PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761513481

作品紹介・あらすじ

パブリックスペースを変革する、地域経営、教育、プロジェクトデザイン、金融、シェア、政治の実践者6人に馬場正尊がインタビュー。マネジメント/オペレーション/プロモーション/コンセンサス/プランニング/マネタイズから見えた、新しい資本主義が向かう所有と共有の間、それを形にするパブリックデザインの方法論。

感想・レビュー・書評

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  • 新しい公共空間を作る。タイトルから行政の話かと思ったが、民間で活躍されている6人の実践者の話だった。

    いちサラリーマンの自分には何か特別変わったことを自分が先んじてやらなきゃという発想に至るのはなかなか難しいことだけど、自分の仕事でも既存の枠組みの中で違うものと違うものを組み合わせて新しい価値観を想像できるのではないかと考えることができた。

    ただなんとなく仕事するのではなく、関わるひとにとってどうすればよりよい価値観を提供できるのか。考え取り組むことで、きっと新しい空間を提供することができるのではないか。

    正解なんてないんだから、直感にしたがって、できるまでやる。あーそれでいいんだ、とおもえたことが収穫だった。

  • 行政のみに頼らない、民間や個人が様々な方法で公共空間(パブリックな場)を問い直す、再構築を試みる。

    そういった実践的な取り組みを、東京R不動産等の運営をしている馬場さんが6人の実践者に対しインタビューを行い、紹介している。

    それぞれ、金融・マネジメント・教育・行政など分野に対する専門性が高く、難しい問題を結果を残すに至るまで付き進めていける強さを持っている人たちだと思った。

    それぞれの事例はどれもまったく異なる業態で、異なる分野の仕事をしているにもかかわらず、パブリックな空間を再定義し、その重要性を認識したうえで形にしている。
    単純に行政のやり方がダメだ、という話でもなく、民間がやると結局無責任な結果を生む、ということでもない。
    持続可能なマネタイズを具体的に考え、また一貫性のある姿勢でプロジェクトを進めていくやり方や連携の仕方が提示されていて、まちづくりやコミュニティ形成、再生を考え上でのヒントがたくさん見つけられる。

    地域の抱えている問題は何で何をすべきなんだろう、新しいパブリックな空間とはなんだろう。

    そうした問いを具体的に考察し、実践レベルまで落とし込むには、相当な困難がある。
    馬場さんはデザインの人で、空間を考え定義し、そしてそれを具体的なデザインで表していく。普通の人にはなかなかできないことだ。

    あるコミュニティが、再生のために新たな公共空間を作ろうとするとき、外部の人からの呼びかけよりも、内部の人の自発的な意思からそれが成立したほうが、その後もずっと続くものができる、と思う。
    一方で、こうした考え方のできる人がコミュニティ内にいるはずもないし、そうした困難さを乗り越えられる人が必要になる。

    本書は、そのヒントを教えてくれる。こうした学びの中で得た知見をもって、独自に抱えている課題を解決するためにコミュニティとの対話を繰り返し、新たな空間を作り上げる。
    具体的な取り組みの仕方は、本書のほかにもいっぱい事例はあるだろうし、既存の制度や仕組みを使いながら空間を作ることもできるだろう。
    ルールは守りつつも、オープンなやり方でゆるやかな場を作る。地域の話し合いの場は特に見えにくいところがある。それをオープンにするだけでも、まず変わってくるのではないだろうか。

  • 日本の芸術文化や公共空間を、どうするか、自働的な書籍。
    発発想と行動力がすごい。
    いいように日本もなれば良いのにと、願う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704423

  • レーガノミクス、サッチャリズム、Kaboom!、Times Square Alliance、BID、Common Ground Community、Public Private Partnership、フィル・カンパニー

  • 続編。最近のパブリックデザインのフロントランナーの方達の紹介集。

    •アメリカでは、まちづくり=不動産価値の上昇
    •パブリックデザインとは、共通価値を創ること
    •マネタイズの仕組みのポイントは、全く新しいものではないこと
    •地域にあるものの価値を別の角度から光を当てて提案する、価値作りを行う
    •インタレストによって細分化されたパブリック。細分化により、バリューも上がり、コストも再現できる。
    •レッドオーシャンではなく、ブルーオーシャンに出る
    •✖︎ポジティブ。ありとあらゆる可能性を検討して、最悪ここまでリスクをしょっても仕方がないということを見極めてから企画をやるかどうか決断する
    •オーケストラにおけるピアニストのように演奏者も観客も見える立ち位置でプロジェクトデザイナーは立つ
    •事業者自分がつくりたいものを周りの人達に共感してもらい、プロジェクトデザイナーはそのしくみづくりを手伝う
    •ただ開かれているのはオープンスペース、あるモラル、権利、義務といったものを背負った人たちが社会的な目的を実現するために集まる空間があるべきパブリックスペース
    •どんな空間にしたいのかという視点で考える
    •どんな風に物事に取り組んで、自分でありたいのか

  • 公共空間を再定義し、作り上げていった実践者へのインタビュー集である。参考とする原著などの詳細な紹介もあり非常に参考になった。

  • 対話形式というのが読みやすかった。 

    ”「PUBLIC」というのは究極の「PRIVATE」”
    ”お金というものは「金額」ではなく「構造」である”
    ”「パブリックデザイン」とは一言で言えば「共通価値」をつくること”
    ”パブリックというものは抽象的な概念ではなく具体的なものの集積”

