- Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
- / ISBN・EAN: 9784760218158
感想・レビュー・書評
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普段まったく詩は読まないのだけど、テレビで「自分の感受性ぐらい」を紹介していてとても心が動くなあと思って本を読んでみた。
50年近く前の詩だけどどれもおもしろい。
泣き止まない赤ちゃんを抱いて夜中歩く母親とか、
80年経ったら今の人や企業は皆いないとか、
今も同じ。
自分の義理の妹が育児で今まさに子どもの夜泣きに悩まされている。
2023年の日本企業の平均寿命は東京商工リサーチによると23.3年だそうだ。
世の中が変わっていく速度は早いけど、
変わらず人の心に引っかかり続ける詩もある。
新しいものも大事にしつつ、変わらない価値も見逃さない人になりたい。
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有名な『自分の感受性くらい』が収められている詩集。今心がぱさぱさなので、とても響いた。
人はみな孤独だ。その前提に立った上で、人と人との関係性や交流とは何なのか、考えに触れられる。また、今生きていることの感動を色んな角度から気づかされる。『知命』と『青梅街道』が特に好きだった。後者はリズムも楽しい。
戦争を題材にした詩も複数あり、読みながらミヒャエル・エンデや加藤周一の顔が浮かんだ。私は戦時を生きた人の、考えの深さ重さが好きなんだと、合点がいった。
『自分の感受性くらい』
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮しのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ -
表題の詩がいちばんぐさりと刺さった。
古さなど全く感じさせない、勁く、しなやかな、選ばれた言葉たち。
時代背景や著者の過ごしてきた来歴などもう少し詳しく知ればもっと興味深く読める気がする。
他も読んでみたい。 -
1977年の詩集。全く古さを感じさせない鮮やかな現代詩。
自分の感受性くらい、存在の哀れ、木の実と、有名な詩を多く含みます。「四海波静」はボディーブローのように確かにコタえる。 -
茨木のり子さんの詩はまるでゆったりと流れるせせらぎや、やわらかに差しこむこもれびのよう。
読むだけで心の歩調がゆるやかになる。 -
大学生の時に出会い、そりゃそうだ なんて尖った感想でした。
道標になるだろうと本棚にずっとありました。
そして今年。
本を整理していて久々に改めて読むと、もう襟を正すしかない というか、背筋がピキーンと伸びるのでした。(ねこねこぜなのに)
今の環境に、時代に、社会にモヤモヤして、少し卑屈になっている時におすすめです。言葉がストレートなので元気な時に読むこと。
紹介者:ねこねこぜ
企画開催日:2022/12/04
企画名:「2022年に読んでよかった私の1冊」 -
なんと言っても、「自分の感受性くらい」という詩が圧巻である。
『詩集と刺繍』同じ発音で、女性に関係あるものであるが、本屋で尋ねたら刺繍のコーナーにつれていかれた。なるほど。茨木のり子はいう「天下に隠れもなき無用の長物 さりとて絶滅も不可能のしろもの」と言い切る。
『癖』いじめっ子にいじめられて、卒業の時に小さな紙片を渡された。「ワタシハアナタガスキダッタ」と書いてあった。なんで、今頃。そしていじめられるって、好きな時にもあるんだと納得する。
『自分の感受性くらい』
パサパサに乾いていく心を ひとのせいにするな。
気難しくなってきたのを 友人のせいにするな。
苛立つのを 近親のせいにするな。
初心消えかかるのを 暮らしのせいにするな。
ダメなことの一切を 時代のせいにするな。
自分の感受性くらい 自分で守れ バカものよ。
ふーむ。このバカものという言葉の新鮮さ。鮮度もいい。切れ味もいい。
詩に、バカものという言葉を使う 茨木の子の勇ましさ。
『知命』
解けない小包の紐、こんがらがった糸の束、
巻き込まれ、振り回されたけど、いつも たくさんのやさしい手があったことを知る。
青梅街道には、以前は馬糞があったけど、現在は排気ガス。いつも忙しく生きている。
『左官』のいなせとファッショナブル渾然融合。油断のならないいい感覚。
「奧さんの詩は俺にもわかるよ」と言われて舞い上がる。
いくじなしのむうちゃん。
「いくじなしは いくじなしのままでいいの 泣きたきゃ泣けよ
いくじなしの勁さを貫く方が この国では はるかに難しいんだから」
という言葉は、実に含蓄がある。遠回りして見つけたような いくじなし。
『孤独』孤独が孤独を生み落とす。
モグラは、土の中で生きるのだ。
なぜかがまぐちはいつも空っぽだった。どこに行ったのだろうか。
北斗七星の下あたりに 底なしの柄杓があった。
万世一系の家系を繰り返し覚えさせられたけど、日本にあるものは、万世一系のものが多い。
文学方面はあまり研究していないという言い訳が、笑える。
生き急ぎ、死に急ぐ人々の群れ。
平凡な言葉の中に、重みをうんとかけて、キラキラ表現する。うまいなぁ。
バカものよ! -
心に切り込んでくる詩集。
読了の今、ああくそ、やられた、といった心持。 -
「自分の感受性くらい」は、いつの年令になっても、読んでみると自分を振り返らずにはいられなくしてくれる。そこがいい。