いじめからいのちを守る: 逃げろ、生きるため

著者 :
  • 金子書房
3.33
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (107ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760821778

作品紹介・あらすじ

いじめられた子どもが最悪の事態に陥らないよう、大人たちにできる最善の策とは?
大切にすべきかかわりとは?
子どもの自尊感情のパターンなどから考える。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 基本的自尊感情を育む為には、感情と出来事を、和紙を一枚ずつ貼り合わせるように、少しずつ共有していく事。

    危ない時には逃げる。安全な場所に逃げて、また力を蓄える。

  • 8年ほど前にたまたま講演会を聞きに行って感動して大ファンになった心理学の近藤卓先生の新著。私にとってとても大切な、生きる指針となっている自尊感情のお話。
    自尊感情にはふたつある。社会的自尊感情(Social Self Esteem:SOSE)と、基本的自尊感情(Basic Self Esteem:BASE)。社会的自尊感情は、人より出来る、とか良い成績をとったり褒められたりするとぶわっと膨らむ、熱気球のようなもの。これは、容易に膨らむが、失敗したり怒られたりすると一気に凹む頼りないもの。一方、基本的自尊感情は、「感情の糊」がしみ込んだ和紙を一枚一枚積み重ねていくようなもの。楽しくて思わず微笑みがこぼれたとき、悲しくて涙が溢れる時、隣にいる誰かが同じように笑ったり涙を流したりすることで、和紙が一枚はらりと乗っかる。それが積み重なると、どんなことがあっても崩れないどっしりした土台になる。挫折経験や苦しいことがあっても、「私は私でいいんだ」と思い立ち直れる。社会的はもういいから、基本的自尊感情を積み上げていきたい。それをずっと考えて生きている。
    今回の卓先生のお話は、「逃げる」ということについて。津波が来たら逃げる、包丁を振り回している人がいたら逃げるのは当たり前。そうした物理的ストレスから逃げることは当然とされているのに、こと精神的ストレスから逃げることに対して、私たちはどうしてもネガティブな印象を持つ。「死ぬぐらいしんどいのだったら、辞めればいいのに。」よく聞く台詞。でも、気分転換したり受信方法を変えたりしたりしても、状況は変わらない。そうしていくうちに、人間は学習的無力感を覚える。何をしたって変わらない。無駄だ。そう思って、他の選択肢が全て暗く閉ざされてしまう前に、卓先生は、まず逃げろ、と言う。まず逃げて、それから基本的自尊感情を高める必要がある。ただ転校するだけではだめなのだ。家に引きこもってもいいから、そこで兄弟や祖父母、両親、友達、誰でもいいから共有体験をして、おいしいね、とご飯を食べたり、楽しく遊んだり、とにかく和紙を積み重ねていくことで、基本的自尊感情が少しずつ育まれていく。そうしたら、また学校や仕事へ行けるかも、と思えるようになるかもしれないし、違う場所でやり直そう、と思えるかもしれない。
    これを読んで、あ、今和紙乗ったかも、と思うようになった。今までたいして価値を持っていないと思っていたことも、意味を感じられるようになった。これしき、の積み重ねで土台はしっかりと固まっていく。人生のいろいろな場面で何度も読み返したい大切な本。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

日本ウェルネススポーツ大学スポーツプロモーション学部教授。専門は健康教育学、臨床心理学。日本いのちの教育学会・会長、日本学校メンタルヘルス学会・理事、日本健康教育学会・評議員、公益社団法人青少年健康センター・理事、公益社団法人誕生学協会・顧問などを兼務。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。高等学校教諭、中学校・高等学校カウンセラー、ロンドン大学研究員、東海大学教授、山陽学園大学教授などを経て現職。

「2020年 『誰も気づかなかった子育て心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

近藤卓の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×