真珠郎 由利・三津木探偵小説集成 1

  • 柏書房 (2018年11月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784760150519

感想・レビュー・書評

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  • 横溝正史のエッセイと小説を交互に読んでいます。こちらは柏書房による「由利・三津木探偵小説集成」の一冊目。金田一耕助物は学生のときにほぼ読んでいましたが、由利先生物は読んだことがなく気になっていたので手に取ってみました。
    由利・三津木ものは横溝正史戦前に執筆された探偵小説です。都会が舞台で、美男美女や人形やら獣やらが出てきて、外連味たっぷり。横溝正史はエッセイで「チャンバラ探偵小説」と称して(謙遜して)いました。
    エッセイによると、終戦を迎えた横溝正史は「これからは謎と論理の本格推理小説だけ書いていこう」と決意しました。そこで、本格推理小説を書くために、地方ならではの因習絡む事件を解決する金田一耕助を出しました。(そのため「東京が舞台の金田一ものは面白くない」とご自分でおっしゃていますが(^_^;))

    今回由利・三津木物を読んでみて、たしかにこれは「推理小説」ではないなあと思いました 笑 
    ほとんどのお話に、悪徳漂うほどの凄まじい美貌の青少年や女性が出てきたり、監禁したり調教したり、事件部分も首無し死体だとか切り取られた腕だとか、小道具も石膏人形だとか外連味たっぷり。
    ストーリー展開は、あまりに出来すぎた偶然の連続(笑)だったり、犯人や話の展開が似通ったりしていますが、それでも小説として読んでいてとても楽しく読みやすく先が気になるところはさすがの横溝正史の筆力だよなあと思います。
    そんなあまりにも怪奇な事件、異様な人間たち、異様な死体などてんこ盛りのなかに人の哀しさも感じられます。
    横溝小説にはおどろおどろしいなかにどこかしら愛嬌があると感じていたのですが、やはり作者の人柄でしょうか。
    そして横溝正史や江戸川乱歩の、いきなり読者に語りかける読者の気持ちを代弁するような文章も好きなんですよ。「〇〇事件というのは諸君も記憶の通り…」「あの怪しい人影は誰だろう、あ、分かったぞ!」みたいな。作者から「いらっしゃい」と招かれている気分です。


    【獣人】
    ※この短編は、由利麟太郎のパイロット版のようで、名前の漢字も「由利”燐”太郎」になっている。

    銀座は騒然とした。百貨店の飾窓(シヨウウインドウ)に女の生首が飾られているのだ!
    それは第二第三の事件の始まりに過ぎなかった。
    多数の針で刺されたような死体、発見される女の体の一部、得体のしれない獰猛な獣、そして秘密を抱えた館…。

    事件を解決したのは、まだ学生の由利燐太郎。後年名探偵となる男の最初の事件だった。

    【白鑞变化(びゃくろうへんげ)】
    ※ここからが正式な「由利・三津木探偵小説」になるのか、名前も「由利”麟”太郎」になり、経歴も「数年前まで警視庁の優秀な捜査課長だったが、ある出来事により警察を追われて数年後に探偵として社会復帰した」という「由利先生」になる。
    容貌は「40代半ばの精悍な体と顔つきだけれど、髪の毛は70代老人のように真っ白」。レギュラー陣に、若き優秀な新聞記者三津木俊助、警察時代からの縁が続いている等々力警部がいます。


    日本橋の老舗の若主人で婿養子の諸井慎介は、妻の梨枝を殺してバラバラにしたとして死刑判決を受けていた。
    ここに涙に呉れながらも強い決意を持つ美女がいた。六条月代(つきよ。文字だけだと「さかやき」と誤認(^_^;))。本来なら慎介と結婚するはずの女性だった。
    ツキヨは慎介を助けるために、裏社会の人間に慎介の独房の下までトンネルを掘らせる。
     …いいねえ、この昭和感のある脱出方法!古き良き銀行強盗映画のようだ/笑

    …と、読者の私が喜んでいたんだが、助けられた男は慎介ではなく白鑞三郎(びゃくろうさぶろう)。蠟のように白い肌の大男で、詐欺、恐喝、誘拐、強盗、陵辱などなどあらゆる罪を重ねてきた男だった。ツキヨと慎介には何という不運、たまたま独房が交換され、間違った凶悪犯が逃されることになってしまったのだ。

