ラビリンス〈迷宮〉 ディアナ・ディア・ディアス 新井素子SF&ファンタジーコレクション 3
- 柏書房 (2019年11月26日発売)
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感想 : 6件
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Amazon.co.jp ・本 (422ページ) / ISBN・EAN: 9784760151585
作品紹介・あらすじ
人を喰らう「神」の住む迷宮へ送り出された、いけにえの少女二人の闘いを描く『ラビリンス〈迷宮〉』。権謀うずまく争いに翻弄される、王族母子の苛烈な運命を描く『ディアナ・ディア・ディアス』――同じ世界を舞台にしたヒロイック・ファンタジーの傑作二編を収録。初期短編「週に一度のお食事を」「宇宙魚顚末記」を併録、新井SFの魅力あふれるシリーズがここに完結!
関連資料として、著者の才能にいち早く注目、デビューを熱烈に後押した星新一へのインタビュー、ホラー作家・友成純一による貴重な新井素子論を再録。そして、刊行済み2巻と同様、「既刊全あとがき」ももちろん収録、あらゆるファンを満足させる決定版コレクション。
感想・レビュー・書評
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少女時代、夢中で読み漁った新井素子さん。本屋さんで見つからない本を、電車で何駅も行った町にある古本屋さんまで出掛け探したりして。そんなわけで、全部手持ちの本なのだけれど、巻末のおまけが読みたくて図書館で借りて来た。うーん、この文体懐かしい。
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[目次]
ラビリンス<迷宮>
ディアナ・ディア・ディアス
週に一度のお食事を
宇宙魚顚末記 -
次男小5が星新一を読むなら、新井素子も読むかなと借りてきたら字が小さかった!その上何やら難しげ…、今度別の借りてこよ。
私も初めて読む作品ばかりだった。
収録作
①ラビリンス
難しく感じた要因はこれと次の作品は3人称だから!
なので、新しい作品なのかなと思ったら、そういう試みをしただけで、1982年(デビュー5年?)作者21
の時に書いたお話。
世界観がファンタジーと思ってたら、やっぱりSFだったかも?
神の印象が、佐々木淳子さんの作品を思い出した。んー、ブレーメン5あたりのイメージか?
(8冊目、21歳の春)
②ディアナ・ディア・ディアス
これはますます難解な話。王族とか後継者的な話に、最近読んでる漫画アプリに良くあるような世界観を思い出した。
狂った神の血、悲しい運命の物語。ディアナから産まれたディアであるカトゥサが王と成り、戦略に基づいて国家統一という大事をなす行く末を書くのかと思ったら、その未来が想像されるところ(つまり実際にはほとんど始まってない)で物語は終了。
最後のシーンは、歪んだ親子の愛の確認。
(15冊目、1985年)書いた作者も疲れた作品だそう。
ラビリンスにしても、これから、というところで物語が終わるのは一瞬物足りないような気持ちを抱かせるけれど、逆に言えばその先は読者の心の中にひろがっているわけで、ラストが面白くなかった、とガッカリさせることはないように思う。
「ラビリンス」はとある半島のつけ根部分にある、東の国が舞台、「ディアナ・ディア・ディアス」はその4年後東の国の隣国の南の国が、「扉を開けて」も同じく4年後の半島の先の方にある中の国が舞台なんだって。
この後の世界の設定も決まっているようだけど、作者の寿命が尽きる前に書けるかは不明だとか。
「扉を開けて」は子供の頃に漫画版で読んだ気がするけど、覚えてない~、そういえば異世界ものだったかも?
③週に一度のお食事を
ここからはお馴染み新井素子節で安心する。
単純に言えば主人公の女の子が偶然吸血鬼になってしまう物語なんだけど、とにかく軽い。みんなちゃんと考えてる?というくらいにみんなお気楽。でも、ラストでそうとも言っていられない真実に気付く。この辺はブラックというか、なんていうんだろう、SF的な考えの根底にある世界や人の在り方みたいなものを再確認させられる。
(1980年)
④宇宙魚顛末記
主人公の女の子、友達の男の子と女の子の3人を中心に描かれた話。
これも急に悪魔が出て来たりなんかする、ということは必然敵に天使も出てくるよね。
そして、天使と悪魔の役割りについては「いつか猫になる日まで」に似てるかな。
そしてタイトルはこれか!というようなトンデモ展開が待っているわけだけど、その中でも主人公の女の子、心の中は個人的なこと、(彼氏から連絡が来ない、小説がスランプとか)で落ち込んでいる。その辺の心理描写から、そして本当に地球が滅びそうになるにあたって、自分は自分が好き、生きたい!っていう思いに気付く。
そしたら、なんと単純な解決策に気付いちゃった。というわけで、「終わりよければすべてよし」。
落ちこぼれ悪魔のキティちゃんが3人との生活に馴染んでるの人間味あって好き♡だから、落ちこぼれなんだろうね。
(1980年。でも、書いたのは大学1年の夏休みだそう)
(あれ?③④は単行本「グリーン・レクイエム」に収録されているんだって。じゃあ、読んだことあるのか?覚えはないけど)
収録作品は以上4作。
だけど、この後にもページは続く。
付録1
◆ビッグインタビュー《星新一氏にきく》デビューから現在まで、その豊かな才能万歳
1986年の記事なので、デビュー9年くらい?
星新一が新井素子を語ってくれるのって嬉しい、ほら有名な作家さん(SFのショートを得意とする)が新井素子さんのことを認めてるんですよ!と何故か誇らしげに感じる、誰目線?
◆新井素子の言魔術(評論) 友成純一
こちらも作家さん(分野的にはエログロ?なのかな)が、たまたま新井素子の絶句を読んだら面白くて、10冊くらい購入して一気読みしたそうで、新井素子はやはり魅力的な作家なんだなと嬉しくなる、だから誰目線?この中で平井和正「ウルフガイ」との対比?が出てくるので、そのうちそちらも読んでみようと思う。
◆自作を語る 新井素子
付録2
◆既刊全あとがき
あとがきって新書版、文庫版、改訂版とか1つの作品に対していくつもつくことがあるよね。
これはそのあとがきを集めに集めて8個もある!笑
あとがきの仲で面白かったのが、《高貴なる血(ディア)》、他人に《血(ディア)》を与えるって技術って輸血だよね?正しい《血》は万人に薬効がある、正しくない《血》は二面性があり怪我や病気が治ることもあれば死んでしまうこともある、これって血液型不適合だよね、ということは純血の王家、正しい《血》、万人に輸血可能な血液型ってO型なんだなぁ、でもO型って劣勢遺伝だから他の地が混ざったらO型じゃなくなっちゃう、だから純血が重要。とのこと。なるほど~。
◆あとがき
これで、ホントのあとがき
この本は2019年刊行されたらしい。
学生の頃、直接原稿用紙に書いていたのが、掲載作品を書いた頃はワープロ、そして現在はパソコン、と世の中は目まぐるしく変化(進化)してる。機械を使うようになった最大の欠点は機械は壊れること、②の作品書いてた時、500枚以上あった原稿の300枚目から400枚目くらいが消えてしまったらしい。
◆編者解説 日下三蔵
新井素子デビューからの出版業界というかSFの周辺状況がわかる。
編者は高校時代に図書委員の友達に付いていって新井素子さんにインタビューをした経験があり、のちに編集者として就職した会社を起こした伝説の編集者の部下が新井素子のお父さんだったというから、何とも面白い偶然!
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昭和後期、この頃は新井素子さんをキャラクター込みで売る気満々だったであろうことがわかるインタビューの掲載が楽しい。
著者プロフィール
新井素子の作品
