九世紀、英国の書店主が出会ったのは、スペインの宮廷画家ベラスケスによる幻の一枚の絵だった。たった数ポンドのキャンバスが、男の人生を、くるわせてゆく-ロンドン、エディンバラ、ニューヨーク。絵とともに流浪した、ひとりの男の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ベラスケスが描いたものらしい、イングランド王チャールズ一世の若き日の肖像画と出会い、絵の虜になって一生を狂わせてしまった男、ジョン・スネア。本書は、スネアの生涯とベラスケスの事績を丹念に描いたノンフィクション。

    時は十九世紀中期、ジョン・スネアは、ロンドン郊外の町レディングで書店を営む町の名士。ところが、ベラスケスの作品らしい一枚の絵画を運良くオークションで手に入れた途端、その絵の魅力に見いられてしまい、家業そっちのけでその由来を調べ始める。調べれば調べるほどベラスケスの作品の可能性が高まり、ロンドンで有料の展示会を開いてみると、絶賛される一方でアマチュアが贋作に踊らされているだけと酷評される等、評価は分かれた。その後、スコットランドでやはり展示会を開くが、元々の持ち主ファイフ伯爵の遺産管財人から、盗まれたものだと訴えられ、押収されてしまう。その後、裁判を起こして何とか取り戻すことができたものの、泥沼の訴訟合戦となってしまい、家業も傾いて破産。絵と共に逃げるように米国へ移って、展示会を開くなどして何とか生計をたて、最後は貧しく生涯を終える。その間、何度か高額での絵の買い取りオファーがあったが、最後まで絵は手放さなかったという。

    名画には真贋を巡るトラブルがつきもの。そして、価値があるとなったら、欲深な輩が出てきてあの手この手で騙し取ろうと罠を仕掛けてくる、まるで二時間サスペンスのような展開。スネアも、あまり欲をかかずにホドホドで手を打っておけば、こんなに酷いことにはならなかったんだろうけれど(でも、愛し過ぎて手放せなくなってしまった気持ちも良く分かる)。そもそも、ベラスケスは作品に署名しない画家だったとのこと。このことが、ベラスケスの作品の真贋を巡る謎を深めているようだ。なんと罪作りな画家なんだろう。

    それにしても、スネア秘蔵のチャールズ一世の肖像画、ベラスケス作でないとしても、見てみたかったなあ。

    本書を読んで、ベラスケスの「神業的」、「魔術的」、「神秘的」な絵、「世界をただそのまま視覚化する巨大な網膜のような」絵の素晴らしさがグイグイと伝わってきた。名作《ラス・メニーナス》は20年ほど前にプラド美術館で見たと思うのだが、本書を読んだ後で見ればよかった(って本書はまだ存在していなかったのだが)。自分のような凡庸な人間は、本書のような書で解説してもらわないと、名画の素晴らしさが中々分からないんだってことが改めて分かった。

    読み応えがある作品だった。

  • ふむ

  • インターネットどころか、写真もX線技術もなかった時代に絵画の来歴を調べたり真偽鑑定したりするのは大変だったのね〜。しかし、実物を見たことないのに贋作を作っちゃうとか、のどかな時代だわ…写本や写譜ができる文学や音楽に対して、写しを取れない美術は、ワールドワイドになるのに技術革新が必要だったことを実感した。

    ベラスケスの「チャールズ1世」、ヴァン・ダイクの肖像画よりはイケメンじゃんくらいに思ってたけど、こんな裏話があったとはねー!

  • 闇から掘り起こされた人物と、じっくり対話したいですね、、、

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    「ラス・メニーナス(侍女たち)」で、見る者の心を魅了し続けてきたスペインの宮廷画家・ベラスケス。彼が活躍したその200年後、19世紀のイギリスで、ひょんなことからベラスケスの絵画を手にすることになった書店主、ジョン・スネア。たった数ポンドのキャンバスが、男の人生をくるわせてゆく――。
     絵のモデルとなる人々すべてに対等に接し、その本質を見抜く絵を描いた宮廷画家。その絵に魅せられたひとりの男。そして、21世紀に幻の絵画を探し求める著者……一枚の名画をめぐって三者の人生が交差する、歴史ノンフィクション。
    http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b333346.html

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