歳月

著者 :
  • 花神社
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (135ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760218677

感想・レビュー・書評

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  •  茨木のり子が亡き夫三浦安信に宛てた詩を、本人の死後甥の三浦浩が出版したもの。
     評伝によれば、「櫂」の同人の谷川俊太郎が一番良いと誉めた詩集。人間味があって好きだなと。
     夫に先立たれた茨木の哀しみや夫への想いが詰まったひとつひとつの詩を読むと胸がつかれる。
     こんなふうに歳を重ねられて幸せな夫婦だったなぁとも思う。

  • 文庫版の選集で「(存在)」を読んだときに息が止まるような衝撃を受けて、この詩集を買いました。この世にこんな愛があるんだ、と思わせられます。

  • 茨木のり子さんが亡くなったご主人三浦安信さんへの思いを綴った詩で
    気恥ずかしさすら感じるほどどれも赤裸々にキュートで切ない。

    ご本人が亡くなられた後箱から見つかった一連の詩。
    恥ずかしいから、とそのまましまわれていたものが
    甥の宮崎治さんの手により出版された。
    経緯を記した「Y」の箱という文章がまた素敵だった。

    ここまで夫を愛していた茨木さんは、きっと今頃再会できて大喜びであろうと
    残された者たちが思える愛の深さが沁みてくる。

  • 最初に本屋さんでこの本に出会ったとき、ちらっと立ち読みしただけで完全にうるうるきてしまい、レジに持っていくことができませんでした。2回目も同様。3回目でようやく買えました……宝物です。この本だけは絶対、人にも貸さない。
    茨木のり子の詩は、りりしく、いさぎよく、ごまかしがなくて好きですが、なかでもこの詩集は私にとっては別格です。
    えろい。なまなましい。むきだしで、けだかくて、まぶしい。おそろしい。いとおしい。
    どう説明しても追いつかないです。

  • たくさんの人に愛された詩人でありながら、ご本人は早くに亡くなった夫のことを思ってこんなにもさみしさに打ちひしがれていたのかと思うと、読みながら胸がいっぱいになってしまった。なんてかわいらしい人なのだろうと、ますます彼女のことが好きになってしまいました。
    茨木のり子という人の愛情やあたたかさにあふれていて、ほんとうに素敵な詩集。再版してほしい。

  • 茨木のり子の激情

  • 誰かをこんなに風に好きになって、愛してみたいと思わせる、純粋で尊い愛の形・・・。

    少女のようないじらしい愛の告白に心打たれました。

  • とある雑誌のラブレター特集で紹介されていた詩(「パンツ一枚で」。一番下に抜粋します)に胸を摑まれ、また愛くるしい表紙に魅せられ、手にとりました。詩人・茨木のり子が、死別した最愛の夫への想いを綴った詩集です。
    震災があった今年だからこそ、言葉のこだまが重く広い気もしました。

    目には見えない足跡をたどり、「あばらのあたりから、吐息のようにわいて出る哀しみの雲烟」。夏の夜の庭に見る、あちらの世界への回転扉。たくさんの男を知りながら、ついに一人の異性にさえ逢えない女も多い中で、ひとりの男を通してたくさんの異性に出逢った幸せ。
    書きとどめられている一つ一つの情景に、とてつもない恐怖を感じると同時に、こんなに「実体」を越えて想える人ができることに人間としての究極の倖せを感じもする。
    人の数だけ永遠の別れはあるけれど、「決定的他人」を「選んで」添う伴侶との別れは、私にとってはもう、想像さえも及ばない世界。
    想像だけで胸が締まるのだから・・・これを読んで母が流すであろう涙は、子としては更に胸が締まる。ので絶対親には貸さない。

    【パンツ一枚で】
    パンツ一枚で
    うろうろしたって
    品のあるひとはいるもので
    暮らしを共にした果てに 
    相棒にそう思わせるのは
    至難のわざでありましょうに
    らくらくとあなたはそれをやってのけた
    肩ひじ張らず ごく自然に
    ふさわしい者でありたいと
    おもいつづけてきましたが
    追いつけぬままに逝かれてしまって
    たったひとつの慰めは
    あなたの生きて在る時に
    その値打ちを私がすでに知っていたということです

  • 突然亡くなってしまった旦那さんに対する詩集。
    すごいラブレターだと圧倒されました。
    結婚したらこういう風に相手を想っていたいし
    想われたいと思いました。

  • 茨木のり子の急逝後、クラフトボックスの中から発見された原稿を甥の宮崎治が編集、刊行したもの。編集したと言っても、公表済みのもの1篇は除き、推敲済みのものは全て含まれています。
    最愛の夫・三浦安信への想いを、味わい深く、時に激しく、時に赤裸々に綴るもので、茨木のり子のイメージを変えると評された詩たちです。「恋唄」「急がなくては」「椅子」「歳月」など、いずれも心に深く響いてきます。ただ、イメージを変えるものだろうか?茨木は、生前に公表した詩の中でも時に大胆に歌っていたのではなかろうか。

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著者プロフィール

1926年、大阪生まれ。詩人、エッセイスト。1950年代より詩作を始め、53年に川崎洋とともに同人雑誌「櫂」を創刊。日本を代表する現代詩人として活躍。76年から韓国語を学び始め、韓国現代詩の紹介に尽力した。90年に本書『韓国現代詩選』を発表し、読売文学賞を受賞。2006年死去。著書として『対話』『見えない配達夫』『鎮魂歌』『倚りかからず』『歳月』などの詩集、『詩のこころを読む』『ハングルへの旅』などのエッセイ集がある。

「2022年 『韓国現代詩選〈新版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

茨木のり子の作品

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