常識のない喫茶店

著者 :
  • 柏書房
3.86
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本棚登録 : 3068
感想 : 189
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760153923

作品紹介・あらすじ

潜入したい。変なあだ名を付けられたい。
顔色を窺って生きてきた彼女が出禁のカードを振りかざす。
その瞬間を目撃したい。
こんな働き方、誰も教えてくれなかった。
――こだまさんも夢中!

■内容
「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」
――そんな理念が、この店を、わたしを守ってくれた。

失礼な客は容赦なく「出禁」。
女性店員になめた態度をとる客には「塩対応」。
セクハラ、モラハラ、もちろん許しません。

ただ働いているだけなのに、
なぜこんな目にあわなければならないのか。
治外法権、世間のルールなど通用しない
異色の喫茶で繰り広げられる闘いの数々!
狂っているのは店か? 客か?
あらゆるサービス業従事者にこの本を捧げます。

喫茶×フェミニズム――
店員たちの小さな抵抗の日々を描く、
溜飲下がりまくりのお仕事エッセイ!

感想・レビュー・書評

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  • 何度も読み返しました。
    内容が面白いのはもちろんですが、共感出来ることが多すぎました。
    接客業として日々感じていること、同時に自身がお客だったとき、どんな態度だったのかを考えさせられました。
    僕のマリさんのファンになるきっかけとなった本です!!

  • 「NOと言える喫茶店」

     ひと昔まえ、“NOと言える日本”みたいな言葉が流行ったような気がする(違うかも、うろ覚え)
     ここはお客さんに、「NO」が言える喫茶店だ。嫌なお客さんには、いらっしゃいませも言わない(笑)店長が出禁にするのでもなく、従業員判断で出禁にもする。接客業の経験がある者からすると驚いた。嫌なお客さんでも嫌々ながらそれだけは言っていた。こんなに素直に接客が出来る店、面白すぎる。

     接客業のいいところも、悪いところも楽しめる一冊。
     
     個性豊かなお客さんを紹介してくれて、もし自分が嫌なお客さんだとしたら “こんな風に店員さんから見られてるんだよー”“こんな感じの接客をされたら、自分は嫌なお客さんかもよー?”が分かったりする、とても面白いエッセイ。

     「果たして常識がないのはどちらか?」

  • いやいや、笑えた。
    クスクス笑うから、娘に怪しまれた。

  • 「こんな本に出会いたかったんだぁ。」
    と、叫びたくなった。
    相槌の嵐。
    そして羨ましい。
    こんなお店に行ってみたい。
    店員だって1人の人間だ、その通り!

    必ずまた読み返すだろう。

  • 「常識のない喫茶店/僕のマリ」
    ☆☆
    エッセイは難しい。
    作者の気持ちに寄り添えないと、読み進むのが難しい。

    私は飲食店経営者なので「お客様あるある」は分かる。確かにある。あだ名もあるし、出禁もある。
    好きなお客様も嫌いなお客様も間違いなくいる。
    お客様の悪口を言うこともあるし、好きなお客様に贔屓することもある。
    お店のスタッフを困らせるお客様にはキツく注意することもあるし、追い返すことだってある。
    だけどそれは、私の仕事です。
    スタッフが、お店のお客様を減らすのは違うと思う。
    オーナーがそれでいいと言ってるのだから、その喫茶店にとってそれは問題ではないのだけれど。

    ただ、私とは違う。
    たくさんあるお店の中から、私の店のドアを開けてご来店くださるお客様には感謝しかない。
    嫌いだから「いらっしゃいませ」を言わないなんてことはあり得ない。
    お客様だって基本的にはお仕事をしている。(もちろん親のお金であるとか、年金であるとか、そう言うことも分かってます)そうして稼いだお金を私のお店で使ってくれることで、私はお店を経営していられるし、5人のスタッフにお給料だって払えているのです。

    『だから〝常識のない喫茶店〟っていってるじゃん!』と言われたらそれまでなのですが、結局、自分たちにとって都合の良い、お行儀の良いお客様だけを「お客様」とし、嫌いな人には「いらっしゃいませ」も「ありがとうございました」も言いません。とななると、私はモヤモヤしかない。
    例えば、出された食事を「いただきます」も「ごちそうさま」も言わずに食べ終えたのと同じモヤモヤ。

    好きなお客様と身内のアレコレは〝笑い話〟であり、良いエピソードとなるのに、ただ嫌いと言うだけで、塩対応となるのは、彼らにも大切な人がいることや、彼らを大切に思う人がいることが欠落してるんじゃないかと思った。

    「嫌なお客様とは喧嘩してもいい」
    「お店のスタッフが嫌な思いをする人なお客様ではない」
    序盤は、なるほど面白いなぁと思っていたのですが、読み進めるうちに「優しい思いやりのある人たちと働きたい」が、あくまで身内感情でしかないなと感じた。

    「じゃあ来るなよ!」と言われるのがオチだけど、私がそのお店にいけば、私は間違いなく「良いお客様」になれると思う。スタッフが好きなお客様になれると思う。
    何故なら、私はしごく常識的であり、おとなしく本を読み、店員に絡まず、注文する時には笑顔で丁寧、静かに食べ、いただきますとごちそうさまを言い、笑顔でお会計という。だからきっと良いお客様に分類される。

    それは、同じ飲食店として、スタッフさんが忙しいことも、お店を回す大変さも、いろんなお客様がいることも全部知っているから。
    だけどそれは、店員さんが見る私の表面でしかない。
    私が本書についてこんな感想を書いていると知れば、塩対応かもしくは「じゃあ来ないでください」側になるのだと思う。笑

