都市美: 都市景観施策の源流とその展開

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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761523626

作品紹介・あらすじ

都市美理念の歴史をふりかえり、景観規制の根本を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 都市美の概念の生成と発展について。

  • 私達は風景であったり、景観であっありどのように認識するようになったのだろうか?
    「日本における風景認識の変遷−近代における自然風景の発見と価値づけ」(下村彰男)では近代における風景認識を概観している。

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    風景は「視覚」「視点場」「視対象」「対象場」の相互関係で現出する心的現象であることから、時代による新たな視対象や視点、そして対象場である都市や農村において新たな状況が生じることによって、新たな風景が発見され、認識されるともいえる(P217)
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    本書でも書かれているが、近代建築に見られる「塔」であったり「展望所」であったり、権力者だけでなく一般市民も高所から都市を概観できるようになった。また、鉄道や舟といった乗り物から移りゆく景色を見ることができるようになった。そのなかで、「風景」がショーケース的扱いとされるようになった。その典型が、「原生自然風景」と言える。
    明治以降、欧米諸国との交流の中で、「日本の原風景とは何か」といった議論が起きるようになっていった。本稿に書かれているように、志賀重昴の「日本風景論」(1894年)が近代日本最初の風景論である。大正中期以降、日本の景勝地へ公共交通機関で行けるようになり、自然風景が一般化していく。そして、1927年(昭和2年)の「日本新8景」の選定では、「昭和という新時代を象徴する新しい自然風景を選定する」と言う趣旨で行われ、全国から9000表を超える投票があったようだ。そして、1931年(昭和6年)には「国立公園法」が制定された。

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    国立公園法制度は新しく獲得された原生自然風景の価値付けをより明確にしたものだと言える。国家が優れた自然の風景地を国立公園と指定し、その風景を保護し利用を増進させて、国民の保健、休養、教化に資することを宣言することで、原生自然の風景の価値付けが行われたのである。(P223)
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    まさに上記の通りだと思われる。現在、ユネスコで指定している「世界遺産」とは趣が異なる。自然公園制度は、自然環境を保護すると制度ではなく、原生自然を箱物として扱い、「自然の崇高で絵のような美しさに対する賞賛と保護のあり方」を焦点に当てている。

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    このように近代においては、風景は保護する対象となり、デザインする対象となった。つまり、近代は「風景」を対象化、客観化することによって、分析的に捉え、評価し、保護し、デザインするという操作概念を明確にし、操作技術を工場、洗練させたと言える。しかしながら、こうした風景を操作しながら保護するという概念は、冒頭に述べた、風景や景観を土地や人々の生活から切り離し、特別視する枠組みを形成したことも否めない。(P226)
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    2004年3月の景観法公布に先駆けて、文化財保護法が改正され、「文化的景観」が加えられた。この「文化的景観」とは、ヒトが自然とのかかわりを保っている動的景観で、棚田がその代表例である。昨今、下町の路地裏などを巡るまちあるきが人気を博しているが、それも、家々の間を綴る路に人情深いドラマがつまり、その風情に魅力があるのだと思う。

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    人の眼は単に表層としての風景の美醜を捉えるだけではない。人は風景を見ることによって、風景を創出した背景としての人々の営みや豊かさや貧しさ、それも精神的なゆとりや文化程度を含めて敏感に感じとる力を有している(P229)
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    だからこそ、画一的なものではなく、個性を持ったまちのコンテクスト(文脈)に沿ったまちづくりを行わなければならない。

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著者プロフィール

西村幸夫:1952 年、福岡市生まれ。國學院大学教授、東京大学名誉教授、日本イコモス国内委員会前委員長。専門は都市計画。著書に『都市から学んだ10のこと』(学芸出版)、『西村幸夫 文化・観光論ノート』(鹿島出版会)、『県都物語』(有斐閣)、『世界文化遺産の思想』(共著、東大出版会)など。

「2022年 『世界遺産の50年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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