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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784760154463
作品紹介・あらすじ
江戸川乱歩、佐野洋、有馬頼義、都筑道夫、大西赤人、石上三登志、大橋国一とのバラエティーに富んだ対談、昭和22年の生活記録「続桜日記」などで構成される『横溝正史の世界』、戦前の探偵小説界の状況を活き活きと伝える、小林信彦によるロングインタビュー「横溝正史の世界」や乱歩や安吾、高木彬光による作品評を収める『横溝正史読本』。「本陣殺人事件」「蝶々殺人事件」「八つ墓村」「獄門島」など不朽の名作が生まれ出た創作の舞台裏から、野球好き・音楽愛好家としての素顔に至るまで、縦横に語り尽される! 作家・横溝正史の創作活動の秘密に迫る一冊。
感想・レビュー・書評
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横溝正史73歳以降の随筆集です。
10年間事実上の作家引退状態にあった横溝正史ですが、突如横溝ブームの再来!「ヤングにバカうけする横溝正史推理小説」などといった雑誌記事に御本人も戸惑いつつ嬉しく思ってもいる様子が感じられます。さらに自分より年上のアガサ・クリスティが81歳で新作長編を書いたということにも刺激を受け、書いている途中うのままだった長編小説も書き上げた!
横溝作品は、ドラマ化や映画化、元にした作品やパロディなどには「自分以外の人が金田一耕助を使いたいと思うほど名探偵になったならそれで良い」「イメージを壊さない程度だったらパロディでもどんどん書いてほしい。あまりにもイメージと違ったら評論家たちが『それは違う』っていうだろうし、うまければ『もっとやれ』っていうでしょ。こうやって作家を盛りたてていってください」といっています。
横溝正史でいえば、「スケキヨマスク」「逆さま死体」などは、元ネタ知らなくても日本人に定着している感がありますからね。
こうして令和の今でもドラマ化されています。(^o^)
横溝正史の名物名探偵は、戦前は由利麟太郎、捕物帳として人形佐七、そして戦後は金田一耕助へと変わっています。
由利・三津木探偵物は、都会が舞台で、美男美女や人形やら獣やらが出てきて、外連味たっぷりの物語であり、「チャンバラ探偵小説」という方向です。人形佐七の捕物帳は戦時中に差止めされてしまったらしい…。
そして終戦を迎えた横溝正史は「これからは謎と論理の本格推理小説だけ書いていこう」として、地方ならでわの因習絡む事件を解決する金田一耕助を出しました。(そのため「東京が舞台の金田一ものは面白くない」とご自分でおっしゃていますが(^_^;))
金田一耕助は、現在ではいかにも前時代的な風貌ですが、書いた当時は「東京ではこのような人物はどこでも見かけた」というようなリアルな人間だったわけです。
本書では、他の作家や編集者との対談集も載っています。
当時の海外や日本の推理小説について、作家たちの関係など語られていてなかなか興味深いです。
自分が小説を書くにあたって色々な推理小説や知人からヒントを得ていっていることも描かれています。
アガサ・クリスティの名探偵であるポアロに関しては「年齢を数えたら100歳超えていることになるんですよねーー」とツッコミ入れてました/笑
また、『そして誰もいなくなった』を読んで「童謡を使った殺人なんて見事だけど、自分がやったら真似っこだと批判されちゃうだろうなあ」と思っていたら、ヴァン・ダインも『僧正殺人事件』で童謡殺人を書いていて「アイデアが同じでも必ずしも剽窃ってわけじゃないんだ!」とハッとして『悪魔の手毬唄』を書いたのだとか。
それを聞くと昨今の、ちょっとでも設定が似ていたら「パクりだ!!」と揚げ足取る風潮が馬鹿らしく思えますね(もちろん本当の剽窃は駄目ですよ!)。
このころ小栗虫太郎の『ドグラ・マグラ』が発表されたようですが、横溝正史と対談相手で「あれは凄いよね 笑笑」「読んでいて気が変になりそうですよね 笑笑」なんて話していました。『ドグラ・マグラ』を読んだのは相当昔でよく覚えていないのですが「読むと気が狂う」という評判が独り歩きというか増長してかえって読みづらくさせている気がしていたのですが、当時の出版関係者が言っていた由緒正しい評価だったのか。
探偵小説作家が探偵小説を語るという意味でも、興味深いエッセイ集です。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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