    つまりお客様はいろんなものを抱えてドアを開けると言うことも忘れないで欲しい。
    お客様の多いお店なので、きっと、ほとんどのお客様には、キチンとした対応をされてあるのだと思います。その中にあって、嫌だったことをおもしろおかしく書き綴ったエピソードだと思いたい。
    だけど、身内贔屓が顕著すぎて、ちょっと疲れました。
    私はね…。

    今年の20冊目
    2022.5.21

  • とにかく面白い。
    エピローグから笑えた。あだ名で大笑い。

    とても可愛いらしい装丁の本なのに想像もつかなかった。

    接客業を経験したことのある人なら「わかるわぁ、それ」と何度も思うだろう。

    「心地いい空間」を守るためには戦うことも必要。
    確かにそうだろう…。
    だがなかなか出来ないものだ。

    自分の気持ちを大事にすることで強くなり、人の痛みにも敏感になった…と。

    常識から逸脱したこの店で見つけたのは、ブレない心と本当のやさしさ。

    不快な出来事に声をあげることで自分を大切にすることを学んだ。

    多くの人と関わり合ううちに色んなやさしさのかたちを知った。

    改めて思う。「やさしさ」と「おもいやり」の大切さを…。

    魅惑の喫茶。
    不惑の喫茶。
    このような喫茶店を発掘したいと思った。

  • 「僕のマリ」さんのデビュー作。著者の働く喫茶店での話、喫茶店で働くまでの道のり、喫茶店全般への想いなどが綴られている。読後、どこの喫茶店なのかを検索してしまった。ネットの情報が事実であれば、喫茶店を集めた写真集などで見たことのある有名店だ(個人的には行ったことがない)。著者が生き生きと楽しそうに働いている様子が伝わってきた。新卒で働いた大手企業が激務で心身ともに疲弊したのち、ふとした縁で働き始めた喫茶店とのこと。人それぞれ合う、合わない場所や仕事はあるなぁとつくづく思った。環境はやはり大事。ここまでお客さんのことを観察しているのか、そして(時に辛辣な)あだ名までつけてしまうのかと、若干驚いた。こうして本でエピソードを読む分には楽しいが、自分が客だったら、観察されたりあだ名をつけられたりはしたくないな…と思ってしまった。

  • 「常識」はないけど、「良識」はある。
    失礼なお客はどうどうと出禁にし、仮に仕事はできなくても優しい人なら働ける。こんなステキな喫茶店が本当にあるなんて。
    イヤな客、個性的な客、びっくりな事件…自分も接客をしているからよーーーく分かる話が満載。
    客=神だと本気で思ってる人多過ぎ。「私そんなこと思ってません」ていう人だって、無意識に見下している場合だって少なくないと思う。こちらにモノを差し出す仕草一つでそういうのは分かるのだ。
    出禁にするのだってたぶん簡単じゃない。嫌いな客に来るなって言えるの爽快って思うかもしれないけど、怒るのだって体力使うし、気持ちのいいものじゃない。
    ほんのちょっとした心配りで、気持ちよく過ごせるのに。
    とはいえ、イヤな客がいるからこそ、こんなおもしろい本が生まれたのだなぁとちょっと複雑。

  • 推薦書籍『常識のない喫茶店』 | 私のBunkamuraドゥマゴ文学賞 | Bunkamura
    https://www.bunkamura.co.jp/bungaku/mybungakusho/article32.html

    【重版記念】僕のマリさんインタビュー|常識のない喫茶店|かしわもち 柏書房のwebマガジン|note
    https://note.com/kashiwashobho/n/nd9ab2856d87f

    常識のない喫茶店(一般書/単行本/日本文学、評論、随筆、その他/) 柏書房株式会社
    http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b588187.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      話題のエッセー『常識のない喫茶店』と、『スカートのアンソロジー』に通底するハラスメントにNOを突き付けるための姿勢(2021/10/23 1...
      話題のエッセー『常識のない喫茶店』と、『スカートのアンソロジー』に通底するハラスメントにNOを突き付けるための姿勢(2021/10/23 14:00)|サイゾーウーマン
      https://www.cyzowoman.com/2021/10/post_362134_1.html
      2023/02/01
  • 面白かった!  

    「働いてる人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」

    無礼な人や迷惑な人は出禁にしてもいいというのがモットーな喫茶店。
    こんなお店があるなんて!!
    私も職種は違えど接客業なので、めっちゃ分かる〜って共感の嵐でした*(^o^)/*

    お客様にあだ名をつけるのは笑った〜
    自分の職場でもあるなぁ〜って。
    ピーピーよく騒がしく話すお客様をピー助と呼んでたり、かまってちゃん1号、2号、マダム、オカメちゃん、ikko、、、どこの店でもあるんですね笑笑

    いいお客様もいれば、エラそうでほんと嫌なお客さんも結構いる!
    お金を払ったら自分の方がエラいのか?
    店員に過剰なサービスを求めたり、ストレスの捌け口のように扱ってくる人ってほんとにいる。
    変な常習クレーマーとかには、もう来やんかったらいいやんって言いたくなるけど、やっぱり会社員という手前そういうわけにもいかず理不尽な思いをする事があったり、、

    なのでこのエッセイを読んで、なんだかスカーッとした気分♬
    マスターの方針が素敵。
    ただ、こういうポリシーでやってると逆に自分の方がエラそうにならないように気をつけないとな〜とも思った。怖い世の中、何があるかも分からないし。

    接客する側でも、される側でも気持ちよくありたいなと改めて思いました♡


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著者プロフィール

文筆家。一九九二年、福岡県生まれ。著書に『常識のない喫茶店』『書きたい生活』(ともに柏書房)『まばゆい』(本屋lighthouse)がある。また、自主制作の日記本も発行している。

「2023年 『いかれた慕情』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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