地場産業+デザイン

著者 : 喜多俊之
  • 学芸出版社 (2009年7月24日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761512569

地場産業+デザインの感想・レビュー・書評

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  • デザイナーの喜多俊之氏がこれまでに手がけた地場産業の活性化(主に海外への展開)について書かれた本。飾るだけの芸術品ではなく、日常生活で使う工芸品であることを大前提に、技術的に難しいことは避け、地場産業の得意とするところを活かす氏のやり方には共感できる。本書では海外への展開に軸を置いているが、せっかく良いモノを作っても、日本の納戸化した住まいには合わないから売れない、という現実があるそうだ。これかの成功例に続き、日本の地場産業が栄えて欲しいと思う。

  • シャープのAQUOS等を手掛けたプロダクトデザイナー・喜多俊之氏が自身の関わった地場産業プロジェクトを綴った本。
    この数年、私自身が伝統産業の町が厳しい現状に立たされている場面を目の当たりにする機会が多かったため、新たな可能性を探り学ぼうと本書を手にとった。

    喜多氏のデザインに対する姿勢は、プロモーションを第一に考えたものであり、経営者の考え方や技術の質、販路や流通まで考慮した上で行われる。
    職人に対する尊敬を念頭に置きながら、市場や使い手のニーズをマッチさせ、自身のセンスを反映させる。そのようなプロデュース力こそが喜多氏の持ち味であると感じると同時に、氏の姿勢からは、原研哉氏や隈研吾氏の考え方に通じるものが窺えた。
    関西を拠点に発信しデザイン界を盛り上げる喜多氏の活動に、今後も注目していきたい。

  • 日本の伝統産業、地場産業のものづくりを
    デザイナーとしてアシストして、
    世界への扉を開こうとされている著者の取り組み。

    p.10より引用。

    技術先進国と言われながら、豊かさは日常の暮らしにまで
    至っていません。住環境や町並みにおいて、大変劣悪な状況が、
    国を覆い尽くしている。戦後急ピッチで建てられた狭い集合住宅は、
    いまや、納戸化が深刻な状態になっています。狭小マンションの
    多くはモノであふれて、片付かない。以前からすると、
    人を家に迎えるという習慣がずいぶん衰退してしまった。
    (中略)
    人が家に集まって楽しい会話がある。ただそれだけのことが
    暮らしを豊かにするのに、残念ながらもはや納戸化が進む家では
    それが希薄になっている。人と人とのコミュニケーションの不足が
    急速に広がったのも、住環境における納戸化と関わりがあるのではと
    考えるのです。


    「納戸化」という言葉がキーワードとして何度も(狙ってないw)出てくる。
    この著者の思想から色々と気づくことがある。

    ・都市と地方では違いはあるのか?
    都市の納戸化マンションと比べたら地方は広い家があるが、
    では地方の広い家の「住」は豊かかどうか。
    逆に「人がいない」ので、そもそも・・・なんてことはないのか。

    ・コミュニケーション技術の発達と普及をどう見るか?
    情報通信の世界ではコミュニケーションは深化・多様化していると
    私は思う。
    人と顔を合わせる大事さ、気持ちの良さは間違いない一方で、
    技術がもたらしたものについても合わせて検討する価値はあるのではないか。

    私が思うに、日本の戦後の「経済成長」は日本人の適応力の高さが
    根源にあったのではないかということだ。
    伝統のある国、それを自覚していながらも、
    「古き良き」ライフスタイルを瞬時に放り出して新環境に適応して
    たくましく仕事に励んできた。
    それが、伝統の時間軸を譲らない国との違いだったのでは
    なかろうか。

    でも、やっぱりもう今「右肩上がり経済成長」は不可能だと
    みんな分かってきたし、受け入れてきているような気がする。
    ここでもまた、適応力の高さが生きるのでは?

    たとえば「100均」と「高級店」を両方使う人がいる。
    あるカテゴリについては機能だけでいい。
    別の拘りのカテゴリについては「良い消費」がしたい。
    そういう性向の人が増えているように思う。

    だから、「古き良き」伝統の押し付けではなくて
    (そんなもの、誰も受け取らないだろう)
    「これはあなたの感性にググッときませんか?」という
    ものを作って、うまくマーケティングができれば、
    産業としては成り立つと思うのである。
    100人いたら、100人に買ってもらおうと思ってもそれは無理。
    99人が「遠慮します」と言っても1人が「絶対ほしい!」となれば
    安売り競争にもならないし、売り手も買い手も幸せのはずだ。

    だから、地場産業がグローバルに出ていくというのは、
    その働きかける母集団を変えてみる、母数を殖やしてみるという
    観点からすると、大変理に適っていると思うわけである。

    プロダクトは素晴らしい。本質的には言葉の壁がない。
    その人にとって「良いものは良い」ならば取引のチャンスがある。

    ----------------------------------------------------------
    【目次】(「BOOK」データベースより)
    1 岐阜県美濃の和紙/2 石川県輪島の漆器/3 福井県鯖江の眼鏡と時計/4 新潟県燕のカトラリー/5 神奈川県小田原の寄木細工/6 佐賀県有田の磁器

  • 著者との対談に際し通読。

  • 今この時代に必要な日本のデザイン力を再考する良著

    アクオスの漆塗りフレームのモデルが発表されたとき、当時、インターネット上で家電小売店を営んでいた私は、
    「テレビに新しい風が吹いている」ととてもびっくりしたのを思い出します。

    そのアクオスシリーズのデザイナーを、発売当初から現在まで務められている喜多氏の著書。

    p158の厚くはない本ですが、喜多氏が1960年代から現在まで、伝統工芸・地場産業とコラボレーションしてきた6つの事例が、
    地元の職人さんたちのインタビューも交えながら濃密に語られており、
    製品開発の秘話という意味でも、人間の挑戦の記録としても読ませます。
    また、表紙を含め、製品をとらえた豊富なカラー・モノクロ写真が1枚1枚非常に美しく、眺めているだけでも楽しいです。

    序文「魂をこめるものづくり」の中で、著者は、現代社会の中で地場産業が直面している状況について、
    消費者の暮らしの変容、流通構造の問題、グローバル競争等多角的に問題提起しています。

    中でも、「全世界がエコロジーに心を向ける今、使うほどに手で磨かれ、色が落ち着き、風合いが出てよい、という日本伝統の物づくりの価値観は、もっと見直されて良いはず」という主張には、日本が世界に発信できる大きな望みを感じました。

    別のところで知りましたが、著者は最近、もともと山陰にあった古い日本家屋何棟かをボルドーに移築し、
    日本古来のミニマリズムな暮らしの紹介を通じた 美とエコロジーを両立したライフスタイルの提案を行っているそうで、
    そちらの活動も興味深いと思いました。

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