中心市街地活性化のツボ: 今、私たちができること

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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761525101

作品紹介・あらすじ

中心市街地の衰退が止まらない。緩すぎる郊外規制等の外部要因はすぐには変えられないが、我々が今できることは何なのか?郊外拡散を規制し中心市街地を一体的に運営する「タウンマネジメント」の必要性と日本各地の先進事例に見る活性化の「七つのツボ」を提示、都市計画・商業双方の視点に立つ論客による実践書の決定版!

感想・レビュー・書評

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  •  図書館でタイトルで借りてきた。

     書いてあることについて、まったく同感。しかし、中心市街地活性化法とか経済産業省と一緒につくってきた経験と、自分の個人的な自動車なし生活の経験から、自分の考えを整理してみる。

    (1)中心市街地というと格好いいが、結局、商店街振興組合が結構保守的な票田でその票田が崩壊してきたので、政権党が政策にとりあげてきたのではないか。

    (2)市民の生活の快適さ、便利さからというねっこの政策目的からいって、既存の商店街はなぜそこまで税金をつかって活性化しなければいけないのか。

    (3)むしろ、高齢者の買い物難民化に対応するという政策目的からは、既存商店街の活性化は一つの方策で、例えば、移動販売店とか、宅配サービス(ゼブンイレブンが試行している)などの方策も大事な方策の一つではないか。

    (4)都市計画の観点から、郊外店舗について無秩序に立地させることは、無駄な道路などの無駄な公共事業、自然や景観の破壊、低炭素などの観点からは望ましくないが、既存の商店街をつぶすからいけないとはいえないのではないか。市民にとってどっちがいいサービスを提供するかだと言ったら冷たいか。それば、ビジネスとビジネスとの戦いではないか。

     自分も中活法をつくった手前、自動車をうっぱらって(本当は本代がかさんで自動車が維持できないくなった)、歩いて買い物をしている。先週、新しいキャノンのプリンターを買ったら、プリンターとパソコンをつなぐケーブルがついていない。

     さすが、利にさといキャノン。経費削減に徹底しているなと思って、近所の電気屋2けんをまわったら、1けんは、日曜日なのに休み、1けんは、「うちはパソコンやってません」。「はあ?」

     こんなビジネスでもうかるわけない。結局、ネットで全部買うことになる。

     そこで、あえて過激に私の中心市街地活性化のつぼを提案したい。

    (1)利益が経常的にあがるビジネスをすること。その知恵、努力をすること。近くで残っている小さな本屋は無償で雑誌を配達してくれる。だからみんな大事にするし、こちらも助かる。

    (2)人に頼らないこと。特に、補助金のようなコストのかからないお金にたよらないこと。これは反省も含めているが、ハードに補助して大きなものをつくってもだめ、運営費補助みたいなのも、運営費補助がなくなったら、それで赤字になるのでだめ。かえって、赤字体質をつくる。

    (3)自分でもうかるビジネスができないなら、「よそもの、ばかもの、わかもの」に建物を貸すこと。この本にはあまり書いてないが、山崎さんのコミュニティビジネスとか都市計画系の本では、学生とかよそのものの話がよくでてくる。コンバージョンしてアートとかいいんじゃないか。

     どうでしょう。とにかく、中心市街地活性化は、なんのために活性化する必要があるのか、というねっこから考えてみたいと思う。

  • そもそも企業は生き残りの原理が最優先。まちづくりの視点は二の次。英国で中心市街地の活性化が成功しているのは、とどのつまりが郊外への大型商業施設の出店を原則ストップしたからというだけ。1部では消えゆく中心市街地の現状とその原因を順理成章に解き明かす。2部では1部のロジックを踏まえ日本の現在の状況下においても工夫と努力で活性化を果たした沢山の事例を紹介している。現状を嘆く前にまず行動。数々の元気な事例から一歩踏み出す勇気がもらえた。

  •  大規模小売店舗法の廃止後、いわゆる「まちづくり三法」が施行されたが、それでもなお、中心市街地の衰退は止まらない。
     著者、長坂泰之氏は、中小企業基盤整備機構地域経済振興部のコンサルティング課長。中心市街地・商店街等の企業診断の豊富な経験から、中心市街地活性化の処方箋を示している。
     本書から得たポイントを以下に記す。

