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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760152834

作品紹介・あらすじ

【概要】
世にも精緻な文の祝祭がここに──。
西崎憲プロデュースの短文集シリーズ〈kaze no tanbun〉第三弾。「夕暮れの草の冠」をテーマに、稀代の文章家17人が、小説でも詩でもない「短文」を書き上げました。作品同士が響き合い、さらに余白に配された超短文「エピグラム」によって一篇の物語のようにも読める、かつてない破格のアンソロジーです。

【著者】(五十音順)
青木淳悟/円城塔/大木芙沙子/小山田浩子/柿村将彦/岸本佐知子/木下古栗/斎藤真理子/滝口悠生/飛浩隆/西崎憲/蜂本みさ/早助よう子/日和聡子/藤野可織/松永美穂/皆川博子

【kaze no tanbunとは】
「自分の生涯においてこれを作ったと自慢できる本を作りたい」。日本翻訳大賞の発起人であり、電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主催で、「BFC ブンゲイファイトクラブ」などを企画する西崎憲の発案からスタートした、全篇新作の〈短文〉アンソロジーシリーズ。「短文」とは「小説でもエッセイでも詩でもない、ただ短い文。しかし広い文」(西崎氏)。シリーズ通してブックデザインは奥定泰之。第一作「特別ではない一日」(2019年)、第二作「移動図書館の子供たち」(2020年)、「夕暮れの草の冠」(2021年)。

【「切手小説」プレゼント企画】
本書の執筆者17人による「切手小説」が印刷された、オリジナル切手シートを各種1名様、合計17名様にプレゼントします。
・本書挟み込みの応募用紙からハガキ部分を切り取って、住所・氏名・電話番号・メールアドレス・希望する小説の執筆者名・本書/シリーズのご感想を記入し、63円分の切手を貼り送ってください。
・本景品は、日本郵政の「オリジナル切手サービス」を利用して作成する、84円郵便切手×20枚・シール式の切手シートです。実際に切手としてご利用いただけます。
・発表は当選者への通知をもって代えさせていただきます。
・締切は2021年8月31日(火)消印有効

感想・レビュー・書評

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  • 短編アンソロジー。すべて書き下ろしのようだけど、コンセプトがいまいち不明で(表題の「夕暮れの草の冠」がテーマだったのかしら?日和聡子さんの作品にはその言葉がやや直接的に出てきたので、むしろそこからの引用タイトルかと思った)幻想系を期待していたらただの旅行エッセイなどもあり(それはそれで面白かったのだけど)統一感がないのが少し気になった。

    既読の作家では、相変わらず好きな藤野可織「セントラルパークの思い出」が不穏で良い。和やかな公園の話かと思いきや、実はホラー。西崎憲「病院島の黒犬。その後」も、何も起こらないのだけど「病院島」という設定だけでもぞわぞわして良い。岸本佐知子「メロンパン」も良かった。口からゼリーが出てきて繭になり眠り見た夢を丸めて提出する世界。

    初めて読む作家さんでは、蜂本みさ「ペリカン」、大木芙沙子「親を掘る」、松永美穂「たうぽ」が良かった。「たうぽ」は子供の名前で、とくに大事件は起こらず淡々とその名付けから成長後までの話が母目線で綴られるだけなのだけど、不思議と引きこまれた。「親を掘る」は、人生が逆から始まる世界のお話で、子どもが親から生まれるのではなく、子どもが親を墓から掘り起し、老人はどんどん若返って赤子になって消えてゆく。どこかに逆の世界があるらしいよ、というところが「メロンパン」とも共通していて好きな感じ。


    ※収録
    「コンサートホール」小山田浩子/「僕の人生の物語」木下古栗/「ドルトンの印象法則」円城塔/「編んでる線」斎藤真理子/「ペリカン」蜂本みさ/「セントラルパークの思い出」藤野可織/「たうぽ」松永美穂/「白いくつ」日和聡子/「旅行(以前)記」青木淳悟/「誤解の祝祭」早助よう子/「親を掘る」大木芙沙子/「病院島の黒犬。その後」西崎憲/「メロンパン」岸本佐知子/「高なんとか君」柿村将彦/「エディット・ピアフに会った日」斎藤真理子/「薄荷」滝口悠生/「緋愁」飛浩隆/「夕の光」皆川博子

  • 西崎憲さんプロデュース•《短文》アンソロジー

    深緑の布クロスに金の箔押し。
    夕暮れのようなオレンジのスピン。
    佇まいが美しい。素敵な装丁。

    岸本佐知子さんの『メロンパン』に喰らいつく。
    タンポポを摘む時の中空の茎の感触が過去から指に戻る。

    感覚や記憶を楽しみながら、ゆっくりと味わう。

  • 滝口作品は読んでおかないと。
    全体的にホラーテイストな作品が多い印象。
    どれも短いながらもピリッとしている。

  • 風の短文というシリーズ名のとおり、さわさわと吹きぬけていくようなアンソロジー。
    冒頭の小山田浩子「コンサートホール」。コンサートホールに行くと受ける、少し秘密めいた、わくわくするようなでも少しこわいような気持ちが描かれていてよかった。
    藤野可織「セントラルパークの思い出」。のんびりとした雰囲気ではじまりつつも、藤野可織さんなのでただじゃすまないと思っていたらただじゃすまなすぎてさすがだった(笑)
    西崎憲「病院島の黒犬。その後」西崎憲さんの作品を読むと、いつも文章を読むことの愉悦みたいなものを感じる。ストーリーとかじゃなく。少しふしぎなその世界の空気を吸うのが楽しいという感覚。

