古事の森: 樹齢四百年の巨木を育てる

  • かんき出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (118ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761260408

作品紹介・あらすじ

法隆寺・薬師寺・東大寺-伝統的木造建造物のいのちを伝える。日本人の心を支えてきた「木の文化」を受けつぐための「古事の森」づくりがはじまった。

感想・レビュー・書評

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  • 資料番号:010471530
    請求記号:653.4タ

  • 日本の文化は木によって支えられているというのは、誰でも異存がないところであろう。木造文化の根本は森なのだが、その森が荒廃してしまっていれば、当然のところ文化も荒廃しないわけにはいかない。それはつまり、人の心が荒れるということでもあるのだ。

    言葉でいってしまえばそんなところなのであるが、日本の伝統文化である神社仏閣や橋や城郭などを守るためには、どうしたって大径木が繁る森がなければならない。大径木とは、おおまかにいうなら、直径一メートルを超える木のことである。かつては山にはいれば檜の大木などいくらでもあり、寺社をつくる時には好きな木を伐ることができたのであろうが、今はもちろんそんなわけにはいかない。そもそも大径木がほとんどないのが現状なのである。

    木がないのなら、植えればよいのである。
    そんな思いが形になり、二〇〇二年四月二十一日に京都の鞍馬山、貴船神社の向かいの森に、古事の森つくりのボランティア活動ははじまったのだ。春といってもようやく桜が散った寒い季節で、しかも雨が降っていた。その山に合羽を着たたくさんの人が集まったのである。

    呼びかけたら、予想を越えるたくさんの人が即座に反応してくれ、実際に身体を運んで汗を流してくれたのである。古い枠組みが壊れ、新しい価値基準がいまだ見つからずに混迷するこの国で、四百年も先を見据えた無償の行為に参加してくれる人がこんなにも大勢いる。これが時代に対して、この国の人々に対して、信頼が失われない理由だ。この国はまだまだ捨てたものではないと、なんだかありがたい気持ちになったしだいである。

    京都ではじまった古事の森は、とりあえずこれから全国で十箇所はつくられる予定である。もちろん私はそのすべてに可能なかぎり参加するつもりである。その森で、できるだけ多くの人と会いたいものだ。

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著者プロフィール

1947年栃木県生まれ。早稲田大学政経学部卒。在学中に文学作品「自転車」で第1回早稲田文学新人賞を受賞。卒業後、さまざまな職歴を経て帰郷して宇都宮市役所に勤務。79年から文筆活動に専念。80年「遠雷」で第2回野間文芸新人賞、93年「卵洗い」で第8回坪田譲治文学賞、97年「毒ー風聞・田中正造」で第51回毎日出版文化賞を受賞。2010年2月逝去。

「2023年 『すらすら読める奥の細道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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