医療・ヘルスケア産業ビジネスモデル (東京大学 医学・工学・薬学系公開講座8)

著者 :
  • かんき出版
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761268756

作品紹介・あらすじ

医療を中心とする「民」「医」「官」「産」「学」という5つのステークホルダーは今、
ダイナミックな変化に直面している。

そうした中、患者・消費者の立場で市場ニーズを原点から見直し、
そのトータルソリューションのグランドデザインを提示することが急務となっている。

そのために、世界の叡智・経営資源を日本に呼び込み、
医療産業の一大戦略拠点としての日本の発展に貢献するべく、
平成23年度「医療産業イノベーションフォーラム」では、
従来の医療産業の枠を越える幅広い分野のトップリーダーがビジョンを共有、
その記録が本書にまとめられた。

<東京大学 医学・工学・薬学系公開講座>
この公開講座は、医学、工学、薬学系の学生のみならず、
医療・ヘルスケアなどに関心を持つ学生や教職員、
医薬品・医療機器企業や医療機関に従事する人、
新しいビジネスチャンスを企画・研究・開発している方たちと、
一緒に経営課題を考えようというシリーズです。

感想・レビュー・書評

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  • 配架場所 : 一般図書
    請求記号 : 498@T106@1
    Book ID : 80100451993

    http://keio-opac.lib.keio.ac.jp/F/?func=item-global&doc_library=KEI01&doc_number=002310418&CON_LNG=JPN&

  • 様々な企業の事例を集めていますが、その企業が過去に何したかが結構多い本ですね。面白いのですが、次世代の革新的な事業に対する戦略、と言う観点から見るとこれまでの事業戦略の延長の話が多いかなと。医療戦略の本質と違って日本メインなので、読む価値はあると思われます。

    第一講座では経済の話ですね。医療に関する官産学民医の関わりあいから、オートメーション化やQOLなど基本的な医療の傾向に関する話から始めています。次に、初歩的なケインズやフリードマンの話から経済状況を説明し、新規産業の必要性を、特に薬物と医療機器の一兆円を超える貿易赤字と医薬品開発のデスバレーの話を通して説明しています。日本の武田ですら、売上高世界15位なんですよ。

    第二講座はケンコーコムとセコムのお話。ケンコーコムでは当然医薬品のネット販売ですね。イギリス、アメリカ、ドイツでは処方箋有りすらネット解禁され、処方箋のリピートすら許されているのに。対面と既存の法律解釈に無意味に拘る日本は最適化が全くされていない、と。日本らしいです。セコムの人は精神論と概念論ですね。医療を医薬品・医療機器以外のシステムから話している部分は参考になります。

    第三講座は、企業としては私が好きな、JTです。タバコは嫌いですがね。この企業は日本企業の中では明らかにトップ中のトップクラスにグローバル化が進んでいる企業でしょう。日本の人口構造に着目し、グローバル化の必要性を説いています。そして、グローバル化に対応する為の方法を経験的に、ベストプラクティスを肌で理解させる、マトリクス型組織やコミュニケーション、給料構造や組織マネジメントなど、述べています。本書のタイトルとはちょっと違うけど面白いです。

    第四講座は日立とヤマト運輸ですね。初めはスマートシティとかの話です。次に日立のヘルスケアの話で、これが参考になる話でしたね。まず彼らはモノ創りと強みを生かした放射線医療に参入しています。これはまぁ素晴らしいことですが、新しいことではないですね。次にこれからの時代はオーダーメイド医療の時代だということをしっかり理解している点、そしてその為の短消費期限の医薬品インフラや新たにパラダイムシフトを興すであろう医療機器に目をつけています。シティ計画と融合させるつもりなのか、面白いです。そしてヤマトですね。海外事業に乗り出して、ハブ都市を扱っている話は彼らの事業ですが、ネットワークを利用したローナー事業(医療機器貸し出しとメンテナンス)やメディカルダイレクト(ジェネリック取り扱い、これはケンコーコムと狙いが似てますか)に狙いをつけているようです。

    第五章ですが、まずはライオンですね。オーラルケアとか衣料品でも市場拡大を狙うそうです。以上。次に旭化成です。日本の医薬品・医療機器の貿易赤字を述べ、日本の医療機器分野の明らかな出遅れ、30兆円越え市場でシェア10%以下を鑑みて、デバイスラグ、ドラッグラグ問題、薬事法改正(この人は特に医療機器と医薬品を一緒にするなと言っています)に注目しています。これからはアジアの成長を取り込み、救命医療、IT医療、再生医療を重点分野だと考えているようです。会社としての観点ですね、国家としてはプライマリ・ケア、ケアサイクルが救急医療より大切で、オーダーメイド以上も再生医療と同じ以上に重要なので。医療費のコスト削減が本質的な…いや、企業的には避けたい議論でしょうか。

    第六講座はキリンとテルモですね。キリンの方はバイオ医薬品を商店にし、統合型のシステムで覇権を狙っているようです。ポリジェント技術やKMマウスにも触れており、合同企業や買収をメインに自社研究・開発まで行い、オープンイノベーションも行なっていると謳っています。この一本筋の戦略は中々好きですが、大学機関・バイオベンチャー・臨床・大企業の枠組みも考えた方がいいかなと思いますね。そして、ブロックバスター狙いを未だに続ける戦略、特定領域に焦点を当てている戦略、面白いですね。抗体医薬品などテルモは医療機器です。注射器、輸液剤、カテーテル、人工心臓などの医療製品、更には薬品と統合したモノ作りを志向しているようです。こちらの方がしっくり来ました。これからは再生医療や癌ワクチンも狙うそうです。メディカルインフォマティクスの時代にどう対応していくのか、若しくはしていかないのか、ですね。

    第七講座は日本の政治システムと医療に関してですね。日本の医療の個人負担率は低いと見せかけて、結局これ国民の金で負担してますからね…。医療機関の評価の必要性、医療保険制度の比較、医学部の教育体制のアメリカとの違い(サージェントトレーニングやシミュレーションを用いた能率的な医学部システムは一刻もはやく学ぶべきでしょう。トレーニング用検体を使えない謎法律とか改正しないと…。)

    第八講座は医療イノベーションについてですね。医療費の増大にどう対処していくか、です。日本の技術に対するる信奉者が多いが、本当にこのままで何とか出来るのかという疑問も呈しています。このままだと無理でしょうね。再診・初診の問題、医療費削減について語っていますが、予防医療の観点を少しは話してくれないと…。て感じです。後は一般的な議論です。

    従来の延長線上の戦略が多く、最新技術、グローバル化や再生医療、合併や提携など、これらは全く悪いことではないのですが、パラダイムシフトに挑戦しようと言う話が余り見られなかったですね。日本企業は個別医療にどう対応していくのかなぁ…このままの流れだと出遅れは明らかだが…。医療機器なんかに関するポテンシャルの高さは素晴らしいと感じたが。

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