- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784761513320
作品紹介・あらすじ
建築のリノベーションから、公共のリノベーションへ。東京R不動産のディレクターが挑む、公共空間を面白くする仕掛け。退屈な公共空間をわくわくする場所に変える、画期的な実践例と大胆なアイデアを豊富なビジュアルで紹介。誰もがハッピーになる公園、役所、水辺、学校、ターミナル、図書館、団地の使い方を教えます。
感想・レビュー・書評
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図書館のユースケースを「本を読む」という点だけにフォーカスしていたり、公園のパブリック化において「ホームレスの排除」をさっくりと語っていたり、小学校をセキュリティへの考慮なく開放しようとしたり、個々の考察に危うさは感じられるが、全体的なメッセージとしては共感する。(図書館の件に関しては、書籍・資料の保管、蔵書の形成という重要な側面が武雄市図書館では見落とされていた面があったわけで、さもありなんというか)
結局のところ規制の緩和とアイディアの実現という双方が噛み合って進んでいく必要があるというのは確かであり、アイディアありきでは決してない。各種の規制には制定された際には当然ながら妥当性があったはずで、それが時代に追いつかなくなっているところをどうフォローしていくか。人間の数も動きも目まぐるしく変化する中で、空間が果たす役割を建築によってコントロールできるところは当然ある。既成概念に囚われず、場を整えることで社会をどう変えるかというのは、まぁ結局連綿と続く建築の役割ではあるよなぁと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
公園水辺役場学校ターミナル図書館団地の空間再生のタネ本。結構参考になるアイデアが多く、アイデアのストックは増えた。Publicは全員に開放されていることが重要との指摘は頷ける。普通にアイデアで詰まっているのでここにさらに凝縮するのは勿体ない。2021/9/18
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最近のまちづくりの取り組み集。
まちづくりの取り組みのトレンドは「公共空間」をどのように使っていくかという点。
公共=official、common、open
という意味に解釈される。
officialは絶対に行政の空間!という場合に馴染む。
openはIT関係かな。オープンリソースとか。
まちづくりの公共空間を紐解く鍵は「common/共有」にある。
公園、水辺、役所、学校、ターミナル、図書館、空港、団地。どれも私にとって、我が社にとって身近で重要なトピックス。これらの公共空間を自社所有地などとどうつなげて、「私たち」の場所にできるかが、これからの人口減少の時代に、人を呼び込み、引き続ける魅力的なまちになるかどうかの結果になる。 -
大学そして図書館という公共空間を運営する仕事をしているので、面白そうなので読んでみました。
大学職員はおそらくこの本でいうところの行政側にかなり近い存在として大学を運営してきたんだと思う。本書にあるように、適切な利用を促すために、管理する、すなわち使用制限を設けて秩序付ける、という方向に重きを置いてきてしまった気がする。使う側の論理、学生を中心に、自分たち教職員も含めて、そういう目線で空間を作っていく必要性を改めて感じました。
本書では、公園や水辺、図書館などさまざまな公共空間のリノベーションのアイデアや実践が紹介されています。読んでるだけで楽しくなる一冊です。 -
ハブリックを、オフィシャル/コモン/オープンとして差異を意識し、使い分ける。誰が管理する誰のものか、から、誰のためにあるのか、へ。公園・役所・水辺・学校・ターミナル・図書館・団地に対して、理論と実践とアイデアを示す。
何をするにしても、勝手にはできない行政のしくみが、しっかり整っているのだということがわかりました。 -
リノベーションとは価値観の変革。事例を紹介している。
公園内で商売ができるようになった法制度の変化、水辺の使い方、路上でのカフェができるようになった変化など勉強になった。 -
「公共空間」という呼び方で一義的に呼ばれてきた空間を地域のために活用していくための方法論を、豊かな事例で紹介した本。
まず、所有や管理の状況から考えると、公共空間(=パブリック・スペース)の中にも、公共性の3つの類型から導き出されるパターンがある。
・オフィシャル・スペース=主に行政が利用・管理するスペース
・コモン・スペース=その場を取り巻く複数の人々が共通の利害を有しながら使っていくスペース
・オープン・スペース=誰もがアクセスすることを拒まれないスペース
これまで、「パブリック・スペース≒オフィシャル・スペース」という捉えられ方で、利用の公平性、管理の画一性によって縛られてきた空間や、あまりにオープンであるがゆえに誰もその場に利害関係を持たず、そのためにその空間をよりよくしていく動機付けも働かなかった空間が、非常に多かったように感じる。
このように類型化をしてみると、その場の課題が何なのか、浮かび上がってくる。
そのうえで、本書では
・公園
・役所
・水辺
・学校
・ターミナル
・図書館
・団地