    皆川博子「夕の光」 91歳の皆川博子さんのエッセイ。「雑事を他人に託したホームには、「生」はうっすらとあるけれど「活」が欠如している」という1文の切れ味よ。そして最後のこの文。「五体の力衰え寂寥に蝕まれながらも、ふみを読み、ふみを綴る力だけは未だ残されていることを夕の光に謝すとき、禱りに、それは似る」
    涙ぐみそうになった。美しく切実。

  • 書き下ろし〈短文〉アンソロジー、全18編。
    ほんのわずかなズレから日常が様相を変えていく。立ち上る夏草やら土やら血の匂い。なかでも薄荷の匂いが良い。

  • 紹介文のように『作品同士が響き合い、さらに余白に配された超短文「エピグラム」によって一篇の物語のようにも読め』…たりは、しなかった。

    雰囲気ある装丁の、ふつうの短編集として、それぞれ楽しみました。

  • 木下古栗「ぼくの人生の物語」収録。

    職を転々とした末、ZOZOTOWNの倉庫業務を経て広告代理店の社員に落ち着き、妻子と安定した暮らしを送る男。将来、娘と妻から嫌われ、辞職してアフリカの大地に立つのを想像する。タイトルからもわかる通り、テッド・チャン「あなたの人生の物語」のパロディ。

    ほかに面白かったのは、

    ケーブルテレビの影響でセントラルパークに憧れ、ドラマでよく起こる殺人まで真似をする、藤野可織「セントラルパークの思い出」

    「たうぽ」と名づけた娘の成長を描いた、松永美穂「たうぽ」

    亡くなった祖父母や父の思い出を回想しながら祖母の家に行く道すがら、昔骨折した祖母を助けた光ちゃんと偶然出会う、滝口悠生「薄荷」

    岸本佐知子「メロンパン」も収録。

    (評価は木下古栗作品について)

  • 青木淳吾の名前をみつけて手に取った(やっぱりこの人明るい人だ!)。
    どの話もじわっと沁みるのにちょうど良いボリューム。

  • (2022/03/03読了分)滝口悠生「高架線」がよかったので、こちらの「薄荷」も読みたくなり。祖母の家の後始末をするために故郷に訪れた主人公の、家族をめぐるひとり語りや、自らの遠い記憶の経験しなおしが描かれ。/"死んでいるからといって生きている者の話し相手になれないわけじゃない"/祖父、祖母、光ちゃんのエピソード。恋人のお腹の中のこれから生まれてくる子供へ語りかけ。/祖母の住んでた家を訪ねようと歩き始めて迷い/まさか光ちゃんが娘とは…/"自分の記憶には自分の知らない間違いがきっともっとたくさんあるのだ、そう思うと私はなぜか救われた気持ちになって"/(2022/01/21読了分)短文アンソロジー。夫がランダムに名付けたという娘の名前たうぽ、人にいぶかしがられるたびに、ニュージーランドに同名の湖が、と言い訳するたびに愛着が湧いてきて、娘はすくすくと育ちやがて本当にニュージーランドに留学し就職も決めて同性のパートナーと子供ももうけ、とかろやかに怒涛の展開をみせてくれた、松永美穂「たうぽ」が個人的ベスト。他に、なかなかハワイにたどりつけない、青木淳悟「旅行(以前)記」。先に気づいてすばやく耳にささやくことでお互いが死に向かって逃れようもなく絡み合ってしまう、早助よう子「誤解の祝祭」(栗原康作品に出てきて一度読んでみたかった作家さん)。人みな口から出るゼリー状の繭につつまれる世界、岸本佐知子「メロンパン」。学校のトイレに霊が見えるという同級生をぼこぼこにしてしまい、その後和解らしきものがおとずれる、柿村将彦「髙なんとか君」。も、よかった。/飛浩隆「緋愁」。道路管理の公務員が主人公で、ガードレールに布をぐるぐる巻きにする教団の語る、「いずれ個人が携帯電話でつく嘘とテレビの嘘が混じり合うようになる。そうしたらあっという間だ。ひとの数だけある主観世界が漏れて現実をじっとりと溶かす。」て一節が印象に。

  • 日本の物書きの名手たちが集い、その手腕を時に競い合い、時に讃え合うような。

    短編なので、読むのに負担がかからず、色々なタイプの作品も楽しめた。

    この本をきっかけに、アンソロジーではなく個人の著作を読んでみたくなった作家も何名か。

    布張り・金箔の装丁も素晴らしい。

    百年後の図書館で本好きの読者が、思わず手に取ってしまう事を夢想する、後世に残っていくであろう作品。


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著者プロフィール

1955年生まれ。翻訳家、作家。著書に『世界の果ての庭』『蕃東国年代記』『ヘディングはおもに頭で』『未知の鳥類がやってくるまで』『全ロック史』ほか。訳書に『郵便局と蛇』コッパード、『第二の銃声』バークリー、『ヘミングウェイ短篇集』など多数。電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主宰。

「2022年 『郊外のフェアリーテール キャサリン・マンスフィールド短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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