日本のヤバい女の子

著者 :
  • 柏書房
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760149841

感想・レビュー・書評

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  • 〈日本の神話や古典、民話を、登場する女性の心情に寄り添いながら大胆かつファンキーに読み解く、新感覚のイラストエッセイ〉

    おもしろい視点だなあ
    つくづく感心させられた

    よく知ってる昔話
    なんとなくただおもしろいな、きもちわるいな、かわいそ
    なんてスルーしていたけれど
    そうだよね、
    そこに生きていた彼女たち

    イラストが楽しい
    想像の上をいってくれてるから

    ≪ あの頃を 振り返る友 むかしばなし ≫

  • 読み終わって思ったのは、本当にヤバい女の子って、ほとんどいないのではないかと。「うぐいす女房」は、約束を破られただけだし、「トヨウケビメ」に至っては、理不尽な事故にあったようなものだし。本当にヤバいものは、おそらく今も密かに燻り続けている。

    昔話に登場する、「清姫」や「イザナミノミコト」や「お露」等の悪女(ファムファタル)に、作者や語り手や読者は、知らず知らずのうちに「果たすべき役割」を背負わせている。それを取っ払って、今風に考察したり想像したりすると、そこには私たちと変わらぬ一人の人間がいるだけ、という主張に納得し、面白く読ませながらも、男女格差の問題をしっかり提起しています。

    もちろん、昔話だから、時代錯誤の感もあるのは分かります。「おかめ伝説」の「女の助言で成功させたことが夫の不名誉になる」というのも、おかめ自らがそう思って、自ら死を選んだことや、時代背景や当時の価値観もあるのかもしれない。

    しかし、今もそれらに近い考え方が全くないとは、私は言い切れないと思う。なんとなく、ちょっと上から見ている感じが、その人の性格などではなく、性別のみで判断して言ってる感じが。本文中だと、

    「早く帰ってごはん作らないと」
    「仕事熱心なのはいいけど、彼氏、怒らないの?」
    「女の子は好きな仕事しといた方がいいよ」

    等がそうです。一番上の文も、男性から女性への言葉だと、よく分からないモヤモヤしたものが沸くのを止められないのは分かる気がします。「女の子は」って何だよ。じゃあ「男の子は」って言うのか、おまえは、みたいなモヤモヤ。これを、作者のはらださんは、

    「ふと遭遇するこれらの言葉に対して、ちょっと変な感じだな、と思ったとして、情や諦めやその他の面倒な気持ちによって、さっと流してしまうことが、毎日の暮らしでは頻繁に起こるのだ」

    と書いてます。まあ、単純に気付かなかっただけなのかもしれないが、そういうことが多いから、なかなか解決しない問題なのかもしれないとも思ってしまう。

    それと、もう一つ印象に残ったのが、「結婚」について。

    「結婚できないって不思議な言い方だな・・と考えていた。できないというと、成し遂げなければならない目標なのに、力不足により未達であるかのようだ」

    「結婚は手段であり、様々な目標・目的のための一つの行動にすぎないのではないか」

    結婚できなきゃ、人間じゃないのかなんて、極端なことをつい思ってしまうが、こう言いたい気持ちも分かって欲しい。そう、はらださんの書いたように、結婚するのって、更にその先にある目標や目的の為というのが、しっくりくる感があります。生活のためでもいいし、パートナーとして支え合っていくでもいいし。今は、様々な選択肢が増えてきて、以前ほどの重苦しさは無い気もするが、これも完全には、なくなっていない、と思う。

    ただ、評価となると、また難しい。良い悪いというよりは、皆で考えてほしい。おそらく、読んだ人の数だけ、これを読んで思うところがあると思うし、共感する箇所も違うと思う。

    まあ、それでも、上記のようなことをぬかす輩がいたら、利き腕で頬を引っぱたきながら、もう片方の手で、「これ読んで出直してこい!!」 くらいは言ってもいいと思います。

  • ブラック企業に勤めた著者が、今の世の中ですら「ヤバい」のだから、昔はもっとヤバかったのでは、という好奇心から、昔の「女の子」が登場する、古典を読んでみたところから、この物語は始まったのだそう。

    古典文学の、ヤバい女の子が次々に登場してきて、男尊女卑だの、世の中だのと、色々と考えさせられます。

    これぐらいゆるやかに、古典を学生時代に学ぶことができれば、もう少し真面目に勉強できたかもしれない。
    古文に登場する人物は、それほどにも、現実離れしていて、実感が湧かない。
    だからこそ、「今の私たちからすれば、こんなこと考えられないよね」の切り口で語りかけてくる文体は、すんなり入ってくる。