という7種類のパブリック・スペースを取り上げて、それらをどのようにすれば豊かに活用される空間に変えてゆけるかを紹介している。
紹介は、活用のための法制度や事業のスキームを考察した「理論」の部分、国内外の事例を紹介する「実践」の部分、まだ実現はされていないもののこのような取組ができるのではないかという「アイデア」の部分があり、多くが見開き読み切りで写真を見ながらテンポよく読んでいける(よく、これだけの少ない文章や写真でその事例の核になる部分を紹介していけるものだと、そのプレゼンテーション力にも感心する)。
内容や事例としては知っていたものも知らなかったものもあるが、以下、いくつか印象に残った内容を列挙。
○羅東鎮限運動場(台湾・宜欄市)
都市の真ん中に400mの本格的な陸上競技トラック。周辺に観客席や柵などはなく、図書館、学校、シアターなどとそのまま隣り合っている。トラックの中は森。
競技ができる仕様のトラックなので、陸上のトレーニングをしている人もいれば、散歩をしている人もいる。隣接する小学校の体育の授業もここでおなわれる。
ものすごく機能特化したものであるはずの陸上競技用トラックをあえて無造作に街の中心に置くことで、逆に空間に多様性や自由度が生まれている。
○水上レストラン「WATERLINE」(東京・天王洲)
行ったことはないが、その姿は見たことがある水上レストラン。これを可能にした法的な仕組みはおおよそ以下の通り。
水上に浮かべた船は、その台船部分は船舶、上部の客席部分は建築物の扱い。それぞれ、船舶検査と建築基準法の確認受ける必要がある。
(3ヶ月以上同じ場所に停泊している場合、建築物の扱いを受けるため)
また、計画敷地である水面は、都市計画法上の市街化調整区域に該当するため、新しい建築物は原則建てられない。しかし、隣接する既存の倉庫をリノベーションするとともに増築する形とすることで建築が可能となる。
○河川敷利用のための河川法および関連諸制度の改正
1997年の河川法改正を皮切りに、河川の総合的な管理と利用の自由度向上の方向でさまざまな制度が改正されてきている。
1999年:河川敷地占用許可準則施行
河川敷利用の具体的な手続きが定められる。
2005年:河川敷地占用許可準則改正
河川敷地の利用を「社会実験」という形で認める制度を構築。
短期的なイベントや施設の設置が認められる。
2011年:河川敷地占用許可準則再改正
河川敷地の利用について、特例許可の制度が設けられる。
具体的な利用の条件は各地方自治体が定める。
東京都では渋谷川(渋谷駅南側)と隅田川(浅草駅付近)が許可取得。
○小学校の余裕教室活用について
比較的新しい小学校の場合、施設の償還が終わっていない場合がある。その場合、当初の目的である小学校以外の機能に転用する場合、整備時の国庫補助分を返納する必要がある。
しかし、現在では制度の変更が行われ、一定の条件を満たすことで返納ではなく報告書の提出で転用が可能となっている。
○アーツ千代田3331(東京・旧千代田区立練成中学校)
施設の改修、運営を、千代田区公募により選定された有限責任会社(LLC)コマンドAが行っている。
コマンドAは施設を一棟借り(マスターリース)し、FM(ファシリティ・マネジメント)、BM(ビル・マネジメント)の他、ギャラリーの運営、イベントの企画、アーティスト・イン・レジデンス等の活動を展開する。
また、コマンドAの母体でもある一般社団法人コマンドNのアート活動とも連携している。
空間はコマンドAからテナントにもサブリースされており、その賃料は、そのテナントの収益性、公益性などにより3段階に設定されている。
○SUN SELF HOTEL(茨城県取手市井野団地)
期間限定で、団地の空き部屋を借りて行われたアートイベント。
ホテルマンは団地この団地に住んでいる住民。ホテルマンと宿泊客が協力して、日中に特製のソーラーワゴンで団地内で電気を集め、その集めた電気で、夜に「太陽」を光らせることで、客室で使う電気を賄う。
宿泊客と団地のホテルマンが協力してホテルをオペレーションすることで、団地の魅力を楽しく伝えていくことができる。 -
10年前に、
さらにその10年間(つまり20年前)に成した事例や制度についてまとめられた本
この20年の変化を、
ああそう言うことだったのかと気づいた
半分も理解してないけれど
10年と言う単位は
世界が変わるにわかりやすいものだなと思う
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公共とパブリックの違いが面白かった。
私は公と私が混ざり合うコモンスペースとしての公共空間を創りたい。
本書で紹介される公共空間はどれもユニークでみているだけでわくわくする。
ただ、著者が公園にいる路上生活者に対して批判的な態度をとっていることが気になった。公園が路上生活者のものではことは事実だし、路上生活者がいることでより多くの人が使えなくなっているのも確かである。だからといって彼らを排除した空間はそれこそ「私」と「公」が共存するパブリックスペースとはいえないだろう。
民営化が進み、「より多くの人」の幸せを考えるようになったクリーンすぎる時代。この時代の中でどうしたら全ての人が社会の一員となれるのか、その舞台となる公共空間を考え先陣を切っていくのがあるべきまちづくりの担い手だろう。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704424