勝つ人の考え方 負ける人の考え方

著者 :
  • かんき出版
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761262662

感想・レビュー・書評

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  • *能力に差はない。あるのは「情熱の持続力」の差。自分の大志を達成したり、何かを成し遂げられない原因はどこにあるのでしょうか?その原因はこれにつきます。「情熱の持続力」残念ながら入社して数年も経つと、いろいろなイヤなことにめげて、だんだんに情熱を失っていくことが多いのが現実です。雑用ばかりの毎日に腐ったり、上司との折り合いが悪かったり、仕事で大ポカ・小ポカをやってしまったり、酒や恋に溺れて仕事がそっちのけになったり。いつの間にか夢を見失い、そこに向かう情熱が涸れていってしまうのです。もし人間の能力の差がビジネスの勝敗を決するのだとしたら、その能力とは「決してあきらめない情熱」という名の能力であると思います。夢に向かう情熱があれば、人は頭を酷使します。仕事を成功させるために必要な情報を仕入れ、それを生かして行動します。うまくいかなければ、また頭を使って勝つための工夫を考え、実行します。うまくいっても、さらに夢に近づこうとあらゆる考えを巡らして全身し続けます。夢への情熱がたゆまぬ努力を促し、頭を鍛えることによってビジネスの能力もどんどん向上する。情熱と能力の間にはそういう相関関係があるのです。
    *ビジネスとは、知識・経験を知恵に変えて行動することによって、富に置き換えることである。平たい言い方をすれば、日々貪欲に学び、ありとあらゆる経験を積んで、そこからビジネスに役立つ知恵をたくさん生み出し行動した結果、成果をあげた人が勝つ、ということです。逆にいくら知識・経験が豊富でも、単に持っているだけでは宝の持ち腐れになります。行動・成果に結び付かなければ価値はないし、負けてしまうのです。
    *二十一世紀に通用するマネジメントとして、私は「先進的」「科学的」「合理的」という三つのキーワードを掲げています。「先進的」とは、現状を否定し、改革する気概をもって、新しい挑戦をすることを意味します。日本は戦後の復興を終え、高度経済成長の波を作って繁栄しましたが、その成功の上に胡坐をかいていると。「栄枯盛衰」の法則よろしく、やがて衰退していきます。だからこそ、時代を先取りする先進性をもって新しいことにチャレンジし、新しい時代を創り出していかなくてはなりません。社会そのものが大きな転換期を迎えているのですから。企業社会に生きる経営者はこの点をしかと認識し、現状を否定してイノベーションを起こさなくてはなりません。旧態然ンとしたビジネス手法に頼っていると、たとえこれまでは「勝ち組」と称されていた企業でも、勝ち続けることはできないでしょう。また「科学的」とは、先進技術と最新んお経営手法を武器化することです。IT革命が起こった今、さまざまな新しい技術や経営手法が発明・実行されています。これらを利用しないと、時代から取り残されてしまいます。現代の新選組になってしまうでしょう。これからの企業は、科学技術が開発した種々のツールを、経費対効果が合えばいち早く取り入れて、経営の柱としていく必要があります。さらに「合理的」とは、たとえば年齢や学歴、性別にかかわらず、能力のある社員を登用していくことです。会社の業績を支えるのは、言うまでもなく人的資源です。能力のある人に相応の仕事をさせて結果を出す仕組み作りをするほうが、能力のない人に機会均等で仕事を与えたり、年功を重視して成果に見合わない高い給料を提供したり、能力のある若い人や女性に雑用ばかり押し付けて”能力の飼い殺し”をしたりするより、ずっと合理的です。