    ツキヨを異様に憎む美青年、凶悪なんだか男気あるんだかよくわからん白鑞三郎(興味深い人物だ)、典型的悪役の鴨打博士の思惑が絡み合うなか、第二第三の事件が起こる。

    そこで登場するのが、我らが三津木俊助と由利麟太郎なのであった。

    【石膏美人】
    トラックの荷台に積まれた石膏人形を見て三津木俊助は愕然とする。恋人の一柳瞳さんにそっくりではないか、しかも人形からは女性の助けを求める声が聞こえたような気がする。
    トラックの後をつけた俊助はある家に辿り着く。そこはなんと恋人瞳さんの父である一柳家の真裏の空き家ではないか。
    空き家を除く俊助の目の前で、世にも奇妙な光景が…。

    ==これはやりきれない…。

    【蜘蛛と百合】
    未亡人君島百合枝の愛人である美青年が殺される。現場には巨大な蜘蛛の影。その後も君島百合枝に付きまという巨大な蜘蛛。彼女はかつて蜘蛛三という男に恋人を殺され監禁されたことがあったのだ。

    【猫と蝋人形】
    三津木俊助の妹通子には恋人がいたが、事情により年上の谷田貝博士と結婚せざるを得なかった。妹の不運を心配する俊助に、通子は心配事を打ち明ける。
    谷田貝博士と通子の家の裏の川に、心臓を刺された蝋人形が流されてきたのだ。それが谷田貝博士への殺害予告のようだという。
    そんな二人の前に、今度は本当に谷田貝博士の刺殺体が流されて…。

    【真珠郎】
    戦慄を覚えるほどの美貌を持ち、その手をいくつもの血で塗らした青年、真珠郎。
    英文学講師の椎名耕助(おお、金田一の耕ちゃんと同じ名前だ)は、同僚の乙骨三四郎に誘われ浅間山山麓のN湖畔へ避暑に出かける。
    彼らが泊まったのは、寝たきりの元教授の鵜藤(うどう)氏と、その世話をする姪の由美が暮らす屋敷だった。椎名は由美の美しと不運な環境に惹かれながら、この屋敷に奇妙さを感じていた。
    格子の嵌った窓、蔵の方から聞こえる鎖の音、そしてある晩庭の柳の木の下で見かけた恐ろしいほどの美青年。鬼気を纏うような退廃的な美貌。「綺麗な男だ、しかしなんというか気味の悪い男だ。」という乙骨の声も震える。

    最初の殺人が起きたのは一週間後。
    湖でボートを出した椎名と乙骨は、屋敷の屋上で鵜藤博士が美貌の青年に襲われる場面を目にする。慌てて戻った二人は、由美とともに美青年の後を追い、海の洞窟へ入る。
    その暗闇で、椎名は鵜藤博士の首無ししたいと、その首を弄ぶ美青年という異様な光景を目にする。

    あの美青年は?
    由美は屋敷の秘密を口にする。
    美青年の名前は真珠郎。
    かつて倫理に外れる行いで学会を追われた鵜藤博士が世間に復讐するために、蔵の中に監禁して残虐と悪徳の英才教育を施していたのだった。

    舞台は東京に移り、椎名の周りで相次ぐ異様な事件…。

    ==名前は有名な「真珠郎」だが映像化は聞いたことがない。これは確かに映像は無理だろうなあ。悪徳漂うほどの異様な美貌って文章ならではのもので、映像では表現できないだろう。
    語り手の椎名が純粋単純すぎるというか、言ってはいけないことをサラッと言ってしまったりする。読者としては「あなたの後ろで由美さんが青くなってるよ〜」と思うんだが(笑)、その椎名の性質も、この事件が成り立つ要素になっています。

  • 由利麟太郎・三津木俊介シリーズ第一弾。

    「獣人」
    「白蝋变化」
    「石膏美人」
    「蜘蛛と百合」
    「猫と蝋人形」
    「真珠郎」
    の六篇を収録。

    表題作は多分3回くらい読んでいるが、結末がわかっていてもワクワクする。
    しかし何度も読んでいるとどうしてもトリックの粗さも感じる。これはネタバレになってしまうので読みたくない方はご注意して欲しいが、世にも美しい殺人鬼『真珠郎』の真実が真実だけに、そこまで上手く行くかなという疑問が残る。
    ただそこを取り除いてもミステリーとしてサスペンスとしてそしてセンチメンタルな恋愛ものとしても印象的な一作。