    その中で、気になったものを挙げるとするならば、「浦島太郎」だろう。

    この章では、珍しく、男である、浦島太郎のことについて、考察され、それに続いてこの物語の女の子である、乙姫について語られている。

    『乙姫について考えると「なぜ親切にしてくれた(または恋人だった)人物をひどい目に遭わせるのか?」という疑問が湧きあがる。』

    この視点。浦島太郎がおじいさんになるところが、あまりに強調されていて、全く考えることはなかったが、言われてみれば、確かにそうだ。

    この疑問に対しての著者なりの考察は、読んでからのお楽しみということで、あえて書かないが、古典や小説を読むにあたって、ついつい大きなことに夢中になって、こうした些細なことを見逃して、それらは忘れ去ってしまう。

    この本全体を通して思うことは、こうした、些細な違和感を広げて考えてみることで、また一つの作品が出来上がるのではないか。

    もちろん、名作に浸るのは最高ではあるけれども、最高の体験をしている最中にも、何となくの違和感に気づく、そんな読書生活を過ごしていきたい。

  • 続編の「日本のヤバい女の子 静かなる抵抗」を先に読んでしまったので、こちらの方は有名な物語が多く、割とオーソドックスな内容に思える。

    昔の物語の登場人物と、同世代のように話せたら、というコンセプトをもとにしているので、現代との文化、習慣のギャップもモリモリ。
    少し前の世代だったとしてもギャップがあるだろう。

    ・夫のことを機転を利かせて助けたにもかかわらず、女に助けられた男は恥ずかしいという概念に照らし、自殺する「おかめ」


    また、物語の伝来が男目線のため、女目線で考えると違和感がいっぱい。

    ・「虫愛でる姫君」は別に、騒ぎ立てるほど異質ではなかった。好きな勉強をして好きな恰好をする一人の女の子だった。オフラインで彼女に関わったせいぜい数十人~数百人の人たちが、勝手に彼女をカテゴライズしたのだ。


    しかし、昔話で残っているものって、これだけいろいろなことが語れるだけの物語的な強さ(それは突っ込みどころが多いという面も含めて)があるのだなと改めて思った。

  • 「日本のヤバい女の子」はらだ有彩さんインタビュー 型にはまらない女性像を全肯定 |好書好日
    https://book.asahi.com/article/11758886

    はらだ有彩|note
    https://note.com/arisaharada

    日本のヤバい女の子 柏書房株式会社
    http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b356682.html

  • 東京医大の女性差別が取りざたされて、今までのあれもこれも、全部女性差別だったかもしれない、と自分の過去をラベリングしはじめて苦しくなってきた。ネットで何度かコラムを読んでいたんだけど、また話題になってるし、表紙の赤箔が可愛いし、手元に置いておきたいというきもちもあって購入。なんかネットで読んでた3倍くらいよかった。あとがきなどを見ると、けっこう加筆されてるみたいで、おそらく各ページの最後の呼びかけの部分だと思うんだけど、これがもう絶妙なさじ加減の優しさで、最高だった。最高ですはりーさん。突き放すでもなく、甘やかすでもない。こういう友達がいてくれたら、きっとヤバイ女の子達は一晩中でもおしゃべりできたろうなあ、そうしたらオバケになんかならなくて済んだかも、と思ってしまう。し、そこに私もなんだか救われるのだった。イラストも、ネットで見るより紙で見る方がいいなあ。余白がきれい。おすすめです。

  • 乙女心を知りたければコレを読め!

    いま問題になってる、女性軽視やジェンダー論。
    昔から考え方は変わってないな…とつくづく思う。

    昔話や古文に出てくる女の子も、現代の女の子も同じ。
    みんな男を愛し、悩み辛い思いをして、鬼にされる…

    『かぐや姫』『浦島太郎の乙姫』『七夕の織姫』とか現代でもメジャーなものから、
    『おかめ』『うぐいす女房』『飯食わぬ嫁』とかあんまり知らない物語まで幅広く考察してくれてるのが良い。

    超現代語で書かれてるから、めっちゃ読みやすい。
    面白い!

