港町の近代―門司・小樽・横浜・函館を読む

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761524302

感想・レビュー・書評

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  •  港町が近代都市空間に変容し発展してきたプロセスについて語られる。各章で門司(福岡県)、小樽(北海道)、横浜(神奈川)、函館(北海道)を取り上げ、写真・地図・立面図を用いて詳細に説明されている。


    小樽の歴史を追うと4つの発展段階が見えてくる。

    1)明治初期~明治10年代中ごろ
     当時の小樽の中心は信香町あたりだった。海関所が信香町に移されるに伴い問屋も移動し、周辺一帯の街区が急速に整えられた。高台の山ノ上町には弁天社が置かれた。

    2)明治10年代中ごろ~明治20年代末
     明治14年におきた大火で信香町をはじめとする勝納川周辺が焼失したのを機に、官公庁・商工業が入船町に移転した。入船町の後背地である住之江町は花街となった。住之江遊郭跡は現在でもその空間構造を残している。入船町市街と遊郭との間におかれた小樽駅(現南小樽駅)と手宮線が花街の結界の役割を果たした。入船町交差点の六差路は、かつて小樽の中心であったことを象徴するようである。

    3)明治30年代
     港の中心機能は有幌町から水天宮下の港町・堺町へ、商業空間や生活空間は山田町へ、遊興空間は花園町へと移る。当時の土木技術では急速な発展に即した開発が不可能な水天宮山を挟むように、港と街の機能の分離が進んだ。本来「港、倉庫街、問屋街、住居地、花街、神社」となる港町の空間構成は、「港、倉庫街、寺社、問屋街、住居地、花街」となった。

    4)明治40年代~昭和初期
     内陸部では旧小樽駅から移された「中央駅」、港側では「小樽運河」が建設された。小樽運河に艀が出入りし、運河に沿って石造倉庫群が建ち並ぶ。物流のための「出抜き小路」もうまれる。小樽の全盛期はこのころである。昭和に入ると、小樽駅前の道路と小樽運河でつくり出すT字型の都市空間の骨格ができる。しかしながら小樽の全盛期はここで終わる。

     歴史的遺産を売り物にしながら、その財産を観光は破壊している現状がある。歴史的都市構造の研究をベースにした都市再生が重要性を増す。

  • 眼から鱗。

    函館に住む私たちが普段なにげなく見過ごしてしまっている、町を形造る数々の部品。

    岸壁、石垣、坂の形状、古い民家、そして古地図や絵図。それらを丹念に渉猟し、さらに現地調査(フィールドサーベイ)を積み重ねていくと、港町に固有でかつかなり普遍的な町の成り立ちから発展のあとを劇的に浮かび上がらせることができるのだ。

    函館の歴史を、港町として、外国に開かれた貿易港としての独特・急速な発展を遂げた町として、構造的にあとづけた著作としては従来にない、傑出したできばえと思う。

    この町の古地図や絵図、そして地割り図(代表的なものは富原氏の労作「箱館から函館へ」)などを何度「眺めて」もその意味するところを読み解くことは困難であった。ところがこの本を読むと、それがストンと落ち着くところに落ち着いてくる。

    たとえば、明治期の『現在の)大町付近の港近辺の地割りの変遷が意味するところが、港と荷揚げ、商品流通のしくみの変化にぴったり符合していること。

    幸坂に等高線のラインで直交する道をはさむように成り立つ町並は、最高所から順に、神社(山上大神宮)、遊里(明治初期に成立した函館最初の遊郭)、旅館街(旅籠町)、職人町(鍛冶町)一般民家、商店街(大黒町)、そして臨港エリアは倉庫、商家。

    そうした重層的な町の成り立ちのありようが実は函館にユニークなのではなく、門司や小樽にも共通するものがあること。

    ともあれ、函館の港町として近代の発展のありようがすっきりと説明されていて、町歩きを深く楽しむには必携。ちなみに表紙が函館の幕末の港の賑わいを表した絵図で飾られているのも嬉しい。(ちなみにこの絵図は2009年の函館開港150周年の告知ポスターにも転用されている)

    そして、著者たちが函館のフィールドワークを実施した(つい2-3年前)際に、わざわざフェリーで函館に着岸し、「港町はまず海側から見られることを意識して形作られた」というテーマを実践していることにもおおいに共感を覚えた。

    連絡船が廃止されてから20年。函館に住むわれわれににとっても、既に函館を海から「望見する」ことが久しくなっていることにあらためて気付かされる。

  • 文献だけに頼らず実地調査をもとに小樽・函館・門司など各港町の特徴をとらえている良書。
    近代の港町が成立する過程、地形の影響や現在までの変遷が分かりやすくまとまっている。

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著者プロフィール

都市形成史家

「2018年 『江戸→TOKYO なりたちの教科書2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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