コミュニティ再生のための 地域自治のしくみと実践

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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761525132

感想・レビュー・書評

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  • 地域づくりにおけるコミュニティの役割を過去から振り返り、現在の取組み、将来的課題を整理した本です。特に地域協議会や地域自治区に関する記述が厚く、これらの地域団体統合的な組織に関心があるかたにはオススメの一冊です。

    事例としては、宝塚市、伊賀市・名張市、朝来市、京都市、豊中市、安芸高田市、札幌市、新潟市、高松市におけるコミュニティ振興政策、地域協議会等の都市内分権政策が取り上げられています。

    特にⅢの「今後の課題と展望」(中川幾郎先生)は、各事例を一定程度抽象化した上で整理しており、とても参考になりました。中川先生は地域自治の10箇条として以下を挙げています。

    (1)自治体条例で住民自治協議会の位置づけ・権能を定めること
    (2)基本構想・総合計画に住民自治協議会を位置づけること(地区別計画の策定も視野に)
    (3)エリアは最大で小学校区単位とすること
    (4)執行部の構成・代表制は、地域別、課題別、性別・世代別を担保すること
    (5)地域予算制度を確立すること
    (6)支所・支援センター機能を活用し、行政との連携・調整を強化すること
    (7)地域担当職員との連携・調整を密にすること
    (8)情報を共有し、誰にでも分かりやすい地域ビジョン・地域別計画を策定すること
    (9)コミュニティビジネスなどで自主財源を獲得し、広報誌が発行できる常設事務局機能を確立すること
    (10)これらを通じて「面識社会」を作っていくこと

    よく整理されており、最後の章だけでも読む価値はあると思います。

  • ピックアップと一言:
    ・住民自治協議会とは自治体独自規定による字別、小学校区別の総合型住民自治組織。
    →「住民自治協議会」は、地方自治法に規定する「地域自治区」や「地域協議会」とは異なるため、その設置根拠を自治体条例による必要があるということですね。

    ・住民自治協議会の地理的構成範囲は、基本的に小学校区の範囲以内であることが望ましい。その理由は、面積的にも、人口的にも、歴史的にも小学校区以下の範囲が概ね顔と名前が分かり合える、いわば「面識的社会」の範囲内だからである。
    →人口が減ってくると学校の統廃合があるため、場合によっては旧小学校区単位で設立する必要があります。面識的社会とはいわゆる地域のつながりをつくるということですね。

    ・「参画と協働のまちづくり」は、住民にだけ自覚と実践能力が必要とされているのではない、行政職員にも、市民生活の当事者、生活者としての意識と視点、市民社会への参画が必要とされるのである。例えば、併任辞令による地域担当職員チームの任命、編成などがその具体例であろう。
    →自治体職員は、まちづくりに関する総合的なプロフェッショナルであり、事務手続きのスキルもあり、バランス感覚や公平感覚も持ち合わせ、住民から信頼されているという様々な点で、地域での活躍が期待され、またやりがいがあるので、是非地域に飛び出してもらいたい。

    ・地域自治システムの導入にあたっては、「行政の責任放棄」「行政は住民に負担を押し付けている」という声が出てくる。朝来市では「基本公共サービス」の提供主体は引き続き朝来市役所であることを明記した上で、それ以外の親睦や文化事業、各種福祉事業、特産品の開発販売といった「付加価値的な公共サービス」については、地域自治協議会や区、まちづくり団体・ボランティア・NPOなどが担い手となり、地域特性を生かして取り組む、と整理されており、行政の責任を示したことが住民の安心感につながった。
    →住民自治協議会の役員から、行政の仕事を押し付けてくる、という話はよく聞く。行政は、市民協働の成り立ちや、メリット・デメリットを理解してもらえるまで、何度も説明していかなくてはいけない。

    ・地域自治の十箇条…①自治基本条例で住民自治協議会の位置づけ、権限権能を明確に担保すること。②基本構想・総合計画に住民自治協議会を位置づけること。③住民自治協議会のエリアは、最大で小学校区程度までとすること。④住民自治協議会執行部の構成、代表制は、地域性□、課題別〇、世代別△を担保すること。⑤地域予算制度を確立すること。⑥支所・支援センター機能を活用し、行政との連携・調整能力を強化すること。⑦地域担当職員との連携・調整を密にすること。⑧情報を共有し、誰にでも分かりやすい地域ビジョン、地域別計画を策定すること。⑨コミュニティ・ビジネスなどにより自主財源を獲得し、広報誌が発行できる常設事務局機能を確立すること。⑩以上を通じて、何よりも「面識社会」をつくっていくこと。
    →どの項目もとても深い意味があるので、是非本書を読んでみてほしい。


    感想等:
     地域自治(住民自治)の理論と、住民自治協議会の在り方が学術的にそして具体的に述べてあり、まさに地域自治のバイブルと呼べる良書。何回でも熟読し、頭に染み込ませたい。
     地域自治の十箇条のうち、まだ我が三ツ城自治協議会では⑨コミュニティ・ビジネスが確立されていないので、今後はここに力を入れていきたいと思う。

  • 実践例を多く書かれてあるのだろうけど、どうも興味が持てなかった。震災以後、コミュニティの再生が問われているが、地方の限界集落ではますます人離れが進行中。

  •  この本も職場の図書館から借りてきた。

     タイトルからわかるように、地域自治という一定の地域を前提にしてその住民に対するコミュニティ組織を中心に議論している。

     自分は、復興まちづくりに対応するためには、

    (1)復興のための計画づくり、事業実施、エリアマネジメントというきちっとした目的を明確にした、アソシエーション型の組織が必要なこと。もちろん、各段階で必要な専門家や体制の規模は柔軟に変更すること。

    (2)具体的な事業内容を期限を設定しながら進めていくためには、暗黙の全員一致のような旧来の自治会決定システムではなく、明確な決定システムをもつこと。

    (3)復興事業を実施することを考えると、法人格をもった主体であること。

    (4)復興まちづくりということになると、少なくとも地権者(土地所有者、建物所有者)が3分の2以上参加している団体であること。実質は、ほぼ全員の地権者の参加あるいは同意が当然前提となる。

    (5)実態としては、地域の重鎮のような人とやる気のある若者、そして、事業段階に応じて必要となる専門家からなるハイブリッドな人員構成を目指すこと。

    (6)通常の地域をくぎって住民が参加する地区自治協議会的な組織とは別のものだが、良好な関係を保つこと。

     まあ、これを称して、まちづくり会社として考えて、復興まちづくり事業の先駆的な試み、先導的な試みを受け止めていく方向を検討していきたい。

     復興基本構想のときなど、まちづくり会社構想が、大西先生などを中心に提唱されたが、そろそろ、具体的な地域の協議会的な動き、あるいは、地域で先行して事業を立ち上げる動きを、まちづくり会社として誘導していく時期だと思う。

  • 地域分権制度を検討している自治体には大いに参考になる本です。
     とりわけ、中川先生の「公共」の切り口はさすがだと頷かされます。

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著者プロフィール

帝塚山大学法政策研究科教授

「2009年 『アーツ・マネジメント概論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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