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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784760153480
作品紹介・あらすじ
★第54回緑陰図書(高等学校部門)選定★
ほんとうのイノベーションは、
ゆっくりと、予想外に始まる。
■内容
いつの時代も、研究者は未知に挑み、人類の発展に貢献してきた。
誰も解明していない謎を追う人。
社会課題の解決に努める人。
いつ、何の役に立つかがわからなくても、
未来へより多くのものを託そうとする人。
彼らの人生をかけた挑戦の積み重ねの先に、今の私たちの生活がある。
そして、その原点にはいつだって飽くなき知的好奇心があった。
しかし、日本では現在、運営費交付金の減少や
科学技術関係予算の過度な「選択と集中」などが原因で、
研究者が知的好奇心をもとにした基礎研究を行いづらい状況にある。
それゆえ、イノベーションの芽を育てるための土壌が崩れつつある。
令和の時代において、
研究者たちはどのように基礎研究を継続していくことができるのだろうか?
社会はどのようにその活動を支えられるだろうか?
そもそも、私たちはなぜそれを支えなければならないのだろうか?
本書は、各分野の一線で活躍する3名の研究者が、
『「役に立たない」科学が役に立つ』をテーマにした議論を中心に、
書下ろしを加えたうえでまとめたものである。
これからの「科学」と「学び」を考えるために、
理系も文系も、子どもも大人も、必読の一冊!
■装画
カシワイ
感想・レビュー・書評
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『「役に立たない」研究の未来』それを決めるのはいったい誰? - HONZ
https://honz.jp/articles/-/46023
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「役に立たない」科学が役に立つの出版を受けて、表題のテーマで3名の有識者が対談したイベントを本にしたもの。基礎研究を取り巻く環境の厳しさが良く分かる。精神論で解決できる課題でもないと思うけど、探究心を大事にする気持ちは大事。
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3人の異なる分野の研究者が、それぞれ微妙に異なる立場から「役に立たない」研究について論じている。
3人それぞれの講演等の中から印象に残ったことを書き記しておく。
まず、理論物理学者の初田さんは、基礎科学の重要性を一般社会や政府に対して理解してもらうためには、科学者自身のアウトリーチ活動をより多様に、効果的に展開していくべきだと主張している。ADKと組んだ独自のアウトリーチの取組み(クリエイターと協力してプロトタイプを作っていくというもの)も紹介していて、興味深い。
次に、分子細胞生物学者の大隅さんは、自身が、当初全く引用されない分野だったオートファジーの研究を続けてきた経験から、安易に「役に立つ」分野を研究するのではなく、自分が本当におもしろいと思える分野を見つけることの重要性を説く。また、大隅さんは自身の財団を立ち上げ、研究者視点での「おもしろい研究」にファンディングしているなど、国の政策とは一定の距離を置いて基礎研究の支援を行っている。
最後に、科学史家の隠岐さんは、「役に立つ」というのは政治的な言葉(説得のための言葉)であり、決して検証のための言葉でないことを指摘している。「有用性」が持ち出されるのは、それが未来に関する言葉だからだ、という主張はなかなか興味深い。また、隠岐さんは、今般の科学技術基本法改正によって人文社会科学がいわゆる科学研究に位置付けられることになったことについて、人文社会系研究者が安易に「動員」されないようにと、警鐘を鳴らしている。「社会のため」と言ったときの「社会」とは何を指すのかが曖昧なまま動員されると非人道的な結果に繋がりかねないという指摘はもっともであり、まさに人文社会系研究者はその点に留意しながら研究をすべきなのでは、と感じた。 -
初田さんが指摘していた、知識は唯一、使えば使うほど価値が増える、という点は興味深い。誰でもわかる役に立つものは陳腐化も早いのかもしれず、日本が成熟国になる過程ではとるべき選択肢ではないのだろう。知で立国するのが有力であり、この本で議論されていることが議論の端緒になりそう。
学問・科学の政治との距離の取り方、大衆社会での基礎研究の支持の集め方とアウトリーチの難しさなども浮かび上がってきた。
こうした領域横断的な知の交流は読んでいて楽しい。かつアカデミストの活動はうまくいってほしい。読後に調べてみると、発見を生み出す科学を支える自律分散的な取り組みとして近年はDeSciという取り組みもあるようで、日本が再興するためにと浸透するとよいと感じた。 -
それって何の役に立つの?そう首を傾げられる研究をしている人たちの日常ってどんななんだろうという興味から手に取った本でした。内容は少し違ったけど面白く読めました。
知的好奇心を殺さずに誰でも目一杯やってもらえればいいのだろうけど、資金が一番のネック。なにか政府のやってることってありとあらゆる分野を衰退させることばかりだなあとため息が出た。
民間の力でなんとか出来ればいいのだけれど。 -
