タウンマネージャー: 「まちの経営」を支える人と仕事

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784761525538

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  • 商店街や中心地が衰退した一つの理由として「何かの問題解決にあたり、一人ひとりが正しいとされる行動をとったとしても、全員が同じ行動を実行した事で想定と逆に思わぬ悪い結果を招いてしまう」経済学用語の「合成の誤謬(ごびゅう)」ではないか。

    著書では、そのような状況の中でも戦っている9名の「タウンマネジャー」の実践が紹介されている。そのほとんどに生々しい実情や失敗などが織り込まれて、いわゆる「まちづくり」が一筋縄ではいかない実情が赤裸々に紹介されている。

    タウンマネジャーの定義はあえてされてなく、読者に定義づけはたくされているが、著者の言葉を借りれば「補助金とボランティア頼み」から「自立」するまちづくりの転換、「まちの変化の仕掛け人」これらの役割を果たす人がタウンマネジャーではないかと、私自身は緩やかに定義づけさせていただいた。

    印象に残ったタウンマネジャーの言葉やエピソードを紹介すると

    守山市の石上僚氏
    『自己顕示欲と出世欲が仕事のモチベーションだったが、「まちのひとから必要とされるのは、重圧であるが幸せ」』という言葉に氏の充実感を感じた。
    まちづくりのコツとして「緩やかに仕掛けながら待ちの変化を促し見守る」「まちに溶け込む努力」、「情報収集と情報発信」「若手商店主を巻き込む」「イベントがつながりを広げる」
    とのこと。

    田辺市の尾崎弘和氏と府中市・呉市にかかわった原田弘子氏の
    ちょっとしたきっかけから生まれる諸団体との摩擦は、教訓として大変参考になった。いろいろな失敗も隠さず語ってくれた尾崎氏、原田氏の勇気に敬意を表したい。



    伊丹市の中脇健児氏
    「行く人を増やすのではなく行ってみたいと思う人を増やす。」
    「街づくりは、町の賑わいや経済活性かといったものではなく、まち(ひと)の関係性をどれだけ豊かにするか、まちを行きかう人たちの出会いの質をどれだけバラエティに富んだものにするか。それがたぶんか強制の社会であり、柔軟性が高く、いわば強いコミュニティにつながる」
    情報発信=印象づける
    「出向く、迎え入れる、見つける」の循環「いつ相談が来ても対応できる」
    「協同でつくりあげているまち」「地元の人が一番楽しんでいる町」
    チームビルディングの成功はコミュニケーションの質に比例
    飽きのこない内輪にならないコミュニティ
    「そもそもさん」「とりあえずさん」の衝突とその対策。出会いの臨界点を越えるまでがんばる。

    富士市吉原地区 佐野荘一氏
    「イベントではまちは救えない」
    「ワークショップで議論されていることは、所詮その人たちの希望や要望を述べているに過ぎない。それを具体的に実行していくという当事者意識は、残念ながらほとんどない。」という部分で、私自身、当事者意識の重要性を教えていただいた。

    飯田市 三石秀樹氏
    官民協同の重要性。個人的には空いた住宅を改修してサービス付高齢者賃貸住宅等の福祉施設を作った事案は大変参考になった。

    全体から実践者の力強さやパワーを感じる内容だった。
    私自身「まちづくり」にかかわらせていただいて、私も感じていたことを佐野氏は見事に捕らえていましたので最後に紹介します。
    「タウンマネジメントは、街づくり自体をビジネスにするために新たな組織を設立する人材、あるいは比較的新しい組織の中枢部に入りこみ、街づくりビジネスを画策する人物、そのような、いわば起業家を輩出する事業ではないか。」
    自分は現在雇われ人で家族も養っていく中で、新規起業は大変リスクがあるなかで、今後自分がどのように「まちづくり」に関わっていくか、私自身にも課題を突きつけられた内容だった。

著者プロフィール

大阪市立大学名誉教授。前流通科学大学特別教授/1943年京都市生まれ。神戸商科大学、神戸大学大学院経営学研究科を経て、大阪市立大学、関西学院大学、流通科学大学各商学部に勤務。主著に『商業組織の内部編成』(千倉書房、2000年)、『小売業の外部性とまちづくり』(有斐閣、2006年)、『商業・まちづくり口辞苑』(碩学舎、2012年)、編著に『タウンマネージャー 「まちの経営」を支える人と仕事』(学芸出版社、2013年)などがある。

「2017年 『フラノマルシェはまちをどう変えたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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