教職課程で使われる教科書だろう。実践の視点から見て、奈須氏の3章授業づくり、4章カリキュラム編成が面白く、鹿毛氏の5章評価の章も参考になった。他は、残念ながら、教科書の域を超えていない、もしくはよくわからない。
学びと疑問
p47
状況的学習論と子どもが通うバレエ教室の発表会が重なった。初心者は、ちょい役から始めて徐々に役が増えて、ストーリーの中心場面に近づいて行く。とっても学習論ぽいし、長く教室にいる生徒の達成として、主役のシンデレラもあるが、一番の熟達者ではない。先生たちは、よく出る脇役を演ずる。ここには、もちろんお金の働きが介在している。
更に、学習論の世界とは異なるのが、バレエ教室は、みんながバレエの先生を目指しているわけでなく、また、主役の女子は、バレエ教室だけでなく、相手の王子様役にもお金を払う。
状況的学習論は、とても興味深いが身近な学びの場とも異なる特殊な世界でもある気がする。
p98
小集団でディスカッションしたあとに全体討議する意義を、全員がリラックスして話せることに置いていることが新しい。
p113
中心となる概念的理解をスパイラルに深めて行くというLynn EricksonやUbDに通ずる流れが、ブルーナー「教育の過程」から来ている?
p114
特殊の集積から一般化による概念学習という、それまでの当たり前に対して、まずは一般から学んで特殊事例を加えていく流れもあり得ることを示した数学教育協議会の水道方式。
p118
Discovery learningも仮説実験授業も、社会的評価とは無縁であること、また、答えをわかっているものがいること、最終的に正解に辿り着かないとならないことから、研究者の探究過程とは異なり、科学上の真の発見的過程の疑似体験でしかない。
p119
時間的変化や地域的差異に依存しない、すべての社会に普遍的な部分の抽出という考え方を持つ社会的機能法(キャズウェルとキャンベル 1935)と国際バカロレアPYPの教科横断的テーマの元になったBoyerの人類のコモナリティは関連しているのか?
p121
カテゴリー(社会機能)としてのscope、興味の中心(学年)としてのsequence
p122 クロスカリキュラム
教科に固有の価値を認めるが、現代社会に問題を中心に、問題を追及する様々な視点や手段として、各教科の内容を適宜取り込んで学習する。
ーPYPと重なる。
p123 「切実な問題の主体的な解決」
何もないところや、誰かの問いから自分の問いを発する人はかなり知的な人だ。「ライオンを飼ってみたい」という動機があってこそ、その実現のために様々な問いが発せられる。児童の問いを喚起するのは、大人の問いではなく、子どもの活動であり、それへの動機だろう。レオンチェフを読むべきか?
p125 「子どもの追究の道筋」
子どもたちが追究する学習では、シーケンスは教員は決めないということになる。しかし、フリースクールではなく、内容が決まっている大半の学校では、具体的にどうするべきなのか、話してみたい。
というのも、仮に学ばなくてはならない10の内容の内の4つを子どもの追究で学べたとして、残りはどうするのだろう。それらは、普通に教えるのだろうか?だとしたら、児童に追究には、どんな意味があるのだろう。残りの6つは、普通に教えられてもいいのか。それでも部分的に追究することにどんな価値があるのか。児童が追究した学習内容と、それ以外の内容の間に、差別が発生してないだろうか。児童が到ったものだから関連性があり、至らなかったものより大切だと言っていいのか?
ここで言われる、完全な子どもの追究と教え込みの中間くらいでも、10の内容に適用できる方法を検討することも必要ではないか。
さしずめ、PYPでは、Guided Inquiryとなるが、ここにも違和感がないわけではない。
p134
誰が採点しても同じ結果になることが「客観的」な評価という仮定に違和感を感ずる。みんなが同じように間違って採点しても客観的になってしまう。
p135
意欲を、「発想ー構想ー実践ー自己評価」のサイクルとしてモデル化(平野 1995)しているのは、おもしろい。
p143 相対評価
何がどこまでできたのか、どのくらい理解されたのかといった学習に有用な情報は提供しない。
p144 到達度目標の限界
「絵の表現の豊かさ」などの方向目標としてしか捉えられない態度的なものの評価になじまない。子どもに応じた目標設定が難しい。
p147 評価の表現方法としての文章表現
利点ー比較的複雑な情報を伝えられる
短所ー労力
ー評価者の文章表現力が問われる
この通り。そして、その文章のチェックも大変。
p148
指導要録の各教科のカテゴリー(感心意欲態度、表現、理解、言語の知識理解技能など)と学習指導要領の内容の対応は、MEXTから示されているのか?
p153 図5-9
信頼性と妥当性がわかりやすく図式化されている。
p156
教員ではなく、子ども自身が評価主体となって到達度評価を行うことが、子どもの有能感と学習意欲を高める。
以上