    *企業も含めて地球上にあるものはすべて、次のようなサイクルをたどります。「創業」→「発展」→「停滞」→「衰退」。違いがあるとすれば、それぞれの期間が長いか短いかだけ。経営者は会社が現在、栄枯盛衰のサイクルのどの時期にいるかを認識して、リーダーシップを発揮しなければなりません。時期のよって、やるべきことがまったく違ってくるからです。たとえば「創業期」や「発展期」には、戦略を重視するのが経営者最大の任務です。高い目標を掲げて勝つ戦略を練り、若い人材をどんどん登用して社員一人ひとりの力を伸ばしながら、組織を引っ張っていく力が要求されます。また、組織の成長が行きつくところまで行って一段落する「停滞期」に入ったら、社員を一つにまとめることに注力することが大事になってきます。この時期になると社員も力をつけていますので、極端な話「みんな任せたよ」と社員に一任し、余計なことは何も言わずに、機嫌よく社員を働かせる程度のリーダーシップでも十分に通用するでしょう。さらに「衰退期」を迎える兆しが見えてきたら、そのまま慣性の法則に従って企業が衰退していかないように、新しい「発展期」を創り出すことが求められます。この時期には強烈なリーダーシップが必要になります。なにしろ、これまでの成長を支えてきた古いスキームを壊し、まったく新しいスキームに置き換えていく、つまり創造的破壊をしなくては滅びてしまうのですから生半可なリーダーシップでは対処できません。これに太刀打ちできるのは、百戦錬磨の経験を積み、IQ(知性)という発想と統率の能力を鍛えぬき、同時にEQ(感性)と いうチームから最大の力を引き出す能力に長けた経営者のみ。革新的手法を発想・導入して、組織を引っ張るリーダーシップがあって初めて、新たな成長の波が創造されます。あらゆる過去のシステムが崩壊しつつある現代の経営者に求められているのは、まさにこの資質です。バブルがはじけて、組織がめちゃくちゃになって衰退の一途をたどるところから救えるのは、どこかで揉まれてきた人たち。何が何でも会社を立て直すという情熱の持ち主にしか務まりません。したがってリーダーたる者は、会社の現状を冷静に分析し、発展プロセスに応じたマネジメントをしていかなくてはなりません。成長期だからと安穏をしていれば、すぐに停滞期を迎えてしまいます。また、停滞期にあっても衰退の兆候を読めず、未来に向けて何の手も打たなければ、あっという間に企業の勢いは失墜します。状況に応じて経営の発想を転換していく柔軟性が、経営者には求められるのです。
    *大なり小なり、ある部署やプロジェクトの責任者(ディレクター)になったなら、必ずやらなければならない仕事が三つあります。どんな業態業種でも共通する重要なことなので、ぜひ覚えておいてください。まず一つは「ディレクション(命令・指示)です。「おれはこうしたい」とディレクターである自分の考えを伝えることです。当たり前のことのようですが、世の中には自分の考えを明確に示すことができないリーダー、つまり「ディレクションができないディレクター」もいるようなので注意が必要です。また、一方的に「こうしたい」と命令するだけでなく、同時に「これについて、みんなはどう思う?」といろんな話に耳を傾けることも忘れないようにしましょう。一方的なディレクションよりも、双方向のコミュニケーションの方が、信頼関係や、いろいろな気づきをたくさん得られることは言うまでもありません。二つ目の仕事は「デシジョン(決定)」です。自分の考えや部下の考えについて、ディレクターは最終的な決断をする必要に迫られます。しかも、往々にして即断が求められことでしょう。デシジョンで気を付けなくてはいけないのは、部下からもたらされた案件には「必ず決定を下して、それを伝える」ということです。ディレクターは、人の意見を却下しても拒否しても構いませんが、放置だけはしてはいけないのです。ダメならダメと、ハッキリと決断を下してそれを伝えましょう。三つ目の仕事は「エデュケーション(教育)」です。言うまでもなく、上に立つ者は下を育てる必要があります。そうすることで、自分も、部下も、組織も成長し続けることができるのです。部下を持つ人、部署を任されている人は、まずこと三つの仕事ができているかどうかをもう一度自問自答してみてください。この三つができていれば、必ず結果は出せます。もし結果が出せていないのであれば、どこが欠けているのかを把握してから、その能力について訓練するようにしてください。
