子どもができて考えた、ワクチンと命のこと。

  • 柏書房 (2018年4月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784760149834

感想・レビュー・書評

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  • 自分(と身近な人、例えば子供)を守らねばならないという【自己防衛】の想いが強いほど多くの人を守る【公衆衛生】の概念とは乖離していくのかなあ、という感想。

    予防接種の元(種痘)の始まりは科学的根拠が確立していない民間療法だったこと、実際雑菌のコンタミで多くの人が亡くなったこと、身体に異質なものを入れる『穢れ』の思想、人体には人工物より天然のものが良いという信仰、公害や薬害からの不信感、多数派や巨大権力への抵抗、いろんな要因はあるんだけどいちばんガツンときたのは『伝染病は自分とは異なる・劣った属性からもたらされるという偏見』のとこでした。
    AIDSがまだ不治の病だった頃、同性愛者が猛烈にバッシングされ責任をなすられていた時代を知ってますしね。フレディ、クラウス・ノミ、キース・ヘリング……。

    今のCovid‐19にも初期に症状が出た国の名前をつけようとしたり、その国の人を差別したり、年齢差によって「あいつらが悪い、自分らは大丈夫」みたいな分断が起きたり。
    『我々は清浄で高潔である』という無意識の優越感が感染症への知識や対策を歪める、という話にはまじでゾッとしました。。

    この本はCovid-19流行前に書かれた本ですが今にほんとに響きます。
    そうやって何かを『守らねば』と必死になっている人たちを「あいつらは悪い、自分たちが正しい」「我々は清浄で高潔である、彼らは無知で不潔である」と異なる属性とみなし差別する風潮はそのまま偏見や分断にまっしぐらの構図じゃないかとも思えるのです。

    公衆衛生、予防接種か偏見や差別まで、様々なことを考えさせられる本でした。

  • 良書。
    「ウイルスのせいでも細菌のせいでもなければ、母親のせいにされる。」
    この一文を読んで、腑に落ちた。

    私自身、「親になるということは、別の人格を守り慈しむ責任を負うことだ」というのは、自分が妊娠する前からなんとなく思っていて、一方でその責任に対して自分自身がコントロールできることの少なさに幾度も絶望している。
    それでもコントロール出来るのではと、何か巨大な見えない力に挑もうとした経験も、一度や二度ではなかったりする。
    反ワクチンと呼ばれる思想も、極端なワクチン信仰も、愛情ゆえの心配をベースに嵌っていく意味では紙一重なのだと思う。もちろん今の私の思考回路とも。

    この本はありとあらゆる情報の中での舵取りがいかに難しいか、そして、独力で何かを理解することなど到底できないのだと教えてくれてくれた。
    情報に溢れる現代でそれを出来ると説くなど、驕り高ぶりが甚だしい。自戒の念を込めて。

  • ジョン・ロールズが提唱した考え方
    あなたがこの先、社会でどんな立場に置かれるかわからないと想像。お金持ち、貧乏、教育を受けられるかもしれない、受けれないかもしれない。医療保険に入れるかも、入れないかも、乳児かも大人かも、HIVかも、健康かも。どんな立場になるかわからないという前提に立った時、あなたはどんなことを望む?おそらく、どんな立場でも公正に正義が分配される体制を望むのでは?
    私たちはみんな依存しあっている存在なのよ

    要は、自立とか、独立なんてものは、ただのげんそうなんじゃないかということよ

  • 秤に架ける

  • リスクはほぼ無く、周りに対しても良い影響のあるワクチンに対して、今も根強い否定論がなぜ起こるのかを歴史的、科学的、感情的な理由から分析する本です。

  • 「日本はワクチン後進国」だと医師からはよく聞く。世界から30年近く遅れているという医師もいるほどだ。
    最近「麻疹」の流行がニュースになったことも記憶に新しい。これは2度受けるべき予防接種を、ある年代は1度しか受けていないために免疫が弱いためだとも言われている。
    この書によれば、ワクチン接種に対しては世界的にインテリ層を中心に嫌悪感が強いという。生ワクチンを接種することのリスクと副作用を心配してとのことだが、そんなことを言うならば生薬由来の薬にもリストの副作用はあるのだから服用しないということになってしまう。これはあまりにも理不尽だ。
    海外では混合ワクチンが当たり前だし、ショッピングセンターのドラッグストアーでも簡単に打てる上に価格も安価。日本では混合ワクチンが嫌がられているうえに、接種の間隔も空けなければならないし、接種の回数が多く忘れがちでもある。しかも任意の予防接種はそこそこ高い。
    またこの本によると、清潔な環境で育った人は純粋培養な分、ウィルスに弱いとのこと。そんな人にウィルスがアタックしてくれば、たちまちのうちに感染してしまう。集団免疫のしっかりした社会で生きているならば感染リスクも低いが、そうとばかりも言っていられないのが現実。このことも「あなたの健康はコミュニティの健康が決める」の章に書かれている。
    一方不潔な環境で育った人で発症していない人は、感染しながらも幸運にも発症していないだけで保菌者であり、菌を撒き散らしているも同様とのこと。
    そういえば、子供が高校に入学する時、いくつかの予防接種について確認をされた。公衆衛生に対する意識が高いとちょっと安心したことを覚えている。
    日本にいるとあまり予防接種やワクチンのことは考えない。しかし海外ではそうではないようだ。この本もアメリカではベストセラーになったらしい。
    ワクチンに興味があったので、個人的にものすごく勉強になった本だった。

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