    1.英国の例から学ぶこと
    ・英国は都市計画により大型店の郊外出店を規制したため、大型店は自らの生き残りのために中心市街地に出店した。→大型店と中小店との共存共栄が実現した。
    ・中心市街地活性化を実際のプレーヤーを中心とした目的達成型のプロジェクトチーム方式。

    2.中心市街地復活の7つのツボ
    (1) リーダーシップとタウンマネジメント
    ・米子市では、大手小売業のマネジメントのノウハウを持つ人材がタウンマネージャーに就任し、事業を推進した。
    ・周辺からの交流人口を増やすことを目指し、広域圏の中で中心市街地を考える。
    (2) 明確な方向性と戦略を持つ
    ・「生活者のためのまち」の観点…生活者が普通に暮らせる機能を取り出す。
    ・「来訪者のためのまち」の観点…地域外からのリピーターを増やす。
    (3) 地域の強みを徹底的に磨く
    ・「地域資源」による街のブランド化。情報発信。
    (4) まちのファンを育てる/まちの役者を育てる
    ・体験型観光。「おもてなし」の心。
    (5) つながる/連携する/回遊させる
    ・複数の商店街が連携して事業を行う。(山形県新庄市発祥の「100円商店街」の例)
    ・観光客を商店街に回遊させる。
    (6) イメージアップと情報発信を意識する
    ・たむろしていたストリートミュージシャンを活かして、「若者の街」にイメージアップした柏市の例
    ・ストーリーをつくってプレスリリースする。マスコミを見方に付ける。
    (7) 不動産の所有者を巻き込む
    ・「不動産の所有と使用の分離」の手法により、テナントミックスを機動的に行う。

  • 具体的な事例が書かれていてとても参考になる。大切なことは本質を捉えることで、それが理解できたら大きな街の活性化に発展できると思う。そういう勇気が出てくる、そう思わさせるのが本書の一番優れている点だ。

  • ほんぽーと

  • 感想を3つに要約すると、
     1.面白い
     2.わかりやすい
     3.コトをなすための普遍的事実が見える。
    です。

    1.面白い
     事例ベースで書かれています。
     プロジェクトXの様な、人間模様が見えて、物語性があります。
     だから、単純に面白いんだと思います。

    2.わかりやすい
     序章に、簡単に事例が書いてあり、本の内容をイメージできました。
     第1部で、現状、原因、すべきことがまとめてあったので、この本で展開されているロジックを理解できました。
     第2部に事例が書かれてあり、ロジックを頭に入れて読めるので、最初に事例を読むよりわかりやすいです。
     また、事例を、7つのツボにくくっているのも、わかりやすいポイントです。

    3.コトをなすための普遍的事実が見える。
     私は、中心市街地の活性化を担っている訳ではないですが、何かコトを成そうとしたときには、目的志向、顧客視点、マーケティングとイノベーションが必要である点、何より人が大切である点が読み取れます。
     プロジェクトXが、普遍的な何かを伝えている様に、この本も普遍的な何かを伝えてくれていると思いました。
    少なくとも、まちなかの復興を考えている人の必読書ですし、そうでない人には、単純に「コトを成すため」の視点を感じられるという点で、お勧めと思いました。

    この様な本を執筆されたことに、感謝いたします。

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著者プロフィール

長坂泰之(ながさか・やすゆき)
流通科学大学商学部准教授
1963年横浜生まれ。1985年独立行政法人中小企業基盤整備機構奉職。横浜市立大学大学院都市社会文化研究科博士後期課程修了(学術博士)。全国の中心市街地・商店街再生、阪神・淡路大震災・東日本大震災の被災市街地の商業集積の復興を支援。2019年から現職。専門は、流通政策、商業まちづくり、中小企業経営論。著書に、『中心市街地活性化のツボ』(学芸出版社)、『100円商店街・バル・まちゼミ』(学芸出版社)など。中小企業診断士(経済産業省)、地域活性化伝道師(内閣府)。

「2022年 『復興・陸前高田 ゼロからのまちづくり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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