    *企業は何も手を打たなければ、必ず衰退していくと述べました。では「衰退期」からまっすぐ死に向かってしまう組織は、どんな病に冒されているのでしょうか?堺屋太一さんの「組織の盛衰」によると、組織を死に至らしめる病は三つしかないそうです。一つは、「機能体の共同体化」という病です。組織には、自ら拡大を求め、内部結束強化を追究するという本能的欲求があります。そのため強い組織になるには、社員が互いに競争し、それぞれがフルに能力を発揮することが重要なのに、組織が”仲良しクラブ”化して硬直化してしまうのです。わかりやすく言えば、「年功人事が平和でいいよ。抜け駆けはなしだよ。みんなで利益を平等に分けて、ムダな競争が起こらないようにしようよ。僕らは運命共同体なのだから、なにかまずいことが起きても外部の人には内緒にして、自分たちで揉み消しちゃおうね」といった暗黙の了解が社員の間で成立しているような組織です。典型的な例は官僚機構ですが、近年の相次ぐスキャンダルも、元凶にはこの種の病巣があるように思います。ビジネスにおいて最も大切な顧客の存在を忘れ、自分たちの保身だけを考えてしまうわけです。二つ目の病は、「環境への過剰適応」です。典型的な例はバブル経済ですが、一つの環境に適応して成長した企業のなかには、時代の変遷とともに環境が変わっても、容易に対応できない場合があります。順風満帆だった過去を忘れられず「今までうまくいっていたのだから、これからも同じようにやっていけばいい」と思い込んでしまうのです。そんなふうでは、氷河期に生き延びられなかったマンモスと同じで、とても時代の荒波を乗り越えていくだけの力を創出するこはできません。三つめは、「成功体験への埋没」という病です。これは二つ目の病と似ていますが、ある戦法や事業で一度成功すると、その”過去も栄光”にしがみつき、新しい経営手法の導入や新規事業の開拓を怠ることによって発症する病です。とくに、組織の中枢が過去の成功を実現した人たちで占められている場合、彼らはその成功体験に溺れて、病巣を広がるままに放置することが多いようです。そうならないためには、自らの意識を根本から変えるか、それができないならば新しい血を導入するしかないでしょう。企業はいずれ衰退していく運命にあるとはいえ、死に至る前に新たな成長期を創り出すことは不可能ではありません。サイクルを法則どおりにたどって消滅していった過去の企業を反面教師に、そうならないように知恵を働かせることができるのもまた人間の頭脳だと心得て、意識転換を図ることを多くの経営者に期待しています。
    *ビジネスマンが高めるべき能力は「BQ(Business Quontient)」です。「BQ」とは「IQ(Inteligence Quotient=知性)」と、「EQ(Emotional Quotient=感性)」を掛け合わせたものです。つまりビジネスマンの能力を計る方程式は、「BQ=IQ×EQ」となります。IQの高い人は、いわゆる頭が切れる人。「生きた知識」を豊富に持っていて、人とは違う発想をしたり、独自の視点で戦略を構築したり、合理的なビジネスプロセスを生み出したりするのが得意です。他方、EQに優れた人は、組織になじむ協調性の持ち主。周囲に思いやりを示す配慮ができ、チームが協調して遂行する仕事なので力を発揮します。理想的なのは、IQもEQも高く、個人プレイで卓越した能力を、組織プレイで周囲の協力を取り付けて一つにまとめる能力をバランスよく駆使できる人です。もっとも、IQの高い人はEQが低く、逆にEQの高い人はIQが低いのが一般的な傾向です。そのため、前者は優れた能力とネットワークを持ちながらも周囲の理解や協力が得られず、孤軍奮闘の末に潰される危険があります。後者は組織の潤滑油的な役割やチームワークに貢献する能力を有しているのに、「生きた知識」に乏しく、発想や企画力が困難なゆえに抜きん出た存在になれないジレンマに悩まされます。経営者はその辺をよく考えて部下の育成をしなければならず、リーダーを目指す人は、IQ・EQをバランスよく高めていく努力をする必要があるでしょう。IQについては、さまざまな経験を積みながら、また人的ネットワークを広げて多くの有用な情報を収集しながら、「生きた知識」を増やしていけばOK。EQについては、人づき合いやチームで取り組む仕事を通して、他人の立場に立って物事を考え、行動する想像力を身につけるといいでしょう。高いBQこそが、ビジネスマン最大の武器なのです。
    *人事異動は自分から申し出る。異動を望む私の気持ちの底流にあったのは、「いずれ会社の基本ポリシーや勝つ戦略を構築するなど、マネジメントにかかわる仕事をするために、できるだけいろいろな仕事をしたい」という一念だけです。

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