    • ばまさん
      小瓶さん
      ぜひおねがいしまーす!
      小瓶さん
      ぜひおねがいしまーす!
      2021/08/13
    • ばまさん
      昔からエッセイ系を読むことが多かったんですが、
      最近は、色んな小説を読みたいなぁ〜と思っているので、
      なにか小説でお願いできれば!
      ジャンル...
      昔からエッセイ系を読むことが多かったんですが、
      最近は、色んな小説を読みたいなぁ〜と思っているので、
      なにか小説でお願いできれば!
      ジャンルはお任せします!
      2021/08/13
    • ばまさん
      八日目の蝉!
      映画を観たんですけど、小説はまったく未読なので
      チェックしてみます!
      八日目の蝉!
      映画を観たんですけど、小説はまったく未読なので
      チェックしてみます!
      2021/08/14
  • 続編の方から読んでしまったが、こちらが先。
    とは言え、どちらから読んでも問題ない。
    昔話に対する鋭いツッコミが光る。

    うぐいす女房
    21頁、
    見る側はいつも無自覚だ。
    他人が真剣に「見られたくない」「知られたくない」と思っているものを何の気なしに覗いてしまう。
    その無邪気さは(中略)「見るなと言われると、かえって見たくなるものだ」とかいうエクスキューズによって支えられている。
    つまり、見られたくないと言う気持ちの矮小化によって、見る権利が守られている。
    この主張には「知らんがな。見んなっつってんだろ。どつきまわすぞ」以外の反論はない。

    ニヤニヤと喝采が止まらない。
    たしかに!
    知る権利、を自分に都合のいいようにねじ曲げている奴らに聞かせたい。
    いや、きっとそういう人は改めないだろうから、若人に期待しよう。
    変な大人になるんじゃないよ!

    虫愛づる姫君
    こちらもたまらない。
    48頁、少し長いが引用。

    興味のあるものに夢中になって好きなように暮していたら、
    身近な人たちから「カシコぶってて痛い」と文句を言われ、
    見ず知らずの男から「お前の探究心はどうせ中途半端なものだろ」と嫌がらせをされ、
    でもその嫌がらせに返事をしなければならず、返事をしたら余計に絡まれてじろじろ見られた。
    キモいので逃げると「うわっ、逃げた。やっぱり生半可な覚悟なんだ」と全然関係ない傍観者に分析され、
    当の男からは恋を示唆しているとも馬鹿にしているとも取れるLINEが届く。
    しかもその男は「化粧したらかわいいのに惜しい~」とか言ってる。

    いや最低だな。いるよねー、化粧したら、痩せたら、若かったら、黙ってたら、可愛いのに~って言う奴。
    さあ、ご一緒に。

    う る せ え よ

    著者は救いのない物語について(おかめの話、八百比丘尼など)、もっと、素敵に自分らしく生きている終わりを想像する。
    とても素敵だ。そうなれたらいいのに。
    昔の価値観に驚き呆れるけれども、物語そのものは否定はすまい。
    そう言うことがあった、それが普通だった、それで成り立っていた、その事実は消すべきではない。
    ただ、そこから派生して、物語が昇華されるなら、未来を生きる女たちの土台にもなるかもしれない。
    いや、そうであって欲しい。そう、願っている。

  • 概ね面白いけど、ちょっと解説が長いかなぁって思って、軽く読み飛ばしながら読了。
    取り上げているお話はどれも良かった。今まで軽く知ってた話もたくさんあったけど、大人になって、別の視点で読むとまた面白いなと思いました!

  • 昔話や古典に出てくる女性が何を考えていたのか、現代の基準に照らし合わせて考察してる本。

    キャラクターは物語の傀儡に思える。行いには理路整然とした理由を求められ、そこから外れれば駄作扱い。

    人間は不条理で矛盾だらけでいいと思うのだが、こと物語になると、あまり礼賛されんのは可哀相だなあっと。過去に生きた人物がモデルとなっているのであれば尚更ね。

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著者プロフィール

関西生まれ。テキスト、テキスタイル、イラストレーションを組み合わせて手掛けるテキストレーターとして数多くの雑誌やwebマガジンにエッセイを執筆。2018年『日本のヤバい女の子』(柏書房)を刊行し、神話や民話に登場する女性たちの心情を汲み取り再解釈するというコンセプトで話題を集める。その他の著書に『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』(柏書房)、『百女百様 街で見かけた女性たち』( 内外出版社)、『女ともだち ガール・ミーツ・ガールから始まる物語』(大和書房)。

「2021年 『日本のヤバい女の子 抵抗編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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