    他には「白蝋変化」が意外と面白かった。「白蝋三郎」なる稀代の犯罪者がある奇妙な因縁で助けてもらったお礼にとヒロインの窮地を何かと助けてくれる。それでヒロインが最終的に幸せを掴んでめでたしめでたし…かと思いきや、なんと白蝋三郎、意外な仕掛けを残していた。

    他にも若き日の由利が登場したり、恋愛にのめり込む三津木が出てきたりとシリーズとしてもなかなか楽しめる。

    戦前の作品なので表現が何かと時代がかっているが、それもまた一興。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    耽美な罪業。邪悪な美少年の残酷絵巻―幻妖にして大胆、傑作6篇!金田一耕助と並ぶ、もう一人の名探偵シリーズ!

    獣人
    白蠟変化
    石膏美人
    蜘蛛と百合
    猫と蝋人形
    真珠郎

    由利鱗太郎・三津木俊助

    令和2年6月18日~23日

  • こんな作品集があったらなって、あったのね。冒頭の「獣人」はプロトタイプ作品で、アナタ由利先生?「白蝋変化」は怒涛の展開で息継ぐ暇を与えない伝奇小説で良い感じ。「石膏美人」は乱歩っぽい作品でイイ、三津木記者の女運悪化の始まりです(って嘘やで~)。「真珠郎」は展開が秀逸で、本格ミステリにも成っていますし傑作です。中二の頃でしょうか、TV録画の戦争映画「遠すぎた橋」のCM中に、面白いので是非読むようにと頬を赤らめ興奮気味に言っていた友人を思い出しました。雰囲気が妖しく、読まなかったのですが。(1935-36年)

  • 横溝作品はいくつか読んだけれど。このシリーズは読んでいませんでした。どれもが怪奇で妖美なミステリ……というか、あえて「探偵小説」と呼びたい作品です。
    「真珠郎」はタイトルだけ知っていたけれど。なんでこれ今まで読んでなかったんだ! と叫びたい気分。何これ。凄すぎる。とにかく作品全編に漂う妖しい雰囲気に呑み込まれっぱなしで、謎解きについて考える余裕が一切ありませんでした。というわけで真相にもと驚かされるばかりで。とことん魅せられてしまった一作です。
    他の作品も素晴らしいものばかり。「石膏美人」とか「蜘蛛と百合」の情念溢れる物語も好みでした。「白?変化」も癖のある登場人物がさまざまに入り乱れる活劇っぽい展開が楽しかったです。

  • 横溝正史が創造した探偵といえば、思い浮かぶのは金田一耕助だろうが、由利麟太郎と三ツ木俊助のコンビも結構な数の長短編で活躍している。そのコンビ、またはどちらか一方が探偵役になっている作品が集められた全集の第一巻がこれ。この後、三冊刊行されるらしい。このコンビでの作品集は今まで無かったので画期的な企画だが、果たして売れるのか心配になってしまう(^-^)。
    この第一巻は表題作の『真珠郎』が名作と言われていて実際に面白かったが、他の作品は地味だし探偵活劇っぽくてイマイチだった。巻頭の由利の初登場作はキャラも全然違うし、とりあえず新しい探偵を造ってみました、という感じ。以後の巻で『蝶々殺人事件』が入るなら再読したい。

  • 角川文庫が期待値を上回るハチャメチャな面白さだったのでこちらのシリーズを手にしました。角川文庫の表装はいかにも、ですが個人的にはこちら大竹彩奈さんの癖を抑えた静かな美しさが好きで、お顔がつながるように登録順を逆にしたほど。1巻左4巻右の女性は誰でしょうか。六条月代?他は真珠郎、琴絵、虹之助かなと思っています。白蝋変化の書き出しは、バリンジャー代表作を連想して実際そうだったですがあちらが1955年なので後発、バリンジャーは翻訳の出ていない横溝正史を読んでいないはずで、1936年以前で他に本家あるのかな?オチは現実的な女性の逞しさにほっこり。

  • 初めて読む、金田一以外のシリーズ
    編者詳説に書かれている通り、金田一のザ・本格推理という感じではなく、サスペンス、耽美的な要素が強い作品。冒険するような気分で一気に読むと良い感じ。
    大衆向けの小説でとても人気だったんだなぁ。
    本屋に並んでて気になりながらも読んでいなかった真珠郎をついに読んだ。

    以下ネタバレ
    犯人はほとんど服毒自殺をする。みんな持ち歩いてんのか?
    女性像はたしかにみんな耽美的。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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