文系の存在意義を考えるために読んだ。理系の学問でも、研究資金獲得競争に邁進せざるを得ずに有用性という観点に合致する分野に研究領域が収束しているという指摘になるほどと思わされた。ノーベル賞受賞者の、「楽しいと思える研究をする研究者が増え、研究の多様性があることが大切」という言葉は「それって何の役に立つんですか?」という社会における日常的な問いかけを見直すという示唆を与えてくれる。科学史の専門家から提示された、貴族的な国家と民主主義国家での学問・芸術保護のスタンスの違いは斬新な視点であり、歴史上繰り返される衆愚政治や近代の大衆社会における孤独・閉塞感などの民主主義国家のマイナスな特質を考えさせられる観点であった。
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科学は文化である。
役に立つってなんだろう。 -
物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
東大OPACには登録されていません。
貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
返却:物性研図書室へ返却してください -
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研究というと、「病気の治療に役立つ」とか「暮らしが便利になる」とか、そういう役に立つか立たないかで語られがち。
基礎研究や学術研究を「役に立つか立たないか」ではなくて、知的好奇心や探究心を満たすものでもいいじゃないか。
国は役に立つ研究を選び、そこに研究費を投じる。それでいいの?と思ったけれど、政治を憂いてもしかたないので、民間の団体が研究費用を支援する必要がある。そして、研究者ではない一般の人にも科学の楽しさを伝えて、「推し研究」を支援できる社会になっていけたらいいなと思った。 -
みなさんには「推し研究者」はいますか?" という出だしから始まる本書。残念ながら私には一人も思いつかない。
どうして市民と研究者の間にこうも隔たりがあるのか。科学の面白さはどう伝える?基礎研究はこれからどう支えるべきか?そもそも「役に立つ」とは?
それぞれ違う立場から科学、基礎研究、これからについて語っている。ナビゲーターの方も学術系クラウドファンディングサイトの方で、質問の内容が具体的で、文系の私にも大変興味深い内容だった。
説明責任の一つに「研究者の日常を伝える」のもありではないか、というのも面白いなあと思った。
あと無理して「〇〇に役に立つ」をゴールにしなければいけない、というのはおかしいのではないか。自分の「知りたい」をもっと突き詰めてほしいし、それを支える仕組みを作ろうと奮闘している4人の姿が垣間見えた。
オススメ度:
★★★★☆
ノブ(図書館職員)
所蔵情報:
品川図書館 407/H42 -
役に立たない科学が役に立つ:物質の安定 知識・使えば使うほど増える資源 物理学 基礎研究の本質・ゼロイチ 4つの常識 ディラック方程式の ヒッグス論文 役に立たない知識の有用 人間の精神を解放 選択と集中・ゼロイチと両立しない すべては好奇心から始まる―ごみ溜めから生まれたノーベル賞 選択と集中は何をもたらしたのか:国家戦略とマネジメントの話の混同 企業の意識 説明責任 目標設定が低くなる悪循環 内にこもったフレクスナー・外に出たアインシュタイン アウトリーチ活動 これからの基礎研究
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国の政策に対する危機感が主な主題かな、と思ってたらもっと深かった。
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研究にはお金がかかり、資金は足りないけど、根本的な解決には見えない壁があるんだーというもやもやがリアルに伝わってきました
わたしは研究とか、そういうのは難しくて途中の大隈さんのお話とかもついていけなくなりそうなくらい縁遠いと思いました
でも、プレスリリースとかみてみよ!って思いました、本文にも合った通り「思い立ったら行動」ですね
あと、知識は唯一、使えば使うほど増える資源という表現は知らなかったので、とても良い言葉だなと思いました -
「何の役に立つの?」「勉強して何の意味があるの?」世間、政府にとどまらず、この流れが子供達にも起こって来ていると感じる。自分の頭で考える「楽しむ」ことの大切さを伝えられる人に私はなりたい。
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役に立つ立たない、お金になるならない、そんな物差しで研究を測るな!そんな当たり前なことが当たり前でなくなっている世の中を嘆く。お金有り余っているところは有り余ってるみたいなのに。
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この研究は何の役に立つのか?
この質問の裏には何かの役に立たない研究は意味がない、という意味が込められている。
しかし歴史の中でなんの役に立つのかわからない研究が多くの科学技術の発展に役立っている。
考えてみれば身体トレーニングもやっている時はそれが何に役立つのかわからないものも多い。
でも、そうやって身体の動きを少しずつ理解することで思わぬ発見もある。
研究という姿勢は短期的なものでインスタントな結果を求めるのではなく長期的な展望で取り組まないといけないですね。
著者プロフィール
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