「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本

著者 :
  • 柏書房
3.85
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レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760150076

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    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/517590

  • ・・・とりあえずタイトルが長いw
    なんじゃそりゃ?とキツネにつままれた思いで読み始めると、内容になんじゃそりゃ??と何匹ものキツネに取り囲まれてつままれまくるような本である。

    タイトル通りといえばタイトル通りなのだが、明治の時代、なんだかとんでもない娯楽物語の世界があったのである。
    江戸が終わり、維新の頃。日本純文学の黎明期でもあるわけだが、世の中インテリばかりではない。多くの庶民は「文学とはなんたるか」をまじめに考えたりはしない。要は、読み物はおもしろければよいわけで、江戸の娯楽の影響を残しつつも、荒唐無稽で珍奇なものがもてはやされる。書き手の方も文学に身を捧げる高尚な目的を持つ者ばかりではもちろんなく、売らんかな主義の者だって多い。そういうと聞こえは悪いけれども、ニーズにこたえて読者を楽しませて何が悪いと言われれば、ご説ごもっともでもある。
    純文学の流れとは別に、そうした娯楽物語の潮流は連綿と続いていたのである。
    著者はデジタルアーカイブを通じて、こうした作品群と巡り合う。
    実は正統派純文学などよりよほど多く庶民に読まれていた物語。これらを通じて、明治の人々が何に心を躍らせてきたのか、そしてこうした作品が意外に現代の作品にもその面影を残しているのではないか、というのが、読んでいるうちにうっすらと見えてくる仕掛けである。

    西洋文化がどっと入り込み、言文一致のうねりもあり、社会に大きな混沌と異様な活気があった時代。
    貸本屋で扱われる読み物は、ある種、粗製乱造で荒っぽい。洗練され、練り上げられたものではないが、異様な迫力がある。時代の流行を摘み取って、いち早く物語の形に仕立て上げる、「ライブ」感を身上としていたのだろう。
    紹介される物語には、今読むと面白いとは言えなそうなもの、というか、そもそも出版が無理なのではと思われるものも多い。
    タイトルになっている物語は、星塔小史(せいとうしょうし)という経歴不明の作家による『蛮カラ奇旅行』(明治41年)である。バンカラ男がハイカラを目の敵にして、世界旅行をしながら出会ったハイカラ西洋人を殴り倒す、さらには悪いやつは殺してしまうという乱暴な筋である。こいつが旅行中に西洋人の狂女に殺されそうになる。何者かといえば、日本人の留学生に捨てられて狂ってしまい、彼に似た日本人を見ると殺そうとするのだという。まるっきり森鴎外の『舞姫』を思わせるような話である。憤慨したバンカラ男は、日本に帰ったらぜひともこの留学生を探してボコボコにぶんなぐってやる、と心に決める。その途上で、アフリカ人を連れ帰るのだが、この理由も、<蛮カラの本家本元なる>ものだから、という、現代ならいろいろと問題になりそうなところ。で、日本に戻って、件の留学生(=“太田豊太郎”)と偶然出会い、すっかりハイカラ紳士となっていた彼を殴って廃人にしてしまい、それをみた狂女は気が済んで病気が治る、さぁ読者の皆も、万歳三唱だ!というオチ。
    ・・・ここまで読んだ皆さんも今頃、キツネにつままれていることだろう。
    しかしまぁ『舞姫』の豊太郎にムカついた読者は当時であっても結構いたのだろうし、そう思うと、時流をとらえた小史はそれなりに目端の利く人物だったのかもしれない。

    本書中では実にさまざまな娯楽物語が紹介される。
    現代の感覚でわっはっはと笑えるとか心の底から楽しめるかというと、ちょっと違うかなとは思うのだが、へぇ、こういうのが流行っていたのか、こんな無茶苦茶な話ありなの、とかいろいろ突っ込みつつ、正史に残らぬ庶民史に思いを馳せてみるのも一興である。
    いや、実際、こういう自由度の高いところから、尖がった意外におもしろいものが生まれるものなのかもしれない。

  • 表題の「『舞姫』の主人公を……」を紹介するまでにたくさんの娯楽小説の例を挙げ、読者にこの時代はマジでトンチキなんだな……と思わせる構成の巧みさがあった。紹介する話の意味不明な部分を「意味不明である」と評していて笑ってしまった。

  • 以前、Web上で読んで爆笑した「舞姫の主人公をボコボコにする最高の小説が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介する」が書籍化されて20万字くらいになったもの。
    研究に値しないと歴史から忘れ去られた明治娯楽物語の数々をツッコミと共に紹介しながら、実はこれらB級C級の小説未満の物語たちが、現代のエンタメの礎を築いていたんですよっていう、内容的には結構真面目な考察本なのですが、やじきたが宇宙旅行してたり、舞姫の豊太郎むかつくからボコボコにしようぜ!だったり、こまけぇことはいいんだよ!という勢いのみの感じが最高でとにかく面白い。
    豊太郎をぼこぼこにする最高の「蛮カラ奇旅行」も国立国会図書館のウェブサイトで無料で読めるけど、本をスキャンしたような画像で読みづらいから書籍として全編読みたい。
    1000年後とかに素人の書いた同人誌なんかもこういう風に研究されたりするのかな。

  • 明治時代の庶民のための娯楽小説を紹介する本。
    言われてみると明治の小説って教科書でちらっと読んだくらいで、しっかり読んだ記憶がない。

    様々なジャンルの娯楽物語を紹介しているが、文体は軽くふざけていると感じる人もいるかも。
    でも、多くの作品を読み、背景を調べていることから文学に対する誠意と、愛情を感じる。

    明治の娯楽小説、楽しめればそれでよしで、脈絡やつじつま等関係ないという潔さ。もうメチャクチャ。

    とりあえず夏目漱石の「坊ちゃん」を読んでみようと思った。

  • 身長と肩幅が同じ人間てどんなんやねん(笑)

  • 舞姫の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本

  • ポップなタイトルと軽妙な語り口ですらすらと読める、が、なんせ量がたっぷり!
    更に、紹介された小説のほとんどが国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能ということなので、これ一冊あればもう死ぬまで読み物に困ることはないのではなかろうか。助かります。

  • 読まなくても人生に何の影響もない本。
    個人的にはとんでもなく好きだし参考になる。あらすじ本で読み物として面白いの初めて?久々?(覚えてない)。

    しかしこの本、おおよそ明朝体で書く文章ではない。(フォント厨

    一次創作(マンガ書きラノベ書き)、独自設定多めの二次創作者、そういう作品が好きな人に読んでほしい。

  • 本文を補強する身も蓋もなく魅力的なキャプション。以下、一例。

    (p.29本文)
    昔から海の家はあったし、女性は日焼けするのが嫌だったんだねぇといった文章だ。救命具や潜水眼鏡などの海水浴グッズも登場する。これらも目新しいものだったのだろう。流行りもの好き水陰の面目躍如といったところだ。なお、江見水蔭の姿だが、海水着の写真が発見できなかったため、相撲大会前にまわしを締め気合十分なものを掲載しておく[図3]。



    (p.29キャプション)
    細い。(『[自己中心]明治文壇史』挿絵、昭和2年)(図3)

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