「日本の伝統」という幻想

著者 :
  • 柏書房
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760150502

感想・レビュー・書評

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  • 「伝統」という言葉には、抗い難く従わざるを得ない響きがあります。
    日本の社会も古くから存在しているので、伝統的なものが点在しているのは事実です。
    その反面、現代人が伝統と思っていることの多くは、実は明治以降や戦後のどさくさに紛れて誕生した文化なのです。
    まさに書名通り、それら日本の伝統という幻想を愉快に解説している一冊です。
    読了後には穿り出された真実に対しての幻滅は無く、寧ろ「そんなものでもいいじゃないか」と感じました。
    伝統も面白い・楽しいという感情的な理由で始まったに違いなく、ビジネスになるかで現存していることが多いのです。
    伝統的か否かを難しく考えることなく、文化的な風習や生活を楽しむことができれば良いと思います。

  • 「日本古来の伝統」
    「日本人は昔からそうやってきた」
    「伝統的な文化・しきたり」
    などと言われるモノの中には、明治以降に始まったものがけっこうある、いやそれどころか戦後からのものだってある。

    例えば、
    初詣は明治18年頃
    夫婦同姓は明治31年
    告別式は明治34年
    古典落語という名前は昭和23年頃
    恵方巻は平成10年

    そんなに古くないから価値がない!と言うことではなく、人は30年以上続く習慣や行事を「伝統的」と捉える傾向がある。

    ということ。 「伝統だから守らないといけない、黙って従え」という【伝統マウンティング】をやられない様に、逆にやらない様に伝統の仕組みを解説した本です。

    自分の生まれる前からある物って昔からずーっとあるって思っちゃうもんなぁー

    京都とか伝統を売りにして成功しているビジネスモデルもあるから馬鹿にできないな!

  • <目次>
    やや長いまえがき 伝統に関する「法則」と、伝統に付随する「見えない言葉」
    第1部  「伝統ビジネス」の作り方
     第1章  「伝統ビジネス」とは何か?
     第2章  記念日と二十四節気を狙え!
     第3章  失敗に学んで、新しく作れ!
     第4章  江戸・京都・旧国名を使え!
     第5章  一つ前はダサく、二つ前以上はロマン
     第6章  対立は「伝統」を作る
     第7章  伝統ビジネスは無限サイクル
    第2部  「伝統マウンティング」社会
     第1章  「伝統マウンティング」とは?
     第2章  女人禁制の国技・大相撲
     第3章  「先祖代々之墓」を守れ?
     第4章  「着物警察」はなぜ生まれるのか?
     第5章  「伝統マウンティング」の構図
    やや長いあとがき 「思い出」と「伝統リテラシー」

    <内容>
    昨年出た『「日本の伝統」の正体』に続く、第2弾。この本で面白いのは、最初のまえがきにある、「伝統の4法則」と”基本法則”。この分析がなかなか秀逸。また「伝統」が生まれると、それに付随して「伝統を守れ」とか「絶やすな・変えるな・従え」という無言の圧力がかかるし、そう言われると返す言葉がない状態になる。これを「伝統マウンティング」と呼んでいること。
    あとは具体例を出しながら、「日本の伝統」を笑っているのだが、特に第1章に出てくる「伝統ビジネス」はなかなか怖い気がする。

  • 前作『「日本の伝統」という幻想』に比べると、やや軽めな内容。ここには2匹目のドジョウがいなかった。

  • 大相撲をはたから見ていると
    さも神聖かつストイックで儀式めいた外側と、同じ課題をいつまでも改善できない澱のような内側との歪みが不思議だったのですが
    生き残るため自ら「国技」を名乗り徐々に神事っぽさを厚く纏っていった経緯を読むとなんか納得できるものがありました。

  • 古いものは素晴らしい。古いものには価値がある。世の中にはそんな「伝統ビジネス」や「伝統マウンティング」が溢れている。

    これって武道の世界でも多い気がします。

    大変興味い内容で、中でも大相撲の女人禁制の話はとても面白かった。

    読んで損はないためになる一冊だと思います。

  • ☆相撲協会の都合良い理屈→女人禁制、力士の死亡事故…改善必要だが利権絡まない・力士へは非嫉妬のため叩かれない?

    人は自分が生まれた時にあるものは、みんな大昔から続いてきた伝統だと思う
    発信者側にメリットがある伝統は長く続く
    伝統ビジネス 伝統マウンティング
    日本古来の伝統を変えるな!日本人は昔からそうやってきたのだから従え!伝統的な文化・しきたりを絶やすな、守れ!