  • 公共とは何か、改めて考えさせられる一冊。ここで登場する人達は、誰しもが「そんなことは無理!」と言われるようなサービスを公共空間に作り出して、公共空間を作り直してしまった人々。自分が無意識のうちに設定してしまった、思い込みの限界に気づくことが出来た。

  • 新しい時代の公共空間を作っている若手活動家に対するインタビュー集。
    インタビュアーは豪華に東京R不動産の馬場正尊氏であるものの、その必然性は感じられず。。

    二人目の、「まちの保育園」の活動に興味持った。

  • 新しいパブリックデザインのキーワードは、経営、運営、合意形成、企画設計、収益化、情報発信。行政や委託企業が管理するものではなく、市民も担うべきもの。6人の実践者にインタビューして学び、構造化を試みる。

    自分たちだけでなく、みんなのためになるという信念。最初からというより結果的に生き残ったのかもしれないけれど。

  •  木下:お金というものは「金額」ではなく、「構造」であると、僕は考えています。当たり前のことですが、人は対価を得られない商品やサービスにはお金を払わない。お金がないということは、お金を払うに値する商品やサービスがないという構造や、利回りが低くて投資対象にならないという構造になっているということです。その構造を変えない限り、そこに無理やり税金を投入しても人がお金を払いたくないシステムでは赤字になってしまう。重要なのは、お金が集まってこない分を補填することではなく、お金が集まってこない問題を解決することなのです。(p.39)

     木下:日本に必要なのは、現場の人間が実務をやりながら成果を上げ、さらに体系化を行い、事業の改善と政策提言を同時に行うことです。実務者がシンクタンクもやる。AIAもそれを目指しています。単に自分の事業と向きあうだけでなくそれを体系化し、社会全体で共有できるような政策モデルにまで踏み込むことが、今後まちのプロデュースをやる人間の職能になっていくと思います。(pp.45-6)

     松本:学びというものは閉じられたものではないと僕らは考えています。社会にはいろいろな境界が存在しています。保育園と幼稚園、保育園と小学校、保育園と地域の間にある境界。また大人と子ども、ビジネスと教育の間にも境界がある。そうした境界を一つ一つ取り払っていくことに僕らは挑戦しています。教育は、閉じられた聖域に置いておくものではなく、もっと開いて社会的な価値観をどんどん取り入れていく必要がある。ビジネス界で起こっていることを学び、社会で起こっていることを学び、学校で起こっている学びを、横串で有機的にうまくつなげていくことができれば、もっと面白い社会がつくれそうな気がしています。(p.70)

     馬場:誰でもマネのできる一般解をつくりたいという感覚が僕にはよくわかる。松本くんたちより上の僕らの世代は、人といかに違うことをして差異化できるかを競っていた。それに対して、松本くんたちの世代は、新しい社会モデルをつくらなければ、これから先危ないという危機感を持ち、その社会モデルをつくることに新しい幸せを見ている。ごく自然体で公益性や公共性につながる活動をやれる世代なんだろうな。(p.81)

     古田:プロジェクトデザインでは、すべてが新しすぎるとよくわからなくなります。最近、「これまでにないまったく新しい企画なんです」と、僕のところに企画を持ってくる人たちが多いんですが、新しすぎると誰にもわかりませんよという話をします。たとえば、社会貢献のためにいきなり独立する人はごく限られているでしょうが、週末だけなら社会貢献しようという人たちは結構いる。つまり、180度ではなく10度だけ変化できるようなものを提案するわけです。(p.94)

     馬場:社会が必要としている事象を目的として設定しているから、結果として意識が高くなるし、メカニズムとして性善説が成り立ち、パブリック空間化される。普通の行政が管理する公共空間は、どうしても性悪説で成り立つ。(p.179)

     開かれているだけがパブリックだとは思えない。あるモラル、権利、義務といったものを背負った人たちが社会的な目的を実現するために集まる空間が、あるべきパブリック空間ではないかと。そういう意味では、パブリックスペースとオープンスペースは分けて考えるべきでしょうね。(p.181)

     樋渡:田舎というのは同調圧力がめちゃくちゃ強い。でも、僕にとっては、いろいろな職員がいて、いろいろな市民がいて、いろいろなステークホルダーがいるというのが一番心地よい。大事なのは、それが快適なんだと「定義する」ことです。モノは定義によって見え方が変わります。(p.193)

     樋渡:最初から完璧なものをつくろうとせず、どんどん修正していけばいいんです。(p.209)

  • 7/24 M.M.さんのオススメ

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784761513481

  • ※メモ

    【きっかけ】
    木下氏、樋渡氏が気になった。
    他の事例もおもしろそう。
    「新しい公共」へのアプローチを探る。

    【概要】
    新しいパブリック空間づくりに取り組む人らの対談集。

    【感想】
    対談集なので内容は軽いが、違うタイプのプロジェクトと仕掛け人がオムニバスで入っていて、事例としては幅が出てきておもしろかった。
    新しい「パブリック」を考える刺激になる。
    違うタイプのものを比べてみて、自分の関心としては、やはり都市空間にはたらきかけるもの。

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著者プロフィール

1968年生まれ。現在、Open A Ltd.代表、東京R不動産ディレクター、東北芸術工科大学教授。主な著作に『エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ』(学芸出版社 、2016年)、『都市をリノベーション/The City Conversion』(NTT出版、2011年)などがある。

「2016年 『リノベーションプラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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