    記念日と24節気を狙え
    成人式→昭和20年蕨市 敗戦後、次代を担う青年たちに明るい希望を持たせるため 振袖の市場規模9割は成人式
    恵方巻 平成10年セブンイレブン 幸運巻き寿司、丸かぶり寿司、招福巻き
    ビジネスに結びつかないと伝統は次第に忘れ去られていく
    日本では昔から〇〇には△△をする・食べる・飾る・贈る伝統があります

    ダジャレ・大喜利・当て字が結構多い 数の子→二親からたくさんの子供
    茶寿 108歳 草かんむりで2つの十 88 皇寿 111歳 白と王 99と10と2

    江戸、京都、旧国名を使う
    江戸時代(1603年から1868年の265年) 葛飾北斎1849年没→後4年で黒船
    よーじやのあぶらとり紙→京都の映画産業の要請、撮影時のテカリ、デザインに舞子 舞子が昔から使っていたイメージあるが戦後
    京依存(共依存)
    ブランド牛 明治時代より前に日本では牛を食べていなかったはず

    一つ前はダサい・2つ前はロマンある。 平成→昭和ダサイ 令和→昭和はロマンある

    天覧試合 水道橋方面の灯りを侍従に尋ねる→ナイター観戦ができる日程上で巨人阪神戦になった

    マウンティング→優位個体が行う馬乗り行動 サルは餌付けされた集団のみ発生☆人間社会でも同じか…?

    女人禁制の大相撲
    1909年回向院に屋根のある常設の会場完成→名前は単に常設館 ある幹部「そもそも相撲は日本の国技、…」 一任されて国技館
    シャンデリア付き、見世物のための施設→興行で女相撲もあり→公然わいせつで禁止 土俵が神聖だから女人禁制にしたのではない

    旧両国国技館→戦後、日大が買い日大講堂 ドーム状屋根の西洋建築
    昭和60年両国国技館 和風を意識 行司の衣装を平安朝にして古式を強調

    先祖代々の墓☆仏教で33年で区切りを付ける風習あり
    葬式でスライドショー、BGM 遺影は大正終わりから昭和初期 写真館と葬儀社

    着物警察 チェックできる知識を持つ年配の女性が一定数いる
    塩月弥英子1970年「冠婚葬祭入門」 茶道の裏千家宗家の娘 308万部
    「目上の人には履き物は贈らない」→業界から批判→改版では「履き物贈って良し」
    1972年「きものの本」 着物業界→熱心なファン層を作り出すことに成功→着物警察へ

    江戸時代、それ以前 着物=自分勝手に着るのが普通

    伝統マウンティング 部活あるある☆今の職場…バカな風習

    山口県西部 子供を脅すとき「ゴンチゴーが来るぞ」 蒙古軍の大将の名前

    伝統を売りにするビジネスは古式を強調する傾向有り

  • 相手を自分の意のままに扱う手段として伝統を使うと言うのは確かにそうなのかもしれんな。実際頭がめちゃめちゃよかったりする伝統校ともなれば、そこにいる自分を好きになれるのでどんな理不尽な伝統があってもなんだかんだで慣れていく。けれどただ古いだけの中堅校ともなると、そこにいる自分はさほど好きではないので、伝統はウザイし邪魔だしただの害悪にもなりかねない。

    「この学校が好きだからこの伝統を受け継ぎたい」
    「この学校微妙だからこの伝統とかすげぇ邪魔」
    これが流行り廃りを分けていくのかなと思う。
    日本の子どもは少なくなる。公立学校の再編が進むなかで、数ある伝統校がどんな最期を迎えていくのか、それは興味があるな。

  • 「日本の伝統」「これが日本」があふれまくっている世の中で、立ち止まってその内実を考えてみることは大事だ。
    文化的に「日本」を語るときには、常にどこかで本書のような視点を持つことが必要。文化は変わりつつ保たれるし、変わらないものはすたれる。「伝統」こそ常に一定の距離感で使いたい言葉だ。
    クリステン・スーラック『MTMJ:日本らしさと茶道』はこうした視点を学術的に掘り下げているのでオススメ。

  • 京都何千年の歴史とか、江戸時代から伝わる、薩摩芋、讃岐うどんまで、京都・江戸・旧国名等を使い、「日本の伝統マジック」を纏ったビジネスやマウンティングの数々を分析・解説した作品。たしかに商品に「京都」とか「江戸」とか入っているだけで権威を感じてなにか特別なものだと思ってしまう感情はある、逆に言えばこれらの言葉を入れる事で新たなビジネス展開も考えられるので、いい勉強になった一冊だった。

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著者プロフィール

23歳の時、第1回「星新一ショートショート・コンテスト」入賞を機に作家・脚本家・放送作家としての活動に入る。ライトノベルの源流とも呼ばれる『死人にシナチク』シリーズなどの小説のほか、数百本のラジオドラマを執筆。「バーチャル・アイドル」芳賀ゆいの仕掛けや、腹話術師・いっこく堂のプロデュースを手掛けるなど、メディアでの活動は多岐にわたる。最近では、落語家・柳家花緑に47都道府県のご当地新作落語を提供している。

「2021年 『一千一ギガ物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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